
目次
その言葉、いつから言い始めましたか
「どうせ自分なんて」
この言葉を、最近よく口にしていませんか。
誰かに褒められても「いやいや、たまたまですよ」と返してしまう。新しいことに挑戦しようとすると「自分には向いていない」と最初から諦めてしまう。そんな自分に気づいていながら、どうすることもできない。
こうした自己否定的な思いが強まるとき、こんなことをおっしゃる方もいらっしゃいます。
「こんなことで病院に行っていいのかわからなくて」
答えは、はっきりと「いらっしゃってください」です。
自己否定が止まらない心の状態とは
なぜ「どうせ」と言ってしまうのか
自己否定的な口ぐせは、心が自分を守ろうとしている反応のひとつです。
期待して裏切られるくらいなら、最初から期待しない方がいい。傷つく前に、自分で自分を下げておく。こうした無意識の防衛反応が、繰り返されるうちに口ぐせとして定着していきます。
しかし、この防衛反応が続くと、脳は「自分はダメな存在だ」という情報を繰り返し受け取ることになります。すると、本当にそう思い込んでしまう。これが認知の歪みと呼ばれる状態です。
自己肯定感の低下と抑うつ症状の関係
自己肯定感の低下は、うつ病や適応障害の入り口になることがあります。
- 何をしても楽しくない
- 朝起きるのがつらい
- 人と会うのが億劫になった
- 以前好きだったことに興味が持てない
このような症状が「どうせ自分なんて」という口ぐせと一緒に現れているなら、それは心からのSOSかもしれません。
実際に来院された方の声
30代女性・会社員Aさんの場合
「会議で発言するたびに『こんな意見、きっと的外れだろうな』と思っていました。同僚に『最近元気ないね』と言われても『大丈夫です』と答え続けていたんです。でも、ある日突然涙が止まらなくなって、何も手につかなくなりました」
Aさんは適応障害と診断され、3ヶ月ほどの通院とカウンセリングを経て、少しずつ自分を責める癖が和らいでいきました。
「『あなたは十分頑張っている』と言われたとき、最初は信じられませんでした。でも、通ううちに、自分を否定しなくてもいいんだと思えるようになりました」
20代男性・大学生Bさんの場合
「就活がうまくいかなくて、『自分は社会に必要とされていない』と本気で思っていました。心療内科なんて自分には関係ないと思っていたけど、友人に勧められて受診しました」
Bさんは軽度のうつ状態でした。投薬治療と並行してカウンセリングを受け、自分の考え方のパターンに気づくことができました。
「認知行動療法というものを教えてもらって、自分がどれだけ偏った見方をしていたかわかりました。今は就職も決まり、前向きに考えられるようになっています」
よくあるご質問(Q&A)
Q1. 口ぐせだけで心療内科に行ってもいいのですか
はい、もちろんです。口ぐせは心の状態を映す鏡です。「こんなことで」と思わず、気軽にご相談ください。早めの受診が回復への近道になります。
Q2. カウンセリングと診察はどう違うのですか
診察は医師が症状を評価し、必要に応じて薬物療法を行います。カウンセリングは臨床心理士や公認心理師が、じっくりとお話を聞きながら、考え方や行動パターンを一緒に見直していく時間です。両方を組み合わせることで、より効果的な治療ができます。
Q3. 薬を飲まないと治らないのですか
必ずしもそうではありません。症状の程度によっては、カウンセリングだけで改善する方もいらっしゃいます。お薬が必要な場合も、症状が落ち着けば徐々に減らしていくことができます。
Q4. 周囲に知られたくないのですが
心療内科への通院は、保険証の履歴などから会社に知られることは基本的にありません。また、守秘義務がありますので、命の危険がある場合などの例外を除けば、ご家族にも無断でお伝えすることはありません。安心してご来院ください。
Q5. どのくらいの期間通院が必要ですか
症状や状態によって異なりますが、多くの場合、数ヶ月から半年程度で改善がみられます。焦らず、ご自身のペースで治療を進めていきましょう。
自分を責める癖から抜け出すために
認知行動療法という選択肢
認知行動療法は、自己否定的な思考パターンを見直し、より現実的で柔軟な考え方を身につけていく治療法です。心療内科やカウンセリングで受けることができ、うつ病や不安障害に対して高い効果が認められています。
「どうせ自分なんて」という考えが浮かんだとき、それが本当に事実なのか、別の見方はありえないのかを一緒に考えていきます。
小さな成功体験を積み重ねる
自己肯定感を育てるには、小さな「できた」を積み重ねることが大切です。今日一日、自分を責めなかった。それだけでも立派な一歩です。
専門家と一緒に、あなたに合った目標設定をしていきましょう。
医師からのメッセージ
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
「どうせ自分なんて」と言ってしまうあなたは、きっとこれまで誰よりも自分に厳しく、頑張り続けてきた人だと思います。
その頑張りは、本当に素晴らしいことです。しかし、ずっと自分を責め続けていたら、心は疲れてしまいます。
私たち心療内科医は、あなたのつらさを否定したりしません。あなたが感じている苦しさは、あなたが経験したすべての条件が影響して生じたものであり、誰一人として同じ条件ではない以上、誰かと比べることはできないからです。
一人で抱え込まないでください。話すだけでも、心は少し軽くなります。
あなたが「自分なんて」と言わなくても済む日が来ることを、心から願っています。そしてその日が来るまで、一緒に歩んでいきたいと思っています。
どうか、勇気を出して一歩を踏み出してみてください。

