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結論:一概に「不利」ではありません—問われるのは“働ける状態づくり”
就活・転職で本質的に見られるのは「業務を継続して安全・確実に遂行できるか」です。心療内科で診断がついていても、治療で症状が安定し、働き方や配慮の工夫が整理できていれば、内定や活躍は十分に可能です。
「病名」より「現在のコンディション」「再発予防策」「支援の使い方」を具体的に語れるかが鍵となります。
心療内科の診断とは:症状・原因・治療の基礎知識
- よくある診断名
- 主な症状
- 気分の落ち込み、焦燥、不眠・早朝覚醒、過呼吸、動悸、食欲低下、集中力低下、腹痛・下痢などの身体症状
- 原因(多因子)
- ストレス(業務量、人間関係、ハラスメント)、環境変化、性格特性、生物学的要因、生活リズムの乱れ
- 治療
- 薬物療法(SSRI/SNRI等)、カウンセリング、認知行動療法(CBT)、睡眠衛生、復職支援プログラム、産業医との連携
ポイント:診断は「ラベル」ではなく「改善のための地図」。適切な治療で働ける状態へ戻すことは十分可能です。
就活・転職で評価される3つの視点
- 現在の安定度:睡眠・食事・日中の活動量、欠勤リスク、服薬の副作用管理
- 再発予防の設計:通院継続、カウンセリング、セルフケア、働き方の工夫(勤務時間・休憩・在宅併用)
- 仕事適合性:職務内容との相性、負荷の調整余地、チームとのコミュニケーション
病歴の「開示・非開示」の考え方とタイミング
- 基本:診断の開示は任意。病名そのものより「業務遂行への影響の有無」を伝えます。
- 伝えるメリット
- 合理的配慮を事前に相談しやすい/入社後のミスマッチを防ぐ/産業医と連携しやすい
- 伝えない選択
- 現在安定し、配慮不要で業務に支障がない場合は「非開示」でも法的に問題なし(個人情報保護の観点)
- タイミング
- 一般枠では「内定後の雇用条件面談」で機能面を中心に共有するケースが多い
- 配慮が必須なら選考中に「機能面・必要な配慮」を簡潔に
- 障害者雇用枠を検討するならハローワーク・就労移行支援も活用
- 注意点
- 重要な健康情報を意図的に虚偽申告するのはトラブルの元。迷ったら主治医・キャリアカウンセラーへ相談を
健康診断・法制度・産業医:知っておくと安心なポイント
- 健康診断
- 一般的な雇入時健診は身体計測・血圧・採血などが中心。精神疾患の診断名を問う項目は通常ありません。
- 労働安全衛生法とストレスチェック制度
- ストレスチェックは原則匿名集計。個人情報は厳密に管理されます。
- 合理的配慮
- 「始業時間調整」「静かな席」「定期面談」などは現実的な選択肢。産業医の助言が有効です。
- 個人情報保護
- 病歴の扱いは慎重。企業は必要最小限の健康情報のみを取り扱うべきとされています。
実践ガイド:履歴書・面接の言い回し例
- 休職・離職期間の説明
- 「生活リズムと体調を整えるための治療期間でした。現在は主治医と相談のうえ就労可能の判断を得ており、再発予防として睡眠・運動・通院を継続しています。」
- 病名を聞かれた場合(言いたくない場合)
- 「病名の詳細よりも、業務遂行に支障がない状態であることと、必要時は自分で早めに調整・相談できる体制があることを重視しています。」
- 必要な配慮の伝え方
- 「月1回の通院のため、就業時間の前後で調整可能だと助かります。業務のピーク時には事前に引き継ぎ計画を共有します。」
職場での合理的配慮の具体例
- スタート時は業務量を段階的に増やす
- 週1日の在宅勤務/コアタイムの柔軟化
- 集中できる座席配置/ノイズ対策
- 定期的な1on1/産業医面談
- 休息スペースの活用、休憩時間の確保
通院・カウンセリングを続けるメリット
- 症状の早期兆候をキャッチしやすい
- 面接・職場でのコミュニケーション方針を主治医やカウンセラーと事前に整理できる
- 就労可否や業務制限について医師の見解(診断書・意見書)を必要に応じて提出可能
- 認知行動療法(CBT)や睡眠指導で再発予防
受診のハードルは低くて大丈夫。「今のうちに整える」が結果的に最短ルートです。
体験談:よくあるケースから学ぶ
- ケースA(新卒・適応障害)
- 春先の体調不良で休学。秋から通院とCBTで生活リズムが安定。内定後の面談で「月1通院」「段階的な業務量」を希望し、無理なくスタート。半年後に担当業務を拡大。
- ケースB(30代・転職・パニック症)
- 通勤ラッシュで症状が出やすく在宅併用を希望。エージェント経由で柔軟な企業を選定。面接では「発作予防の自己対処」「業務影響は限定的」を説明しマッチング成功。
※個人が特定されないよう配慮した複合的な臨床事例です。
FAQ(よくある質問)
Q1. 病名を言わないと内定取り消しになりますか?
A. 一般的には病名の開示義務はありません。業務に重大な支障がある情報を故意に伏せるのは避け、機能面を中心に誠実に伝えましょう。
Q2. 服薬中だと不利ですか?
A. 多くの方が安全に就労しています。眠気など副作用がある場合は、主治医と調整し、必要なら勤務配慮を相談しましょう。
Q3. 健康診断で精神疾患はバレますか?
A. 雇入時健診では精神科診断名を問わないのが一般的です。会社は健康情報を厳格に扱う義務があります。
Q4. 障害者雇用と一般枠、どちらがよい?
A. 必要な配慮の程度、働き方、キャリアプランで検討を。ハローワーク、就労支援、主治医と一緒に最適解を見つけましょう。
Q5. 再発が怖いです。
A. 通院・CBT・睡眠運動・負荷調整・早期相談で再発率は下げられます。産業医や上司とも二重三重の見守り体制を。
受診の目安と緊急時の対応
- 2週間以上の不眠・食欲低下・意欲低下が続く、パニック発作、仕事や学業に著しい支障がある場合は、早めに心療内科・精神科を受診してください。
- 自傷念慮や危機的状況がある場合は、迷わず119、または最寄りの救急へ。
- 相談窓口(例):こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
医師からのメッセージ
診断は“終わり”ではなく“整えるきっかけ”です。治療と働き方のデザインを両輪にすれば、キャリアは必ず再び動き出します。焦らず、でも一緒に前へ。主治医・産業医・人事・家族—味方は思っているより多いですよ。

