学生のための心療内科活用法─不登校、進路、いじめ相談

はじめに:迷ったら一度、専門家に頼ってください

思春期・学生の心身は、勉強、部活、進路、人間関係、SNS…さまざまな負荷の上に成り立っています。強いストレスが続くと、自律神経や睡眠リズムが乱れ、心だけでなく体にも症状が現れます。「怠けているのでは?」と自分を責めるほど、回復は遠のきます。
心療内科は、「こころ」と「からだ」を一緒に診る専門科。受診は、弱さの証明ではなく回復へのショートカットです。

こんなサインは相談の合図

  • 朝になると強い倦怠感・腹痛・頭痛が出て、午後には少し楽になる(起立性調節障害の典型)
  • 学校やクラスを考えると動悸・吐き気・過呼吸が出る(不安症・パニック傾向)
  • 成績や進路の不安で眠れない・過眠する・食欲が乱れる(うつ状態・適応障害
  • いじめ・SNSトラブル後、集中力低下・夜驚・フラッシュバック(ストレス反応・PTSD)
  • 「行かなきゃ」と思うほど体が動かない(エネルギー低下、抑うつ)

症状の背景にあるもの

  • 生物学的要因:自律神経の乱れ、睡眠リズムの後退、鉄欠乏・ビタミン不足、ホルモン変動、感覚過敏や発達特性
  • 心理的要因:完璧主義、自己否定、いじめ・ハラスメントの恐怖、評価不安
  • 社会的要因:通学負担、家庭内の役割変化、SNSでの比較・監視、進路圧

心療内科では、身体検査と心理評価を組み合わせ、原因を一つに決めつけず「重なり」と「相互作用」を見ます。

心療内科でできること

  • 評価
    • 睡眠・自律神経の評価
    • 心理検査(不安・抑うつ尺度、ストレス評価、性格分析)
    • 発達特性のスクリーニング
    • 栄養・身体疾患の除外(鉄・甲状腺など)
  • 治療
    • カウンセリング(支持的、家族支援、ブリーフセラピー)
    • 認知行動療法(CBT)・ストレスマネジメント
    • 睡眠介入(光療法的支援、行動調整、起床ルーティン)
    • 薬物療法(必要最小限・短期的に。不安・抑うつ・自律神経症状への処方)
    • 学校との連携(担任・スクールカウンセラー・養護教諭と情報共有、登校配慮、分散登校、保健室登校)
    • 社会資源の活用(相談窓口、フリースクール、教育支援センター)
  • 受診のハードルを下げる工夫
    • オンライン初回相談枠(状況共有)
    • 同意のもとでの保護者同席
    • 思春期外来枠

受診の流れと持ち物

  • 予約
    • 症状・困りごとのメモ(時系列・強さ・きっかけ)
    • 学校からの連絡や保健室での記録があれば持参
  • 初診
    • 生活リズム・睡眠・食事・SNS利用・身体症状の評価
    • 学校状況・いじめの有無・家庭での支援状況
  • 治療計画
    • 目標設定(例:まずは週2日午後登校、朝の腹痛50%軽減)
    • 具体策(起床/就寝計画、CBTワーク、学校配慮の依頼)
  • フォロー
    • 2〜4週ごとの調整、必要時は学校とケースカンファレンス

持ち物:お薬手帳、母子手帳(小中高生は任意)、学校の連絡、健康診断結果、保険証・医療証

体験談(本人の同意を得た要約)

  • 中2・Aさん(起立性調節障害+不安)
    • 朝の頭痛と吐き気で遅刻が続き不登校気味に。睡眠リズムの是正と少量の薬、CBTで「朝の不安スイッチ」を可視化。学校は午前免除→午後2時間登校から再開。3カ月で週4日登校へ。
  • 高3・Bさん(適応障害・進路不安)
    • 模試の偏差値で自己否定が強まり不眠と食欲低下。支持的カウンセリングと「学習負荷の再設計」、入眠儀式の導入で2週間で睡眠改善。学校とは課題調整を合意。受験は第一志望変更も、燃え尽きずに完走。
  • 高1・Cさん(いじめ後のストレス反応)
    • SNSでの晒し行為後、登校で過呼吸。安全計画(SOSカード)、段階的曝露、保護者・学校と情報共有。加害行為は学校・外部窓口が介入。4カ月でクラス替え後に環境改善。

※個人情報は変更・要約しています。

よくある質問(Q&A)

Q. どのタイミングで受診すべき?

A. 2週間以上つらさが続く、欠席や成績への影響、身体症状が繰り返すなら受診を。早いほど回復が速い傾向です。

Q. 薬は必ず必要?

A. いいえ。生活介入とカウンセリングが基本。必要な場合でも最小量・短期間を原則とします。

Q. 学校への診断書や配慮は?

A. 可能です。保護者・本人の同意のもと、段階的登校や評価配慮を具体的に提案します。

Q. オンライン診療はできますか?

A. 状況により初回相談やフォローで活用します。対面が望ましい場面は併用します。

Q. 費用はどのくらい?

A. 保険診療が基本です。検査や文書料は別途かかる場合があります。初診時にご説明します。

Q. プライバシーは守られますか?

A. 同意なく学校や第三者に情報を提供しません。連携は必ず本人・保護者の同意の上で行います。

自宅でできるセルフケア(当面の安全策)

  • 起床後に太陽の光を浴びる:カーテン全開+5〜10分の朝日・室外光
  • 睡眠衛生:就寝90分前にスマホ休憩、ぬるめの入浴、毎日同じ起床時刻
  • 栄養と水分:朝は軽くでOK(バナナ+牛乳など低負荷)
  • ストレスの見える化:1日3行日記、体の反応ときっかけを記録
  • SOSリスト:相談できる大人3人、連絡先を紙で持つ
  • いじめ・ハラスメントは「証拠を残す」(スクショ・日時記録)+大人に共有

学校・家庭・医療の三位一体の支援

  • 情報共有:同意書に基づき、担任・SC・養護教諭と要点のみ共有
  • 合理的配慮:分散登校、座席・休憩、評価方法の調整
  • ケース会議:目標と評価指標を共有(欠席日数、腹痛スケール、学習時間など)
  • 家族支援:保護者向けミニレクチャー(関わり方、声かけ)

当院の特色

  • 平日の夜、土曜日も受診可能:部活後でも受診可
  • 学校連携の実績:診断書・配慮提案のテンプレート完備

医師からのメッセージ

あなたが感じている「つらさ」は、見えないだけで確かな“症状”です。治す順番は、気合いではなく、睡眠・自律神経・安心の土台作りから。学校との折り合いも、医療が橋渡しできます。一人で抱え込まず、まずは10分だけ話しに来てください。回復は必ず、あなたのペースで始められます。

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