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不安や動悸がつらいとき、まず疑ってよい身近な刺激
不安感や動悸で受診される方の中には、検査で大きな異常が見つからず、原因が分からないまま我慢してしまう方が少なくありません。そんなとき、最初に見直しやすいのがカフェインです。
コーヒー、紅茶、緑茶、栄養ドリンク、エナジードリンク、チョコレート、眠気覚ましの錠剤など、日常のあちこちにカフェインは入っています。特に不安障害、パニック障害、適応障害、うつ状態、不眠がある方は、少量でも症状が揺れやすいことがあります。
カフェインで不安が強まる理由 自律神経と脳の仕組み
カフェインは主に次の方向に体を刺激します。
- 交感神経を優位にしやすい
心拍数が上がる、手が震える、汗が出る、呼吸が浅くなるなど、いわゆる緊張時の身体反応が出やすくなります。 - 不安の身体症状を増幅しやすい
動悸や胸の違和感をきっかけに、また発作が起きるかもという予期不安が強まる方がいます。 - 睡眠を浅くし、翌日の不安耐性を下げる
寝つきが悪い、途中で目が覚める、夢が多いなどが続くと、脳が休まらず不安が悪化しやすくなります。
心療内科では、こうした悪循環を自律神経の乱れとして説明することが多いです。原因が性格の弱さではなく、刺激と体の反応の組み合わせで起きているケースも多いのです。
どれくらいから取りすぎ?カフェイン量の目安と落とし穴
一般に成人では、カフェインは摂りすぎない範囲を意識することが勧められます。ただし体質差が大きく、同じ量でも平気な人とつらくなる人がいます。不安や動悸がある方は、一般的な目安より少なめが安全です。
目安になりやすいカフェイン量の例
- ドリップコーヒー 1杯で約80から140mg程度になることが多い
- 缶コーヒー 1本で約50から120mg程度
- エナジードリンク 1本で約80から200mg程度のものがある
- 緑茶 1杯で約20から40mg程度
- 紅茶 1杯で約30から50mg程度
落とし穴は、量だけでなく時間帯です。午後のコーヒーが夜の不眠を作り、翌朝のだるさをコーヒーで補って、さらに不安と動悸が出る。この流れがとても多いです。
こんな症状は要注意 パニック発作と見分けたいサイン
カフェインで増えやすい症状は次の通りです。
- 動悸、脈が速い
- 胸がざわざわする、胸が締め付けられる感じ
- 息が吸いにくい、過呼吸気味
- 手の震え、落ち着かなさ
- 胃のむかつき、吐き気
- 不眠、中途覚醒
- そわそわして集中できない
一方で、次のような場合は、カフェインだけの問題と決めつけず、早めに医療機関で評価が必要です。
- 胸痛が強い、冷汗、強い圧迫感がある
- 失神しそう、実際に倒れた
- 脈が不規則に飛ぶ感じが続く
- 安静にしても息苦しさが改善しない
- 甲状腺の病気、貧血、不整脈などが疑われる
心療内科の前に内科や循環器内科で検査が必要なケースもあります。安全確認は遠回りではなく、的確な治療を受けられるという意味でも回復の土台になります。
外来でよくある体験談 仕事・育児・受験期に増える相談
個人が特定されないよう内容を一部調整した上で、外来でよく見るパターンを紹介します。
体験談1:30代 会社員 プレゼン前の動悸が止まらない
朝にコーヒー2杯、昼休みに眠気覚ましで缶コーヒー、夕方にもう1杯。仕事量が増え、睡眠時間が短くなった頃から、会議前に胸がドキドキして息が浅くなり、また発作が来るのではと不安が強くなりました。
まず取り組んだのは、昼以降のカフェインをデカフェへ変更し、会議前の追加コーヒーをやめること。1から2週間で動悸の頻度が下がり、同時に認知行動療法的なアプローチで予期不安への対処も練習しました。結果として、体の揺れが落ち着くと心の不安も下がっていきました。
体験談2:40代 育児中 夜の不眠と焦り
子どもが寝た後にやっと一息つける時間ができ、夜にコーヒーを飲むのが習慣に。寝つきが悪くなり、翌朝は疲れが残り、日中にイライラや不安感が強くなりました。
夜のコーヒーをカフェインレスに変え、寝る前のスマホ時間を短くし、呼吸法を取り入れたところ、睡眠が少しずつ戻りました。眠れるようになると、不安の土台が整い、動悸も減りました。
ポイントは、カフェインが悪者というより、疲労と睡眠不足とストレスの上に刺激が乗ると症状が増幅しやすいことです。
今日からできる コーヒーの減らし方とデカフェ活用術
急にゼロにすると、頭痛、だるさ、集中力低下などの離脱症状が出る方がいます。おすすめは段階的な調整です。
減らし方の現実的な手順
- まず夕方以降のカフェインをやめる
睡眠の質が上がると、翌日の不安と動悸が落ちやすいです。 - 1日の上限を決める
例として午前中に1杯まで、など。自分の体質に合わせて設定します。 - デカフェやカフェインレスへ置き換える
味や香りで満足感を保ちつつ、刺激を減らせます。 - 早食いと空腹コーヒーを避ける
