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環境の変化がつらい…それは甘えではありません
春からの新生活、部署異動、引っ越し…
周りが前向きに見える中、自分だけが体調を崩したり気分が沈んでしまうと、「自分は弱いのかな」と感じてしまう方も多いです。
でもそれは、あなたの心が“人より少し繊細で丁寧に世界を感じ取っている”だけ。それは決して悪いことではありません。
「心が敏感な人」の特徴と背景(HSPとは?)
**HSP(Highly Sensitive Person)**は、全人口の15〜20%が該当するとされる気質で、以下のような特徴を持ちます。
- 音や光、においなどに敏感で疲れやすい
- 他人の感情に影響されやすい
- 環境が変わると、ストレス反応が強く出やすい
- 深く考え込む癖がある
引用:
Aron, E. N., & Aron, A. (1997). Sensory-processing sensitivity and its relation to introversion and emotionality. Journal of Personality and Social Psychology, 73(2), 345–368.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9257634/
なぜ環境の変化に弱いのか:脳と神経の仕組み
心が敏感な方は、**脳の扁桃体(感情処理の中枢)**や、自律神経が過活動になりやすい傾向があります。特に初めての環境では、以下のような状態になりやすいのです。
- 心拍数の上昇
- 呼吸の浅さ
- 不眠・過眠
- 消化器症状(下痢や便秘)
- 頭痛や肩こりなどの身体反応
これらはストレスホルモン(コルチゾール)の過剰分泌とも関係しています。
引用:
McEwen, B. S. (2007). Physiology and neurobiology of stress and adaptation: Central role of the brain. Physiological Reviews, 87(3), 873–904.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17615391/
敏感な心を守る5つの対処法
■ ①「慣れる」ことを焦らない
変化への適応には脳が時間を必要とするものです。まずは3週間〜1ヶ月を目安に“ならしていく”感覚を持ちましょう。
■ ②「刺激を減らす」工夫を
静かな空間での休憩、イヤホンで雑音を遮断、照明を落とすなど、感覚のフィルターを調整することが有効です。
■ ③ 朝に“ルーティン”を作る
朝に同じ行動を繰り返すことで、脳に「安全な日常だ」と伝え、安心感を与えることができます。
■ ④ 誰かに話す(感情の“消化”)
言葉にして出すことで、脳の過活動を鎮める効果があります。信頼できる人や、専門家への相談をぜひ。
■ ⑤ 「感じすぎる」ことを責めない
あなたの感受性は“ギフト”でもあります。「感じすぎる自分」を受け入れることが、回復の第一歩です。
心療内科でできるサポート
「この程度で病院に行っていいのかな…」
そう思ってしまうかもしれませんが、心療内科は予防のためにも通える場所です。
当院では以下のようなサポートを提供しています。
- ストレス評価と対処法のアドバイス
- 認知行動療法(CBT)やマインドフルネス指導
- 必要に応じた自律神経の安定を助ける処方
参考文献:
Chiesa, A., & Serretti, A. (2010). A systematic review of neurobiological and clinical features of mindfulness meditations. Psychological Medicine, 40(8), 1239–1252.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19775416/
医師からのメッセージ
環境の変化に弱いのは、決して「ダメなこと」ではありません。
それは、あなたの感受性が豊かだからこそ起こる自然な反応です。
一人で抱え込まず、まずは一度、話しにきてください。
私たちは、あなたの“心の変化への強さ”を一緒に育てていきたいと願っています。