
摂食障害の深刻な現状
近年、摂食障害は10代~30代の女性を中心に急増しています。特に注目すべきは、以下のようなデータです:
・日本における摂食障害患者数:約30万人(潜在患者を含めるとその3倍)
・発症年齢の低下:平均発症年齢が15歳から13歳に
・男性患者の増加:全体の10%から20%に増加傾向
主な摂食障害の種類と特徴
種類 | 主な特徴 | リスク |
---|---|---|
神経性やせ症 | 極端な食事制限 | 低栄養・不整脈 |
神経性過食症 | 過食と代償行為 | 胃腸障害・うつ |
過食性障害 | 過食のみ | 肥満・糖尿病 |
詳細なセルフチェックリスト
【神経性やせ症(拒食症)】
□ BMIが17.5以下(身長160cmで体重45kg以下)
□ 3ヶ月以上月経が停止
□ 食事時間が異常に長い(1時間以上)
□ 食品を細かく分けて食べる
□ 低温に耐えられない(体温35℃以下)
【神経性過食症】
□ 週に2回以上の過食発作(3ヶ月以上)
□ 1回の過食で3,000kcal以上摂取
□ トイレに30分以上こもる(代償行為)
□ 歯のエナメル質の損傷(嘔吐による)
【回避・制限性食物摂取障害(ARFID)】
□ 食べられる食品が30種類以下
□ 特定の食感や色を拒否
□ 栄養失調の症状(脱毛、皮膚の乾燥)
最新の医学的知見に基づく原因分析
① 生物学的要因:
セロトニン伝達機能の異常
遺伝的要因(一卵性双生児の一致率50-80%)
② 心理的要因:
完璧主義傾向(85%の患者に確認)
感情調節の困難さ
③ 社会文化的要因:
SNSの”やせ賛美”文化の影響
早期のダイエット経験(12歳以下でダイエット開始者の発症リスク8倍)
専門医療機関での治療プロセス
【初診時検査】
身体検査:
血液検査(電解質、肝機能)
心電図(不整脈の有無)
骨密度測定(若年者の骨粗鬆症リスク)
【治療の実際】
① 栄養療法:
段階的体重増加プログラム(週0.5-1kg)
個別の食事プラン作成
② 認知行動療法:
自動思考記録表の活用
ボディイメージの修正
③ 薬物療法:
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
オランザピン(体重増加を助ける)
家庭でできる具体的なサポート方法
【食事サポート】
× 「食べなさい」と強要する
○ 「一緒に食事を作る」ことを提案
【コミュニケーション】
× 体重や外見の話題
○ 感情や興味について会話
【環境調整】
体重計を片付ける
鏡の数を減らす
回復までの標準的な期間と経過
【治療期間の目安】
・短期回復:6ヶ月~1年(軽症例)
・中期回復:1~3年(中等症)
・長期管理:3年以上(重症例)
【回復の指標】
・生理の再開(女性の場合)
・BMI18.5以上の維持
・過食/嘔吐が月1回以下
専門機関の受診を強く勧めるケース
参考文献
American Psychiatric Association. (2022). Practice Guideline for the Treatment of Patients With Eating Disorders.
[DOI:10.1176/appi.books.9780890425596]
日本摂食障害学会. (2023). 摂食障害治療ガイドライン第3版.
[https://www.jspn.jp/guideline/]
National Institute for Health and Care Excellence. (2023). Eating disorders: recognition and treatment.
[https://www.nice.org.uk/guidance/ng69]
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