毎日の頭痛、鎮痛薬でごまかしていませんか?その正体は“緊張型頭痛”かも

「また今日も、頭がズーンと重い…」 「パソコンに向かっていると、後頭部から首筋にかけてギューッと締め付けられるようだ」

そんな毎日の不快な頭痛を、市販の鎮痛薬でなんとかやり過ごしている方はいませんか?その痛み、もしかしたらあなたの心と体が発している大切なサインかもしれません。

こんにちは、心療内科医です。私のクリニックにも、原因不明の頭痛に長年悩まされている方が多くいらっしゃいます。そして、その多くが**「緊張型頭痛」**と診断されます。

今回は、この最もありふれた、しかし非常に厄介な「緊張型頭痛」について、あなたの心に寄り添いながら、その正体と本当の治し方をお話ししたいと思います。

そもそも「緊張型頭痛」ってどんな痛み?

緊張型頭痛は、よく「ヘルメットをかぶったような」「ハチマキで締め付けられるような」と表現される、圧迫感のある鈍い痛みが特徴です。ズキンズキンと脈打つような片頭痛とは違い、吐き気や光・音への過敏さを伴うことは稀で、「我慢できないほどではないけれど、ずっと続く不快感」が数時間から数日続くこともあります。

この「我慢できてしまう」というのが、実は厄介な点です。多くの人が「いつものことだから」「疲れているだけだろう」と専門医に相談せず、鎮痛薬に頼りがちになります。しかし、薬は一時的に痛みを感じなくさせているだけで、根本的な解決にはなっていません。むしろ、薬の飲み過ぎが新たな頭痛(薬物乱用頭痛)を引き起こすことさえあるのです。

頭痛の真犯人、それは「体のコリ」と「心のコリ」

では、なぜ緊張型頭痛は起きるのでしょうか? 原因は大きく分けて2つ考えられます。

  1. 身体的な緊張(体のコリ)
    • デスクワークやスマホの長時間利用: 同じ姿勢を続けることで、首・肩・背中の筋肉が凝り固まり、血流が悪くなります。これが頭部への神経を刺激し、痛みを引き起こします。いわゆる「スマホ首」も大きな原因の一つです。
    • 姿勢の悪さ: 猫背や反り腰など、無意識の姿勢の癖が、特定の筋肉に過剰な負担をかけています。
  2. 精神的な緊張(心のコリ)
    • ストレス: 仕事のプレッシャー、人間関係の悩み、家庭の問題など、精神的なストレスは、自律神経のバランスを乱します。交感神経が優位になり、無意識のうちに全身の筋肉、特に首や肩周りが緊張状態になります。
    • 不安や抑うつ: 「また頭痛が起きたらどうしよう」という不安自体が、新たなストレスとなり、頭痛を悪化させる悪循環に陥ることがあります。また、気分の落ち込み(抑うつ状態)の身体症状として、頭痛が現れることも少なくありません。

心療内科では、この**「心のコリ」が「体のコリ」を生み出し、結果として頭痛を引き起こしている**ケースを非常に多く目にします。あなたのその頭痛、もしかしたら頑張りすぎているあなたの心が、体を通して「少し休んで」とサインを送っているのかもしれません。

体験談:Aさん(34歳・女性)のケース

「ここ数年、平日はほぼ毎日、夕方になると頭が重くなっていました。肩こりもひどかったので、マッサージに通ったり、鎮痛薬を飲んだりしていましたが、その場しのぎで…。仕事のパフォーマンスも落ちて、何より気分が晴れない毎日でした。ある時、友人に勧められて心療内科を受診したんです。先生との対話の中で、自分が職場の人間関係で相当なストレスを抱え、常に気を張っていたことに気づかされました。頭痛は、その心の緊張の現れだったんですね。カウンセリングを受け、ストレスとの向き合い方を学び、簡単なリラクセーション法を実践するうちに、あれほど毎日あった頭痛が嘘のように軽くなっていきました。鎮痛薬を飲む回数も、今では月に1〜2回あるかないかです。」

Aさんのように、痛みの原因が心にあると気づくことが、改善への大きな一歩となるのです。

Q&A:緊張型頭痛のよくある疑問

Q1. 自分でできるセルフケアはありますか?

A1. はい、もちろんです。まずは「体のコリ」と「心のコリ」の両方をほぐすことを意識しましょう。

  • こまめなストレッチ: 1時間に1回は立ち上がり、首や肩をゆっくり回したり、背筋を伸ばしたりしましょう。
  • 体を温める: ぬるめのお湯にゆっくり浸かる、蒸しタオルで首や目元を温めるなど、血行を促進させましょう。
  • リラックスタイムを作る: 5分でも良いので、深呼吸をする、好きな音楽を聴く、温かいハーブティーを飲むなど、意識的にスイッチをオフにする時間を作りましょう。
  • 適度な運動: ウォーキングなどの有酸素運動は、血行促進だけでなく、気分転換やストレス解消にも非常に効果的です。

Q2. どんな時に病院へ行くべきですか?

A2. 次のような場合は、専門医への相談をお勧めします。

  • 市販薬を週に2〜3回以上飲んでいる
  • セルフケアを試しても、頭痛が1ヶ月以上改善しない
  • 頭痛のせいで仕事や日常生活に支障が出ている
  • 頭痛だけでなく、気分の落ち込み、不安、不眠などの症状もある
  • これまで経験したことのない激しい頭痛や、手足のしびれなど他の症状を伴う場合(※この場合は、脳神経外科などへの緊急受診が必要です)

Q3. 心療内科ではどんなことをするのですか?

A3. 心療内科では、まず丁寧にお話をお伺いし、あなたの頭痛がどのような状況で起こり、どのような生活背景やストレスが関係しているのかを一緒に探っていきます。治療は、薬物療法だけでなく、ストレスへの対処法を学ぶカウンセリング(心理療法)や、筋肉の緊張を和らげるリラクセーション法の指導など、多角的なアプローチで行います。頭痛だけを診るのではなく、「あなた」という一人の人間を丸ごと理解し、心と体の両面からサポートするのが心療内科の役割です。

引用文献

本記事で言及している緊張型頭痛の診断や原因に関する記述は、国際的な医学研究やガイドラインに基づいています。

  • 引用文献1: Ashina, S., Mitsikostas,
Translate »