
「それって性格の問題?」と思っていませんか?
感情の起伏が激しい人を「気分屋」「ヒステリック」などと呼ぶことがありますが、実はこの状態は医学的に治療可能な症状である場合があります。自分や家族、パートナーにこうした傾向があるときは、まずその背後にある“病気”の可能性を疑ってみてください。
目次
感情の起伏が激しい状態とは?
- 急に怒りがこみ上げて爆発してしまう
- 朝は元気なのに夕方にはどん底の気分になる
- 自分でも感情をコントロールできずに自己嫌悪に陥る
これらの状態が「ほぼ毎日続く」「日常生活に支障がある」なら、気分障害やパーソナリティ障害などの可能性があります。
関連する主な疾患
■ 双極性障害(躁うつ病)
- 気分の高揚(躁状態)と落ち込み(うつ状態)を繰り返す
- 感情が極端に変化し、自分でも制御できない
■ 境界性パーソナリティ障害(BPD)
- 対人関係が不安定
- 見捨てられ不安が強く、感情の爆発が頻発する
(参考文献:Linehan MM, 1993)
■ PMDD(月経前不快気分障害)
- 月経前になると感情の波が激しくなる
- 怒り、涙、抑うつなどが生活に支障を与える
どうしてこうなるの?(原因)
- 脳内のセロトニンやドーパミンの乱れ
- 幼少期のトラウマや愛着形成の問題
- 遺伝的要因やホルモンの影響
(参考文献:Goodwin FK, Jamison KR. Manic-Depressive Illness, 2007)
心療内科でできる治療法
薬物療法:SSRI、気分安定薬などで脳のバランスを整える
精神療法:認知行動療法(CBT)や弁証法的行動療法(DBT)が効果的
カウンセリング:自分の感情を言語化し、気づきを得る支援
周囲の理解と支援も大切です
感情の起伏が激しい人は、「わがまま」「甘えている」と誤解されやすい傾向があります。ですが、それは本人も辛い状態です。周囲の理解と、専門的な治療の両輪が必要です。
一歩踏み出す勇気が未来を変える
「これって自分にも当てはまるかも…」と思ったら、迷わず心療内科に相談してみてください。感情は“性格”ではなく、“症状”であることがあります。治療によって、自分らしい穏やかな日常を取り戻すことは可能です。
医師からの締めの言葉
「感情がうまくコントロールできない」「自分はおかしいのでは…」と悩むあなたへ。それは“心の悲鳴”かもしれません。ひとりで苦しまず、ぜひ一度、専門医にご相談ください。治療によって、感情の波に飲まれない日々を取り戻せます。
引用文献
Linehan MM. Cognitive-behavioral treatment of borderline personality disorder. Guilford Press; 1993.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8519058/
Goodwin FK, Jamison KR. Manic-Depressive Illness: Bipolar Disorders and Recurrent Depression. Oxford University Press; 2007.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18283279/