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毎日の生活がつらいと感じているあなたへ
こんにちは。心療内科医として多くの患者さんとお話しする中で、こんなお悩みをよく伺います。
「職場の蛍光灯がまぶしくて、頭が痛くなる」 「隣の席のキーボード音が気になって集中できない」 「柔軟剤のにおいで気分が悪くなってしまう」
周りの人は平気なのに、自分だけがつらい。そんな経験はありませんか?
実はこれ、決してわがままでも気のせいでもありません。感覚過敏という状態であり、適切な対処法があるのです。
感覚過敏とは|脳が刺激を受け取りすぎている状態
感覚過敏とは、五感(視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚)からの刺激を脳が過剰に受け取ってしまう状態を指します。
私たちの脳には、外部からの刺激をフィルタリングする機能があります。通常は必要な情報だけを取り込み、不要な刺激はカットしています。しかし、このフィルター機能がうまく働かないと、すべての刺激が一気に押し寄せてくるような感覚になるのです。
感覚過敏が起こりやすい方の特徴
なぜ音・光・においに敏感になるのか|3つの原因
原因1:自律神経のバランスの乱れ
交感神経が優位な状態が続くと、脳が常に警戒モードになります。その結果、普段なら気にならない刺激にも過敏に反応してしまいます。
私の患者さんでも、仕事のストレスが重なった時期に急に音が気になるようになったという方は少なくありません。
原因2:脳の情報処理の特性
生まれつき感覚処理が繊細な方がいらっしゃいます。これはHSPや発達特性と呼ばれることもあり、人口の15〜20%程度が該当するといわれています。
これは個性であり、決して異常ではありません。ただし、現代社会の刺激量に対して脳が疲弊しやすいのは事実です。
原因3:心身の疲労の蓄積
睡眠不足や慢性疲労が続くと、脳のフィルター機能が低下します。普段は平気だった刺激が急につらくなることがあります。
体験談|Aさん(30代女性・会社員)の場合
Aさんは広告代理店で働く30代の女性です。入社当初は問題なかったのですが、3年目頃からオフィスの環境がつらくなってきました。
「最初は残業が増えた時期と重なっていたので、疲れのせいだと思っていました。でも蛍光灯の光でめまいがしたり、同僚の香水で吐き気がしたり。自分でもおかしいと思いながら、誰にも相談できませんでした」
Aさんは当院を受診され、感覚過敏と軽度のうつ状態と診断されました。
「病院で『それは脳が疲れているサインですよ』と言われて、初めて安心できました。環境調整の方法を教えてもらい、少しずつ楽になっています」
現在Aさんは、後述する環境調整術を実践しながら、カウンセリングも継続されています。
今日からできる環境調整術|5つの具体策
調整術1:音への対策
ノイズキャンセリングイヤホンの活用
完全に音を遮断するのではなく、不快な周波数だけをカットできるタイプがおすすめです。職場での使用が難しい場合は、耳栓という選択肢もあります。
ホワイトノイズの導入
一定の音で不規則な騒音をマスキングする方法です。アプリで簡単に試せますので、まずは就寝時から始めてみてください。
調整術2:光への対策
ブルーライトカット眼鏡
パソコン作業が多い方には特に有効です。目の疲れだけでなく、頭痛や肩こりの軽減にもつながります。
デスクライトの調整# 「音・光・においに敏感すぎて疲れてしまう人のための環境調整術」
セルフケアだけでは限界がある理由
専門家の力を借りることの大切さ
環境調整術は確かに効果的ですが、根本的な原因が見落とされているケースもあります。
例えば、発達障害の二次障害としてうつ状態、適応障害になっている場合や、過去のトラウマがフラッシュバックとして感覚過敏を引き起こしている場合などは、専門的な治療やカウンセリングが必要です。
心療内科では、問診や心理検査を通じて、あなたの感覚過敏の背景を丁寧に探っていきます。必要に応じて、薬物療法、認知行動療法、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)などを組み合わせた治療を行います。
通院への一歩を踏み出すタイミング
以下のような状態が続いている場合は、ぜひ心療内科への受診をご検討ください。
- 感覚の刺激で日常生活に支障が出ている
- 疲労感が休んでも取れない
- 眠れない日が続いている
- 気分の落ち込みやイライラがひどい
- 人と会うのがつらくなってきた
よくある質問(Q&A)
Q1. 感覚過敏は治りますか?
A. 完全に「なくなる」というより、「うまく付き合えるようになる」という表現が適切です。環境調整と適切な治療によって、日常生活の質は大きく改善できます。
Q2. HSPと発達障害の違いは何ですか?
A. HSPはセルフチェックにより自覚されるケースが多く、気質であるとされています。一方で発達障害は脳機能の発達に関する特性ですが、「スペクトラム」という概念ですので、症状の強さや当てはまり具合には個人差があり、軽症の方は障害の境界が曖昧になります。そのため、HSPは正式な病名ではなく、発達障害の症状を部分的に切り出したものであるとも考えられます。お悩みの方は医療機関でご相談ください。
Q3. 職場に感覚過敏のことを伝えるべきですか?
A. 伝えることで合理的配慮を受けられる可能性があります。ただし、どこまで伝えるかは状況によります。カウンセリングで相談しながら決めていくことをお勧めします。
Q4. 市販のサプリメントは効果がありますか?
A. 一部の栄養素が神経の安定に寄与する可能性はありますが、過信は禁物です。まずは医師に相談し、必要な治療を受けることが優先です。
Q5. 子どもの感覚過敏が心配です。何科を受診すればよいですか?
A. 小児神経科、発達外来、児童精神科などが適切です。早めの相談が、お子さんの将来の適応力を高めます。
医師からのメッセージ
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
感覚過敏を抱えながら毎日を過ごすことは、想像以上にエネルギーを消耗します。周囲に理解されにくい苦しさも、よく分かります。
でも、あなたの感じている「つらさ」は本物です。決して大げさでも、甘えでもありません。
私たち心療内科医やカウンセラーは、そのつらさに寄り添い、あなたに合った対処法を一緒に探していく存在です。
一人で抱え込まず、どうか専門家の力を頼ってください。環境を整え、必要なサポートを受けることで、あなたらしく生きられる日々がきっと訪れます。
あなたの一歩を、心から応援しています。