空腹時は動悸や胃症状が出やすい方がいます。 - 水分とミネラルを意識する
脱水気味だと動悸が強く感じられることがあります。
こんな工夫も効果的です
- カフェイン量が明記された製品を選ぶ
- エナジードリンクと眠気覚まし錠剤は併用しない
- パニック症状がある時期は、刺激物全般を控えめにする
カフェインだけでなく、喫煙、過度のアルコール、寝不足もセットで影響します。
受診の目安 内科・循環器・心療内科をどう使い分けるか
動悸や息苦しさがあるとき、心の問題と決めつけられるのが怖くて受診が遅れる方がいます。実際は、体のチェックと心のケアは両立できます。
- まず内科、循環器内科が適しているケース
胸痛が強い、脈が乱れる、失神しそう、基礎疾患がある、家族歴がある など - 心療内科、精神科が適しているケース
検査で大きな異常がなく、不安、パニック発作、予期不安、不眠、気分の落ち込みが中心 など - カウンセリングが特に役立つケース
ストレス対処が苦手、考え込みが止まらない、人間関係で症状が悪化する、再発予防をしたい、薬だけに頼りたくない など
心療内科では、症状を軽くするだけでなく、再発しにくい生活の組み立てまで一緒に考えます。
治療と回復の道筋 生活調整、カウンセリング、薬物療法
治療は、原因を一つに決めつけず、複数の要因を整理していくのが基本です。
- 生活調整
睡眠の立て直し、カフェイン調整、食事、運動、休息の計画 - 心理療法
認知行動療法の考え方で、予期不安や回避行動を減らす練習をします。呼吸法やリラクゼーションも相性が良いです。 - 薬物療法
不安障害やパニック障害が疑われる場合、症状と生活への支障の程度により選択肢になります。薬の適否は体質や持病、眠気のリスクなどを含めて主治医と相談します。 - 必要な検査
貧血、甲状腺機能、心電図など、症状に応じて確認します。
カフェインを減らすだけで大きく改善する方もいれば、減らしても残る不安に対して治療が必要な方もいます。どちらも自然な経過です。
よくある質問 FAQ
Q1 コーヒーをやめれば不安障害やパニック障害は治りますか
カフェインは悪化要因の一つになり得ますが、原因の全てではないことが多いです。症状が続く場合は、睡眠、ストレス、考え方の癖、体質なども含めて評価すると回復が早まります。
Q2 デカフェならいくら飲んでも大丈夫ですか
デカフェでも微量のカフェインが含まれることがあります。また、飲み過ぎで胃が荒れたり、夜更かしが増えたりすることもあるため、量と時間帯は意識するのがおすすめです。
Q3 動悸があるのにコーヒーを飲むと落ち着く気がします
疲労や眠気が強いとき、カフェインで一時的にシャキッとして安心したように感じることがあります。ただし後から動悸や不安が跳ね返る方もいるので、短期の感覚と1日の波の両方で判断すると安全です。
Q4 カフェインを減らしたら頭痛がします
離脱症状の可能性があります。急にゼロにせず、1から2週間かけて段階的に減らす、デカフェに置き換える、水分を増やすなどで和らぐことがあります。つらい場合は医師に相談してください。
Q5 エナジードリンクがやめられません
エネジードリンクは短時間で高濃度のカフェインを摂取しやすく、過剰摂取は心拍数上昇、不眠、依存などのリスクがあります。他にも、依存というより、睡眠不足や過重労働のサインとして固定化している場合も多いです。やめる工夫と同時に、休息の確保や働き方の調整、必要に応じて心療内科やカウンセリングでのサポートが有効です。
Q6 不安の薬を飲んでいますがコーヒーは飲んでよいですか
薬の種類や症状の段階によります。動悸や不眠が残る時期は控えめが無難です。服薬中の方は、主治医に普段のカフェイン量を具体的に伝えると判断しやすくなります。
Q7 動悸があるときは何科に行けばいいですか
強い胸痛、失神、脈の乱れがある場合は内科や循環器内科での確認が優先です。検査で大きな異常がなく、不安やパニック発作、不眠が中心なら心療内科や精神科が相談先になります。
Q8 カウンセリングは本当に効果がありますか
不安やパニックは、体の反応と考え方、行動のパターンが結びついて強化されることがあります。カウンセリングは、その結びつきをほどき、再発予防のスキルを身につけるのに役立ちます。薬に頼り切りたくない方にも相性が良いことが多いです。
医師からのメッセージ
不安や動悸が出ると、気のせいだと言われたらどうしよう、また発作が起きたらどうしようと、一人で抱え込みがちです。けれど、症状は体が発している大事なサインです。カフェインは身近な分、見落とされやすい引き金になり得ます。
まずは責めずに、午後の1杯をデカフェにする、1日の回数を決める、睡眠を守るなど、できるところから整えてみてください。それでもつらさが続くなら、心療内科やカウンセリングを頼ってください。症状を説明し、整理し、回復の道筋を一緒に作ることが治療です。あなたの生活が少しでも楽になるよう、現実的な選択肢を一緒に探していきましょう。

