摂食障害とは？拒食症・過食症の違いをわかりやすく解説

コラム

摂食障害（Eating Disorders）とは

摂食障害は「食行動のゆがみ」と「体重・体形へのこだわり」が中心的にみられる精神疾患です。日本では若年女性に多いイメージがありますが、近年は性別・年齢を問いません。早期発見・早期治療が生命予後を左右します

主なタイプと特徴

拒食症（神経性やせ症／Anorexia Nervosa, AN）
・極端な食事制限、著しい体重減少（BMI18.5 未満が目安）
・「太ること」への強い恐怖
・月経停止、低血圧、低体温など身体合併症が多い

過食症（神経性過食症／Bulimia Nervosa, BN）
・短時間に大量に食べる“むちゃ食い”エピソード
・自己誘発性嘔吐、下剤乱用など“代償行動”
・体重は正常域のことが多く、周囲が気づきにくい

そのほか
・BED（Binge-Eating Disorder：むちゃ食い症）
・ARFID（Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder：回避・制限性食物摂取障害）

症状一覧 ― からだ・こころ・行動面

身体：低血圧、低体温、電解質異常、歯のエナメル質損傷、腎障害
精神：抑うつ、不安、強迫症状、衝動性
行動：カロリー計算、過度な運動、夜間の摂食、食事の隠蔽

なぜ起こる？５つの原因要因

  1. 遺伝・生物学的脆弱性【Bulik 2019】
  2. 性格特性（完璧主義・強迫傾向）
  3. 家族環境（過干渉・過保護、体型への価値観）
  4. 社会文化（痩身志向、SNS の影響）
  5. ストレスライフイベント（受験、就職、人間関係）

検査・診断の流れ

①問診（食行動・体重推移）②身体診察 ③医師が必要と判断した場合に血液検査（電解質・肝腎機能）④心理検査（EDE-Q など）⑤DSM-5診断基準との照合
※心療内科では身体疾患との鑑別のため内科検査も行います。

合併症と放置リスク

・心不全、突然死、骨粗鬆症、無月経による不妊
・自殺リスク増大（摂食障害患者の死亡率は一般人口の約6倍【Arcelus 2011】）

治療法 ― 心療内科で行う５つのアプローチ

  1. 栄養管理・体重回復（管理栄養士との連携）
  2. 認知行動療法 CBT-E【Hay 2013】
  3. 家族療法（特に思春期 AN に有効）
  4. 薬物療法（SSRI：BN の衝動抑制に有効）
  5. カウンセリング・サポートグループ

「症状が軽くても“悪化予防”が治療の最大の鍵」です。気になる時点で心療内科へご相談ください。

家族・周囲ができるサポート

・体重や食事量の批判は避ける
・“感情”に寄り添い“行動”を責めない
・受診やカウンセリングへの同伴を提案

受診ガイド：いつ・どこに相談すべき？

・2 週間以上の食事制限 / 過食が続く
・BMI18.5 未満または短期間で 5％以上の体重変化
・自己誘発性嘔吐が週1 以上
以上のいずれかに該当したら、心療内科・精神科・摂食障害専門外来へ。

まとめ ＋ よくある質問

Q. 完治にかかる期間は？ → 平均 3～5 年。早期介入ほど短縮できます。
Q. 入院は必要？ → 重度の電解質異常、自殺リスク、外来治療で体重回復が乏しい、過食嘔吐が止まらないなどがあれば検討。
Q. 男性でもなる？ → 全患者の約1割が男性で増加傾向です。

引用文献（PubMed）

[1] Treasure J, Duarte TA, Schmidt U. Eating disorders. Lancet. 2020;395(10227):899-911. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32061361/
[2] Arcelus J, et al. Mortality rates in patients with anorexia nervosa and other eating disorders: a meta-analysis. Arch Gen Psychiatry. 2011;68(7):724-731. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21270382/
[3] Hay P. A systematic review of evidence for psychological treatments for eating disorders. Int J Eat Disord. 2013;46(5):462-469. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22644808/
[4] Bulik CM, et al. Genetics of anorexia nervosa: current insights. Nat Rev Dis Primers. 2019;5(1):13. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31375779/
[5] Peebles R, et al. Disordered eating in adolescents: recent findings. Pediatrics. 2011;128(3):e710-e722. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22064247/

医師からのメッセージ

「摂食障害は“意志の弱さ”ではなく“脳とこころの病気”です。あなた自身と同じくらい、あなたの命を大切に思う医療者がいます。早めに相談し、一緒に回復への道を歩みましょう。」

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