全般性不安障害
解説
**全般性不安障害(ぜんぱんせいふあんしょうがい)**とは、明確な理由がないのに、過剰な不安や心配が長期間続く状態を指します。
普通の「心配」とは異なり、不安の強さや持続期間が日常生活に影響を与えるレベルにまで達します。
例えば、「家族が事故に遭うのではないか」「将来お金が足りなくなるのでは」など、実際には起きていないことに対して強い不安や緊張感を持ち続けるのが特徴です。
原因
全般性不安障害の原因はひとつではなく、いくつかの要因が重なって発症すると考えられています。
主な要因は以下の通りです
脳内の神経伝達物質のバランス異常
セロトニンやノルアドレナリンなど、不安や緊張に関わる神経物質の働きが乱れることがあります。
遺伝的要因
不安傾向は性格や遺伝の影響も受けるとされています。
ストレスやトラウマ体験
仕事や家庭での長期的なストレス、事故・災害・いじめなどの経験がきっかけになることも。
性格傾向
まじめ、几帳面、責任感が強い、心配性といった傾向を持つ人がなりやすいとも言われます。
症状
全般性不安障害の症状は、大きく分けて「心理的な症状」と「身体的な症状」の両方があります。
【心理的な症状】
- 根拠のない強い不安や心配(家族・健康・仕事・お金など幅広い内容)
- 「最悪の事態」を想像してしまう
- 不安をコントロールできない、止められない
- 物事を悲観的に考えがち
- 集中力の低下、イライラ
【身体的な症状】
- 緊張感(体に力が入る)
- 疲れやすい
- 頭痛、肩こり、胃の不快感
- 動悸、息苦しさ、ふるえ
- 寝つけない、途中で目が覚める(不眠)
症状は軽い時期と強い時期をくり返すこともありますが、「何年も続いている」という方も多くいます。
治療方法
全般性不安障害は治療によって十分に改善が可能な病気です。
治療は、以下の2つを組み合わせるのが一般的です。
1. 薬物療法
- 抗不安薬・抗うつ薬(SSRI・SNRIなど)
不安の原因となる神経伝達物質のバランスを整える薬。依存性が低く、長期的に使用できます。 - ベンゾジアゼピン系抗不安薬(短期的な使用)
即効性がありますが、依存のリスクがあるため長期使用は避けるのが基本です。
2. 心理療法(認知行動療法など)
- 不安の「考え方のクセ(認知)」や「反応の仕方」を見直すトレーニング
- 「心配の連鎖」を止める方法を学ぶ(スモールステップで少しずつ)
- 不安を紙に書き出す、客観視するトレーニングなど
3. 生活習慣の改善
- 睡眠・食事・運動のリズムを整える
- カフェイン・アルコールを控える
- リラクゼーション(呼吸法、瞑想など)
心療内科やカウンセリングに行くタイミグ
以下のような場合は、早めに受診を検討しましょう:
- 不安や心配が毎日のように続き、6か月以上たっている
- 不安のせいで仕事や家事、人間関係に支障が出ている
- 頭や体の症状が病院で検査しても「異常なし」と言われた
- 人に相談しても「気にしすぎだよ」と言われてしまい、つらさが伝わらない
- 夜も寝つけず、日中も疲れが取れない
「こんなことで病院に行っていいのかな?」とためらう必要はありません。
あなたの「つらさ」は、十分に受診の理由になります。」
医師からの言葉・この病気との向き合い方
全般性不安障害は、心の「ブレーキ」が過敏になっている状態です。
決して「甘え」や「弱さ」ではありません。
まずお伝えしたいのは、この病気は回復可能であること。
治療を始めていけば、心の中の過剰な不安を少しずつ手放すことができるようになります。
以下のような考え方も、気持ちを楽にしてくれるかもしれません。
「心配しすぎてしまうのは、真面目に人生に向き合っている証拠。
でも、少し休んだり、頼ったりしても大丈夫。」
「“安心すること”にも、練習が必要。今はその練習中なんだ。」
焦らず、ゆっくり、あなたのペースで大丈夫です。
あなたの心に合った治療やサポートを一緒に見つけていきましょう。