双極性障害
解説
**双極性障害(そうきょくせいしょうがい)**は、かつて「躁うつ病(そううつびょう)」と呼ばれていた病気です。
**気分が高ぶって活動的になる「躁状態」と、気分が落ち込んで何もできなくなる「うつ状態」**をくり返すのが特徴です。
一時的に元気になるだけなら問題ありませんが、双極性障害の「躁状態」は度を越しており、社会生活や人間関係に大きな支障をきたすことがあります。
原因
双極性障害の原因は完全には解明されていませんが、以下のような生物学的・遺伝的要因が深く関係していると考えられています。
強いストレスやライフイベント
失業、離婚、大きな環境の変化、出産などをきっかけに発症することがあります。
脳内の神経伝達物質の異常
感情や意欲をコントロールするセロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリンなどが不安定になる。
遺伝的な体質
族に双極性障害やうつ病の既往がある場合、発症リスクが高くなる傾向があります。
症状
双極性障害には主に2つの状態があります:
【躁状態(そうじょうたい)】
気分が異常に高揚し、行動や思考が加速している状態。
- 自分はなんでもできるという万能感
- 睡眠時間が少なくても元気(3時間でも活動できるなど)
- 話が止まらない、考えが次々に浮かんでくる
- 浪費や無謀な行動(借金、ギャンブル、大量購入など)
- 異常に社交的、または攻撃的になる
- 性的な衝動が強くなる
本人は「絶好調」と感じていても、周囲が困惑するケースが多く、病識(病気の自覚)を持ちにくいのが特徴です。
【うつ状態】
通常のうつ病と似た症状が見られます。
- 気分が沈む、興味・喜びを感じない
- 疲れやすく、無気力になる
- 自分を責める、自己評価が低くなる
- 食欲や睡眠の変化
- 自殺願望・希死念慮が生じることも
※双極性障害では、うつ状態だけが続く時期もあり、「ただのうつ病」と誤診されることもあります。
治療方法
双極性障害は再発しやすい病気ですが、正しい治療を継続することで、安定した生活を送ることができます。
1. 薬物療法(中心的な治療)
- 気分安定薬(例:リチウム、バルプロ酸、ラモトリギン)
→躁とうつの波を小さくし、気分を安定させる - 抗精神病薬(必要に応じて)
→躁状態の興奮や幻覚・妄想が強い場合に使用 - ※ 抗うつ薬は単独で使うと躁転(うつ→躁になる)リスクがあるため、慎重に使用されます。
2. 心理療法・精神療法
- 再発のサインを早期にキャッチするスキルを身につける(気分日記の活用など)
- 家族療法(ご家族と病気への理解を共有する)
- ストレス対処や人間関係の見直し
3. 生活リズムの安定化
- 規則正しい睡眠・食事・運動
- 睡眠不足や夜更かしは再発のきっかけになるため注意
- 刺激の多すぎる環境(仕事量・人間関係)を避ける
心療内科やカウンセリングに行くタイミグ
以下のような兆候がある場合は、早めに受診を検討しましょう:
- 気分の浮き沈みが極端で、生活に支障がある
- 「絶好調」のあとに急激な落ち込みがある
- 自分では気づかないうちにトラブルを起こしてしまう(浪費・暴言・対人トラブルなど)
- 睡眠時間が極端に短いのに活動的すぎる
- 自分の気分や行動がコントロールできず、周囲とのトラブルが増えている
- 過去にうつ病と診断されたが、うつだけでなく「妙に元気な時期」もあった
※「性格の問題」「一時的な気分の波」と思わず、専門医の判断を仰ぐことが大切です。
医師からの言葉・この病気との向き合い方
双極性障害は、コントロール可能な病気です。
大切なのは、病気の波を「完全になくそう」とするのではなく、「波を小さくし、安定した日常を保つ」ことです。
こんなふうに考えてみてください:
「わたしの心は、大きな海のようなもの。波があっても、やがて静かになる。だから焦らず、波をやりすごせばいい。」
治療を続けていく中で、自分の変化に気づく力が身につき、再発を予防する方法もわかってきます。
家族や周囲と協力しながら、無理なく、できることから少しずつ整えていきましょう。
そして何より——
「ひとりじゃない」ということを忘れないでください。