急性ストレス障害
解説
急性ストレス障害(ASD:Acute Stress Disorder)とは?
ASDは、命に関わるような出来事や強い恐怖・ショックを経験した後に起こる、短期間のストレス反応を指します。
「トラウマの直後に出る心身の不調」と考えると分かりやすいでしょう。
原因
原因
ASDの原因は、**極度にストレスフルで衝撃的な出来事(トラウマ)**です。たとえば:
- 交通事故や自然災害(地震・洪水・火災など)
- 暴行、性的暴力、犯罪被害
- 重い病気の宣告や突然の死別
- 事故や事件の目撃
これらの体験によって、脳が強いストレスを受け、心と体が過剰な反応を起こします。
症状
ASDの症状は、体験後すぐ〜1か月以内に出現し、数日〜数週間続くことがあります。主に以下のような症状が見られます。
再体験症状
- フラッシュバック(出来事が繰り返し思い出される)
- 悪夢を見る
- 些細な刺激で当時の記憶がよみがえる
解離症状
- 現実感がない(自分がここにいないような感じ)
- 感情が麻痺する、ぼーっとする
- 自分が自分でないような感覚(離人感)
過覚醒症状
- 眠れない、イライラしやすい
- ちょっとした音や動きにびくっとする
- 集中できない
回避行動
- 体験を思い出させる場所や人を避ける
- 感情や考えを感じないように努める
👉 症状が出るのは、「弱さ」ではなく、脳が極度のストレスから自分を守ろうとする正常な反応でもあります。る」という方も多くいます。
治療方法
ASDの治療では、心の安全を取り戻すことを第一に考えます。以下の方法を組み合わせて行います。
① 心理療法(特に早期介入が重要)
- 心理教育(psychoeducation)
→「今感じている反応は自然なもの」と理解してもらい、安心感を与える - トラウマ・フォーカスド・カウンセリング
→ 感情を整理し、安全な形で体験を語る練習 - 認知行動療法(CBT)
→ 過度な恐怖や回避行動を少しずつ和らげる
② 薬物療法(必要に応じて)
●不眠や強い不安に対して、抗不安薬や睡眠導入剤を短期的に使用することがあります。
●長期の服用は避け、基本は非薬物療法が中心です。
心療内科やカウンセリングを受けるタイミング
以下のような状態が1週間以上続いている場合、早めの受診が回復のカギになります。
- 強い不安や恐怖で日常生活に支障がある
- 夜眠れない、過去の体験が繰り返し思い出される
- 何も感じなくなったような無感覚状態がある
- 一人で抱えきれない苦しさがある
- 周囲との関係がうまくいかなくなっている
🟠 特に、**「自分がおかしくなったのではないか」**という不安を抱える方が多いため、医師やカウンセラーとの早期の対話がとても重要です。
医師からの言葉:ASDと向き合うあなたへ
あなたが今感じている苦しさや違和感は、「心が壊れてしまったから」ではありません。
それは、あなたの心が命がけで自分を守ろうとしている証拠です。
つらい記憶が鮮明に残っていたり、自分らしさを感じられなかったりするのは、ごく自然な反応です。
回復には、時間と安心できる環境、そして正しいサポートが必要です。
どうか一人で抱え込まず、信頼できる医療者と一緒に歩んでいきましょう。
あなたが「自分を取り戻す日」は、必ずやってきます。できます。早めに医師に相談し、自分に合った治療法を見つけることが大切です。