【専門医が解説】あなたの心、見過ごしていませんか? 企業で広がる「心の健康診断」のすすめ

【専門医が解説】あなたの心、見過ごしていませんか? 企業で広がる「心の健康診断」のすすめ

はじめに:あなたの心の天気、今日は晴れですか?曇りですか?

毎日、天気予報をチェックするように、ご自身の「心の天気」を意識したことはありますか? 「なんだか朝から気分が重い」「理由もなくイライラしてしまう」…そんな心の曇りや雨模様は、誰にでも訪れるものです。

こんにちは、心療内科医です。私のクリニックには、責任感が強く、真面目に頑張るあまり、いつの間にか心のエネルギーが枯渇してしまった方が多くいらっしゃいます。皆さん口を揃えて言うのは、「まさか自分が」という言葉。

近年、多くの企業が「心の健康診断」の導入を進めています。これは、身体の定期健診と同じように、心の状態を客観的に把握し、深刻な状態になる前に対処するための、非常に大切な取り組みです。今日は、この「心の健康診断」について、皆さんの疑問や不安に寄り添いながら、お話しさせてください。

「心の健康診断」って、一体何をするの?

「心の健康診断」と聞くと、なんだか難しく感じますか?多くの場合、これは国が定めた「ストレスチェック制度」を指します。いくつかの質問に答えることで、あなたが今どれくらいのストレスを抱えているか、そしてそれが心身にどのような影響を与えているかを可視化するものです。

まるで、あなたの心にかかっている霧の濃度を測るようなもの。自分では「大丈夫」と思っていても、客観的な数値や結果として見ることで、「ああ、少し休みが必要なんだな」「専門家に相談してみようかな」と、自分を大切にするきっかけになるのです。決して、あなたを評価したり、弱点を指摘したりするためのものではありません。

よくあるご相談例

外来では、次のようなご相談をよくお聞きします。特定の方のお話ではなく、一般的に多い訴えとしてご紹介します。

  • 「仕事に集中できず、夜もぐっすり眠れない日が続いている」
  • 「ストレスチェックで高ストレス者と判定されたが、自分がそんなはずはないと結果を無視した」
  • 「ある朝、満員電車で息苦しくなって途中下車した」
  • 「周囲の期待に応えなければと思い、弱音を出せずにきた」

共通しているのは、周囲からの評価が高い方ほど、不調を認めるまでに時間がかかるという点です。

【Q&A】心の健康診断、よくあるギモンにお答えします

Q1. 診断結果が悪かったら、会社に知られて評価が下がるのでは?

A1. ご安心ください。これは最も多いご質問ですが、法律で固く守られています。ストレスチェックの結果には、社内でも限られた人間だけが関わる権限を持っており、本人の同意なく会社全体や上司に提供されることはありません。産業医や保健師など、守秘義務を持つ専門スタッフだけが結果を把握し、あなたのケアのために動きます。結果によって人事評価が左右されるような不利益な扱いは、法律で禁じられています。これはあなたを守るための制度なのです。

Q2. 「高ストレス」と判定されたら、どうすればいいの?

A2. まずは、「自分の心がサインを送ってくれている」と受け止めてください。そして、一人で抱え込まないでください。多くの企業では、結果を受けて産業医との面談を申し出ることができます。産業医はあなたの味方です。仕事の負担をどう調整できるか、どんな環境なら働きやすいか、一緒に考えてくれます。

また、もし会社の窓口に相談しづらいと感じたら、私たちのような外部の心療内科やカウンセリングルームを頼ってください。そこは、あなたの心の安全地帯です。

専門家を頼ることは、弱さではなく「賢さ」です

車も定期的にメンテナンスをしないと、いつか大きな故障につながりますよね。私たちの心も全く同じです。不調を感じた時に専門家の力を借りるのは、特別なことではありません。むしろ、自分自身をマネジメントする「賢い選択」です。

心療内科やカウンセリングは、「病気の人が行く場所」から「より良く生きるためのヒントをもらう場所」に変わりつつあります。私たちは、あなたの話をじっくりと聞き、絡まった思考の糸を一緒に解きほぐしていくパートナーです。薬を使うことも選択肢の一つですが、それだけが治療ではありません。あなたに合った方法を、必ず一緒に見つけ出します。

なお、従業員の方のメンタルヘルス体制について、企業のご担当者さまからのご相談も承っています。詳しくは法人・企業のご担当者さまへをご覧ください。

医師からのメッセージ

この記事を読んでくださっているあなたは、きっと真面目で、ご自身の心と真摯に向き合おうとしている方なのでしょう。

忘れないでください。仕事や役割を代わりに担う人物は探せるかもしれませんが、あなた自身の代わりは誰もいません。仕事や役割の前に、まずあなたの心と身体が一番大切です。

「疲れたな」と感じたら、それは心が「少し休もう」と送っているサインです。「辛いな」と感じたら、それは「誰かに助けを求めて」というSOSです。

その小さなサインを見過ごさず、どうかご自身を労ってあげてください。そして、もし一人で抱えきれなくなったらいつでも私たち専門家を頼ってください。あなたの心の健康を、私たちはいつでも応援しています。

この記事の監修

赤坂心療内科クリニック 院長
宮本 せら紀(みやもと せらき)
医学博士・心療内科専門医・認定内科医・日本医師会認定産業医

日本大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院にて臨床研修。東京大学大学院にて医学博士号取得(ストレス防御・心身医学)。日本心身医学会・日本心療内科学会ほか所属。

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