気分変調症
解説
気分変調症(きぶんへんちょうしょう)Dysthymia(ディスサイミア)Persistent Depressive Disorder(PDD:持続性抑うつ障害)は、長期間にわたって気分が落ち込んだ状態が続く心の病気です。
日々の生活をなんとか送れてしまうこともあり、「自分の性格の問題かも」と気づかれにくいことがあります。
ですが、これはれっきとした病気です。
無理して頑張り続けるのではなく、正しく向き合い、適切なケアを受けることで改善が見込めます。
原因
気分変調症の原因は、生物学的要因・心理的要因・環境的要因が複雑に関係しています。
慢性的なストレスや過去のトラウマ
仕事、家庭、学校での継続的なストレス、あるいは幼少期の心の傷が影響することもあります。
脳内の神経伝達物質の乱れ
感情を安定させるセロトニンやノルアドレナリンのバランスが崩れることで、気分が落ち込みやすくなります。
遺伝的素因
家族にうつ病などがある場合、似た傾向が表れやすいことがあります。
性格の傾向
まじめ、完璧主義、自己評価が低い、人に頼るのが苦手…といった傾向がある方は、ストレスを溜めやすく、発症リスクが高まります。
症状
気分変調症の症状はうつ病ほど強くはないものの、日常生活にじわじわと影響を与え、本人をじっくりと疲弊させていきます。
特に、**「気づかないまま長期間つらさを抱えている」**ことが多いのが特徴です。
主な症状は以下の通りです:
- 気分がなんとなく沈んでいる状態が毎日続く
- 喜びや楽しみを感じられない
- 疲れやすい、やる気が出ない
- 自分に対して否定的になりやすい(「自分はダメだ」など)
- 睡眠トラブル(寝つけない、途中で目が覚める、過眠)
- 食欲の変化(減退または過食)
- 集中力・判断力の低下
- 人付き合いを避けがちになる
「昔からこうだった」と感じていても、それは病気かもしれません。
治療方法
気分変調症はじっくり向き合っていくべき慢性疾患です。治療には時間がかかることもありますが、正しく取り組めば改善していきます。
1. 薬物療法
- SSRIやSNRIといった抗うつ薬を使用し、脳内のセロトニンやノルアドレナリンのバランスを整えます。
- 効果が出るまでに数週間かかることもありますが、継続が大切です。
2. 心理療法(カウンセリング)
- 認知行動療法(CBT)では、「自分はダメだ」といった思考のクセを見つめ直し、現実的で優しい考え方に変えていきます。
- 対話を通じて、自分自身を理解し直すプロセスでもあります。
3. 生活習慣の見直し
無理のない範囲で少しずつリズムを整えていきましょう。
規則正しい睡眠、バランスの取れた食事、軽い運動などは心の安定に大きく寄与します。
心療内科やカウンセリングに行くタイミング
以下のようなことに心当たりがある場合は、早めに受診をご検討ください。
- 「なんとなくつらい」が何か月も続いている
- 周りに相談しても「気のせい」「性格の問題」と言われてしまう
- 原因がわからないけど、ずっと気分が沈んでいる
- 睡眠や食欲が乱れている
- 「消えてしまいたい」「もう頑張れない」と感じることがある
- 学業や仕事、人間関係に支障が出ている
「この程度で病院に行っていいのかな?」と思う方こそ、ぜひ一度専門家に相談してみてください。
心の不調は、早めの対処が回復の鍵です。
医師からの言葉・この病気との向き合い方
気分変調症は、心が「がんばりすぎた」ときに出すサインでもあります。
たとえるなら、風邪が身体の「休んで」のサインであるように、気分変調症は心のブレーキです。
この病気に向き合うために、まずはご自身にこう言ってあげてください:
「今までよく頑張ってきたね。つらかったね。でも、これからは一人じゃないよ。」
治療は時間をかけて行うものです。焦らず、周囲の助けを借りながら、一歩ずつ回復していけば大丈夫です。
自分に少しだけやさしくなってみてください。
そして、つらさに名前がついたことで、これからは回復の道すじが見えてくるはずです。