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その不安定さ、性格ではなく血糖の波かもしれません
外来でよく聞くのが、こんな言葉です。
昼過ぎに急に不安が強くなる
甘いものの後にイライラして家族に当たってしまう
夕方になると気分が沈んで涙が出る
会議中に動悸や手の震えが出て、パニック発作みたいになる
夜に寝つけない、眠りが浅い
これらは不安障害やうつ状態、適応障害、更年期、睡眠障害など多くの要因で起きえます。ただし一定のパターンとして、甘い飲み物や菓子パン、スイーツ、エナジードリンクの後に強く出る場合、血糖値スパイクと反応性低血糖が関与していることがあります。
ポイントは、気合いの問題ではなく、身体のリズムの乱れとして説明できる可能性があることです。原因が見えると、対策が立てやすくなります。
血糖値スパイクとは何が起きているのか
血糖値スパイクは、食後の血糖値が急上昇し、その後に急降下しやすい状態を指します。特に起きやすいのが、空腹時間が長いあとに糖質中心の食事や甘い飲料を入れたときです。
よくあるきっかけ
朝食を抜く
昼に菓子パンとカフェラテだけ
午後に甘いお菓子で乗り切る
夜にドカ食い
ストレスで甘いものが止まらない
この流れでは、インスリンが多めに分泌され、その反動で血糖が下がりすぎることがあります。これが反応性低血糖です。低血糖は脳にとって緊急事態なので、身体はアドレナリンなどを動員して立て直そうとします。結果として、メンタルに似た症状が出ます。
メンタルが揺れる仕組み 自律神経とホルモンの話
血糖が急に下がると、身体は次のような反応を起こしやすくなります。
交感神経が優位になりやすい
動悸、手の震え、発汗、焦燥感、落ち着かない感じ
脳がエネルギー不足に近づく
集中できない、頭がぼんやり、涙もろい、気分が沈む
睡眠に影響
夕方以降の過食や甘い間食で夜間に血糖が乱れると、中途覚醒や悪夢、寝つきの悪さにつながる人もいます
腸内環境やストレス反応も絡む
ストレスが強いと、過食や甘いものへの渇望が強まります。さらに睡眠不足が加わると食欲調整が乱れ、悪循環に入りやすいです
ここが大事です。
不安や抑うつがあるとき、血糖の乱れだけが原因とは限りません。ただ、血糖の波が上乗せされると症状が増幅し、回復を遅らせることがあります。
こんな症状は要注意 反応性低血糖のサイン
甘いものや糖質中心の食事のあと、1から4時間以内に起きやすいもの
強い眠気
イライラ、焦り、不安感
動悸、冷や汗、手の震え
頭痛、めまい
空腹感が急に強くなる
集中力低下、ミスが増える
気分の落ち込み、涙もろさ
補足
これらは貧血、甲状腺、起立性調節障害、更年期、睡眠時無呼吸、薬の影響でも起きます。自己判断で決めつけず、整理して相談することが近道です。
外来でよくある相談 体験談としての一例
これは特定の個人ではなく、外来でよく見かける訴えをもとにしたモデルケースです。
30代の会社員
午後の会議で急に動悸がして、胸がザワザワする感じが出る。仕事のストレスもあり、朝は食欲がなくコーヒーだけ。昼はコンビニの菓子パン、15時にチョコでしのぎ、夜は帰宅後に甘いものを食べてやっと落ち着く。
最初はパニック障害ではと心配して受診。問診で食事のリズムを一緒に確認し、症状が出る時間帯と間食が強く関連していることが見えてきました。
対策として
朝にたんぱく質を足す
昼を主食だけにしない
15時のチョコをナッツやヨーグルトに置き換え
甘い飲料を減らす
あわせてストレス対処としてカウンセリングも導入
数週間で、午後の強い不安の波が軽くなり、睡眠も安定していきました。
ここで重要なのは、心の問題か身体の問題かの二択にしないことです。心療内科では両方を一緒に整える発想を取ります。
今日からできる対策 食事と間食と飲み物
目的は血糖の急上昇を避け、急降下を起こしにくくすることです。極端な糖質制限をいきなり行うより、再現性の高い小さな改善が続きます。
食べ方のコツ
順番
野菜や汁物 たんぱく質 主食の順に食べると食後高血糖を抑えやすいです
主食を単独にしない
おにぎりだけ、パンだけにせず、卵、豆腐、鶏肉、魚、ヨーグルト、チーズ、納豆などを組み合わせる
飲み物を見直す
