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なんだか、つらい そのサイン、見過ごさないでください
「最近よく眠れない」 「理由もないのに、胸がザワザワして不安になる」 「仕事に行こうとすると、お腹が痛くなったり動悸がしたりする」
こんな風に、心や体の不調を感じていながらも、「気のせいだ」「自分が弱いだけだ」と我慢してしまっていませんか?
クリニックの診察室では、日々多くの方がこのような悩みを打ち明けてくださいます。あなたが感じているその「つらさ」は、決して特別なことでも、甘えでもありません。それは、あなたの心が「少し休んでほしい」と送っている大切なサインなのです。
この記事では、心療内科がどんな場所で、あなたがどうすれば安心して一歩を踏み出せるのか、専門医の立場から優しくガイドします。
心療内科ってどんなところ?精神科との違いは?
よく「心療内科と精神科って何が違うの?」と質問されます。簡単に言うと、心療内科は「心が原因で、体に症状が出ている」状態を主に診る科です。
- 心療内科: ストレスによる胃痛、頭痛、めまい、動悸、過敏性腸症候群(IBS)など、身体症状がメインの場合
- 精神科: 気分の落ち込み、幻覚、強い不安など、精神症状がメインの場合
実際には両方の領域を診るクリニックがほとんどです。ですから「どちらに行けばいいか分からない」と悩む必要はありません。「心と体の不調」を感じたら、まずは心療内科のドアを叩いてみてください。
【科学的根拠】なぜ専門家への相談が必要なのか?ストレスが心身を蝕むメカニズム
「ストレスは体に悪い」と漠然と知っていても、具体的に何が起きているのでしょうか。
人間はストレスを感じると、対抗するために「コルチゾール」というホルモンを分泌します。これは短期的には体を守るために不可欠なものですが、ストレスが慢性化すると、このコルチゾールが過剰に分泌され続けます。
引用文献情報
長期的なストレスは、脳の記憶を司る「海馬」を萎縮させたり、免疫機能を低下させたり、生活習慣病のリスクを高めることが多くの研究で示されています。つまり、「気の持ちよう」では解決できない、明確な身体の変化が起きているのです。
引用元 (PubMed): McEwen, B. S. (2007). Physiology and neurobiology of stress and adaptation: central role of the brain. Physiological reviews, 87(3), 873–904. 有効なURL: https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/physrev.00041.2006
専門家への相談は、この負のスパイラルを断ち切るために不可欠です。私たちは、あなたの心と体に起きていることを正しく評価し、適切な治療法(カウンセリングや必要に応じた薬物療法など)で、元の健やかな状態に戻るお手伝いをします。
【体験談】一歩を踏み出したAさん(32歳・会社員)の話
「最初は、心療内科に行くことにすごく抵抗がありました。『病気だと認められたくない』という気持ちが強くて。でも、毎朝の吐き気と頭痛で仕事に集中できず、藁にもすがる思いで予約しました。 先生は私の話をじっくり聞いてくれて、『それはつらかったですね』と一言だけ言ってくれました。その瞬間、涙が溢れてきて。初めて自分のつらさを分かってもらえた気がしました。カウンセリングで自分の考え方の癖に気づき、少しずつですが物事の捉え方が楽になりました。今では、不調もほとんどありません。あの時、勇気を出して本当によかったです。」
【Q&A】心療内科のよくある疑問
Q1: 薬に頼りたくないのですが、必ず処方されますか? A1: いいえ、必ずではありません。お薬は、症状が強く、日常生活に支障が出ている場合に、推奨することがあります。カウンセリング中心の治療が適切である場合もあります。治療方針は、ご本人の希望を最大限尊重しながら一緒に決めていきますので、ご安心ください。
Q2: 費用はどのくらいかかりますか?保険は使えますか? A2: 心療内科の診察やカウンセリング、処方されるお薬は、ほとんどが健康保険の適用対象です。初診の場合は、診察料や検査料などで4550円〜5700円程度(3割負担の場合)、再診では1,500円前後が目安となります。
診断書などの書類は基本的に自費となるケースが多いです。
Q3: どんなことを話せばいいか分かりません。うまく話せる自信がありません。 A3: 全く問題ありません。うまく話そうとしなくて大丈夫です。「眠れない」「食欲がない」「不安だ」といった断片的な言葉でも構いません。事前に「いつから、どんな時に、どんな症状が出るか」を簡単にメモしておくと、少し話しやすくなるかもしれません。私たちは、あなたの言葉にならない声に耳を傾けるプロです。
医師からのメッセージ
一人で、その重荷を背負わないでください
この記事をここまで読んでくださったあなたは、すでに自分の心と真剣に向き合おうとしている、とても誠実な方なのだと思います。
心がつらい時、助けを求めることは、決して弱いことではありません。むしろ、自分の人生を大切にしようとする、非常に勇気ある行動です。
私たちは、あなたの「心の伴走者」です。あなたが抱える荷物を少しだけ預けて、また自分の足で軽やかに歩き出せるようになるまで、すぐ隣でサポートします。
「相談してよかった」 そう思っていただける場所を用意して、お待ちしています。 あなたの心が、晴れ渡る日が来ることを、心から願っています。