
「朝、通勤の時間になると決まってお腹が痛くなる…」
そんなお悩みを抱える方は少なくありません。特にストレスの多い現代社会では、**過敏性腸症候群(IBS)**という病気が関係している可能性があります。
この記事では、通勤前の腹痛とストレスとの関連性、IBSの症状や原因、治療法について心療内科の視点から詳しく解説します。
「気のせい」では片づけられない症状への正しい理解と、心療内科でのサポート体制についてお伝えします。
目次
通勤前にお腹が痛くなる理由とは?
「平日は毎朝お腹が痛くなるのに、休日は大丈夫」という方は、心理的ストレスが症状に関係している可能性が高いです。
会社や学校、職場環境、人間関係など、“行きたくない”気持ちが体に表れているのかもしれません。
過敏性腸症候群(IBS)とは?
**過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome: IBS)**は、検査では腸に異常が見つからないにも関わらず、慢性的な腹痛や下痢・便秘が続く病気です。
- 20〜40代に多く、特に働き盛りの世代に多くみられます
- 女性にやや多い傾向
- ストレスや緊張が強いと悪化しやすい
📘 参考文献:
Camilleri M. Management of the irritable bowel syndrome. Gastroenterology. 2001; https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11781292/
ストレスとIBSの深い関係
IBSの原因ははっきりとは解明されていませんが、多くの研究が「ストレス」との関連を示唆しています。
腸は「第二の脳」とも呼ばれるほど神経細胞が多く存在し、ストレスが腸の運動や感受性に影響を与えます。特に交感神経の過剰な活性化や、セロトニンのバランスの乱れが発症に関与していると考えられています。
🧠【参考文献】
Ford AC, et al. Efficacy of antidepressants and psychological therapies in irritable bowel syndrome: systematic review and meta-analysis. Gut. 2009;58(3):367–378.
PubMedリンク
よくある症状と診断方法
代表的な症状:
- 通勤や登校前の腹痛・下痢
- トイレに頻繁に行きたくなる
- お腹の張りやガスがたまる
- 排便後にスッキリしない感覚
診断には以下が用いられます:
- ローマIV基準に基づいた問診
- 必要に応じて血液検査や大腸内視鏡検査(他の病気の除外)
治療法:薬だけじゃない、心のケアも大切
IBSの治療は、薬物療法と心理療法の組み合わせが効果的です。
⦿ 薬物療法:
- 整腸剤、抗コリン薬、下痢止め
- 抗不安薬や抗うつ薬(低用量)
⦿ 心理療法:
- 認知行動療法(CBT)
- 自律訓練法やマインドフルネス
- カウンセリングや心療内科の受診
放っておくとどうなる?
IBSは命に関わる病気ではありませんが、QOL(生活の質)を著しく下げる可能性があります。特に出勤や外出が苦痛になり、仕事や人間関係にも悪影響を与えかねません。
心療内科でできるサポート
心療内科では、身体と心の両面からアプローチしていきます。
- 丁寧な問診と心理的背景の把握
- 薬物治療と並行してカウンセリングを実施
- 生活習慣の見直しサポート
一人で抱え込まず、まずは相談してみることが回復への第一歩です。
我慢しないで、相談する勇気を
「たかが腹痛」と思って我慢していませんか?
それは体が発しているSOSのサインかもしれません。
ストレス社会に生きる今だからこそ、心と身体の声に耳を傾け、しっかりとケアすることが大切です。
医師からのひとこと
「IBSは“心のストレス”が“体の症状”として現れる代表的な病気です。
早めの相談と対処で、つらい毎日は必ず改善できます。
あなたの心と腸が、ホッとできる場所を一緒に見つけていきましょう。」