砂糖入りカフェドリンク、加糖の紅茶、エナジードリンク、スポーツドリンクは血糖の波を作りやすいです。水、無糖茶、無糖コーヒーを基本に
間食は血糖を急に上げないものへ
素焼きナッツ、無糖ヨーグルト、ゆで卵、チーズ、小袋の高カカオチョコ少量など
空腹が強いときは、甘いものを完全に我慢よりも、まず置き換えで成功体験を作る方が続きます
自分の波を見つける簡単な記録
1週間だけで十分です。
食べたものと時間
症状の時間帯 不安 イライラ 眠気 動悸 0から10で点数化
睡眠時間
カフェインとアルコール
これを持って受診すると、診察が一気に具体的になります。これが一次情報として最も価値のあるデータです。
受診の目安 心療内科と内科の使い分け
心療内科や精神科に相談してよいサイン
不安感や焦燥感が日常生活を邪魔している
眠れない日が続く
気分の落ち込みが続き、仕事や家事が回らない
パニック発作のような症状で外出が怖い
過食や甘いものへの依存感が強くなっている
ストレス要因の整理や考え方の癖の調整も必要だと感じる
内科も合わせて検討したいサイン
体重減少がある
強い倦怠感が続く
失神、意識が遠のく
動悸が強い、胸痛がある
糖尿病や甲状腺の既往、家族歴がある
実際には、心療内科で相談しながら必要に応じて採血など内科的評価につなげる流れがスムーズです。
緊急性が高い場合
自傷の考えが強い、死にたい気持ちが切迫している、食事が取れない、意識が飛ぶような症状がある場合は、ためらわず救急や入院可能な医療機関、地域の緊急窓口へ相談してください。
カウンセリングが効くケース 効きにくいケース
効きやすいケース
ストレスで甘いものに頼るパターンが固定化している
完璧主義や自己否定が強く、疲労と過食がセットになっている
対人関係の緊張で自律神経が乱れやすい
不安を避ける行動が増えて生活が狭くなっている
工夫が必要なケース
睡眠不足が強い、勤務が過酷でまず休息が必要
アルコール量が多い
栄養不足が目立ち、食事の土台作りが先
強い抑うつで話す力が残っていない
心療内科では、薬物療法、栄養と睡眠の立て直し、カウンセリングや認知行動療法、環境調整を組み合わせ、現実的に回せるプランを作ります。
FAQ よくある質問
Q1 甘いものをやめれば不安は治りますか
不安の原因が血糖の波に強く関連している場合は軽くなることがあります。ただし不安障害、うつ状態、パニック障害、PMDD、更年期、過換気、甲状腺など他の要因も多いので、症状が続くなら評価が必要です。
Q2 血糖値スパイクは痩せていても起きますか
起きます。食事の内容、空腹時間、睡眠不足、ストレス、カフェインなどで血糖の乱高下は起こりえます。体型だけでは判断できません。
Q3 反応性低血糖かどうか自分で確かめる方法はありますか
食後1から4時間の症状の出方と、食事内容の相関を記録するのが第一歩です。医療機関では必要に応じて採血や追加検査を検討します。家庭用の測定だけで結論づけるより、症状と生活のセットで評価する方が安全です。
Q4 低血糖が怖いので、常に甘いものを持ち歩くべきですか
まずは食事の組み立てで急降下を起こしにくくすることが基本です。持ち歩きが安心につながりすぎて、甘いものが増える悪循環もあるため、主治医と方針を決めるのがおすすめです。
Q5 仕事中の眠気と集中力低下にも関係しますか
関係する人はいます。糖質中心の昼食や甘い飲料で一気に上がった後、眠気やだるさが来やすいです。たんぱく質を足す、食後に短く歩く、午後のカフェインを調整するなどで変わることがあります。
Q6 受診したら薬を飲まないといけませんか
必ずではありません。生活調整とカウンセリング中心の方もいますし、睡眠や不安が強い時期だけ薬を併用する方もいます。選択肢を一緒に検討できます。
医師からのメッセージ
不安やイライラ、落ち込みが続くと、多くの方が自分の心が弱いせいだと責めてしまいます。でも実際の診療では、睡眠、ストレス、栄養、血糖の波、自律神経の乱れが重なって起きているケースが少なくありません。
甘いものが悪者というより、頼らざるを得ないほど疲れているサインとして現れていることもあります。
一人で抱えず、心療内科やカウンセリングで状況を言語化し、身体のリズムも含めて立て直す道を一緒に探しましょう。早めの相談ほど、回復の選択肢は増えます。

