うつ病

気分が落ち込む、興味や喜びがなくなる、気力や集中力の低下、不眠などが2週間以上続く場合、うつ病の可能性があります。日本では、日本におけるうつ病の生涯有病率は6.7%で、生涯のうちおよそ15人に1人がうつ病を経験していることがわかっています。
うつ病は決して珍しい病気ではなく、誰でもかかる可能性があります。特に女性では、男性よりも1.6倍ほど多いことが知られており、ライフステージに応じて、妊娠や出産、更年期と関連の深いうつ状態やうつ病などに注意が必要となります(厚生労働省.『みんなのメンタルヘルス総合サイト』)。
しかし、早めに対処することで、重症化を防ぐことができたり、使用する薬剤が少量ですんだりする場合があります。
また、早期にご自身の異変に気づけた場合には、あまり薬物療法に頼らず心理療法中心に治療することができるなどの場合があります。少しでもおかしいな、うつ病になりかけているのかなと感じることがあれば、お早めにご相談ください。

原因

発症の原因は正確にはよくわかっていませんが、感情や意欲を司る脳の働きに何らかの不調が生じているものと考えられています。うつ病が起きるメカニズムについてはいくつかの仮説が提唱されています。脳内のノルアドレナリンやセロトニンなどの神経伝達物質(モノアミン)が欠乏しているのではないかというモノアミン仮説や、ストレスにより脳内の免疫細胞から炎症性サイトカインが分泌され、脳内が炎症を起こし、うつ病を発症するというミクログリア仮説などです。
なお、体の病気や内科治療薬が原因となってうつ状態が生じることもあります。うつ病のメカニズムに関しては、現在も研究が進められてい ます。 うつ病の背景には、精神的ストレスや身体的ストレスなどが指摘されることが多いです が、辛い体験や悲しい出来事のみならず、結婚や進学、就職、引越しなどといった嬉しい 出来事でも、それが環境変化などのストレスとなり、うつ病の発症に影響を与えることがあります。
また、うつ病になりやすい気質・性格やうつ病を引き起こすきっかけとなるストレスがあり、それらが組み合わされることでうつ病をきたしやすくなることもわかっています。うつ病になりやすい気質・性格としては、真面目すぎる、完璧主義、自分に厳しい、凝り性、周囲に気を遣いすぎるなどがあげられています。そのことでストレスを受けやすい傾向にある可能性もあります。

症状

気分が落ち込む、興味や喜びがなくなる、気力や集中力の低下、不眠などが2週間以上続く場合、うつ病の可能性があります。うつ病の初期症状、うつ病にかかった方がとりやすい行動としては、下記のものが挙げられ、精神症状・身体症状を含めて多岐にわたります。また、周囲に心配をかけたくないなどの理由から人前では明るくふるまっていても、一人になったときに下記の症状が出現していることもあります。

  • 以前と顔つきが変わった、表情が暗い、笑顔がない
  • 自分を責めてばかりいる
  • 悲観的に考える
  • 涙もろくなった
  • 死について繰り返し考える、命を絶とうとする
  • 反応が遅い
  • 落ち着かない
  • 食事量が増える
  • 飲酒量が増える
  • 食欲がない
  • 性欲がない
  • 眠れない、過度に寝てしまう
  • 体がだるい、疲れやすい
  • 頭痛や肩こり
  • 動悸
  • 胃の不快感、便秘や下痢
  • めまい
  • 口が渇く
  • 頭がうまく働かない
  • 外見や服装を気にしなくなる
  • ぼんやりすることが多くなった

周囲にうつ病の方がいた場合、やってはいけないこともあります。本人を心配するあまり、「頑張って」「できるはず」などの言葉をかけたくなることがありますが、励ましの言葉や本人が焦ってしまうような言動には注意する必要があります。また、「怠けている」「この先どうするの」「逃げている」などといった強い言葉も、本人の孤立感を強めて病気を悪化させてしまいます。本人はうつ病になってから以前はできていたことができなくなったり、休まざるを得ない自分自身に対し無力感や罪悪感を抱いていることが多く、1日も早く元の生活に戻りたいと、誰よりも焦りを感じていることが多いです。うつ病は回復するまでに時間がかかる病気です。ゆっくり直していく必要があります。そっと見守ってあげることが大切です。うつ病の時には物事の見方や考え方が悲観的・否定的になりがちで、判断力も低下しています。そのような時に「仕事を辞める」「離婚する」など、重大な決定をすることは避けたほうがよいとされています。今は治療に専念し、重大な決定はできるだけ先延ばしさせるようにしてください。よくなったり悪くなったりを繰り返しながら、うつ病は徐々に回復していきます。休養や治療が不十分である場合や、復学・復職を急ぎすぎたりすると再燃のリスクが上がるため、少し調子がよくなったからといって油断は禁物です。良い状態を維持して再燃を防ぐためにも、本人の状態を見守りながら、調子が悪そうな時には無理をしないように伝えましょう。

治療法

うつ病の診断は、からだの病気で行う問診と同じような感じで、今悩んでいる症状や、生活の中での変化についてお話をうかがいます。お話や表情、全体的な様子や診断基準に基づき、医師が総合的に病状を判断します。ご家族や親しい方が同席されると、ご家族などからの客観的な情報も得られやすくなり、診察の役に立ちます。うつ病は治療しないと悪化して治りにくくなったり、その後の社会生活に大きな悪影響を与えてしまうことがあります。なるべく早く治療を開始することが大切です。一般的な重症度の場合、治療方法としては、「休養・運動」・「環境調整」・「薬物療法」・「心理療法」のいずれか、もしくはそれらの組み合わせが推奨されています。ただし、うつ病になりやすい気質・性格やうつ病を引き起こすきっかけとなるストレスがある以上、休養や薬物治療だけでは再燃のリスクが残ります。当クリニックでは、患者さんそれぞれのご希望やライフスタイルに合わせた提案をさせていただいております。うつ病をきたしやすい考え方や習慣、環境などを見つける心理療法も各種ご案内することができます。うつ病が治る最大のきっかけは治療を始めることです。これからの生き方を見つけるお手伝いをさせていただければうれしいです。

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