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「食べたあとに吐く」——もしかして過食症?
「つい食べすぎた」「食べたあと、後悔して吐いてしまった」
これが頻繁に繰り返されているなら、それは**過食症(神経性過食症)**のサインかもしれません。
一人で抱えてしまう方が多く、「自分が弱いから」と思い込んでしまいがちですが、それはれっきとした病気であり、心と身体の両面から適切な支援が必要です。
過食症の代表的なサインとは?
- 短時間で大量に食べてしまう(過食エピソード)
- 食べた後に自己誘発性の嘔吐や下剤使用をする
- 「食べること」「太ること」に強い不安や罪悪感がある
- 自尊心が体重や体型に大きく依存している
- 食事行動が隠れる・人前で食べたがらない
これらの症状は繰り返されることが特徴で、日常生活や健康に大きな影響を与えることがあります。
なぜ過食と嘔吐を繰り返してしまうのか?
原因はひとつではなく、以下のような複数の要因が絡み合っています。
- 心理的要因:ストレス、孤独感、自己肯定感の低さ
- 環境的要因:家族関係、ダイエット文化、SNSなどの影響
- 生物学的要因:セロトニンの異常、遺伝的素因など
📚 引用文献
Treasure J, Duarte TA, Schmidt U. Eating disorders. Lancet. 2020.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31948784
放っておくとどうなる?——身体と心への影響
- 低カリウム血症:吐きすぎによって起こり、重症だと命に関わる心不整脈の原因に
- 歯の損傷:胃酸によって歯が溶ける
- 胃や食道の障害
- 抑うつ症状や希死念慮が強くなることも
早期に治療することで、これらの身体的リスクを避けることが可能です。
心療内科でできる支援と治療法
心療内科では、以下のようなアプローチで支援を行います。
- 精神療法(心理療法):認知行動療法(CBT)を中心に、食行動のパターンと考え方の歪みを修正
- 栄養指導:管理栄養士と連携し、食べることへの安心感を取り戻す
- 薬物療法:必要に応じて、抑うつ症状や衝動性に対して選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などを使用
- 家族療法・支援:必要があればご家族への情報提供や関わり方の提案も行います
📚 引用文献
Hay P. A systematic review of evidence for psychological treatments in bulimia nervosa.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21699790
自分を責めず、助けを求めることからはじめましょう
「やめたいのにやめられない」
それは意志の弱さではなく、脳と心のバランスが崩れているサインです。
もしあなたが「こんな自分はおかしい」と思っているなら、どうかその気持ちを信頼できる医療者に話してみてください。
専門医からのメッセージ
あなたが抱えているつらさは、決して特別なことではありません。
そして、それを話してもいい場所がここにあります。
心療内科は「心のケガ」に寄り添う医療機関です。
ひとりで悩まず、ぜひご相談ください。
PubMed引用文献
- Treasure J, Duarte TA, Schmidt U. Eating disorders. Lancet. 2020.
▶︎ https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31948784 - Hay P. A systematic review of evidence for psychological treatments in bulimia nervosa.
▶︎ https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21699790