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あなたは一人ではありません
嬉しいはずなのに、なぜか心が動かない。 悲しいのかもしれないけれど、涙が出ない。 イライラしているような気がするけれど、その正体が分からない。
そんな経験はありませんか。
「自分の気持ちが分からない」という訴えは、決して珍しいものではありません。むしろ、現代社会を生きる多くの方が、程度の差こそあれ同じような悩みを抱えているのです。
この記事では、感情認識が難しいと感じる方に向けて、その理由と対処法を一緒に考えていきたいと思います。
自分の感情が分からないとはどういうこと?
感情認識困難の特徴
自分の気持ちが分からない状態には、いくつかの特徴があります。
よく見られる傾向として
- 体調は悪いのに、その原因となる感情が特定できない
- 人から「どう思った?」と聞かれても答えられない
- 感情を表す言葉のバリエーションが少ない
- 映画や音楽を見ても心が動きにくい
- 自分より他人の気持ちを優先してしまう
心理学では、このような傾向をアレキシサイミア(失感情症)と呼ぶことがあります。ただし、これは病名ではなく、感情への気づきや表現が苦手な傾向を指す言葉です。
なぜ感情が分からなくなるのか
感情認識が難しくなる背景には、さまざまな要因が絡み合っています。
心理的な要因
- 幼少期に感情を否定された経験
- 感情を表現することを禁じられた環境
- つらい体験から心を守るための防衛機制
身体的な要因
- 慢性的なストレスによる自律神経の乱れ
- 睡眠不足や過労
- うつ病や不安障害などの精神疾患
社会的な要因
- 忙しすぎて自分と向き合う時間がない
- 感情より効率を重視する環境
- SNSでの表面的なコミュニケーション
体験談|Aさん(32歳・会社員)の場合
私は昔から、自分の気持ちを聞かれるのが苦手でした。「今日どうだった?」と聞かれても「普通」「わからない」としか答えられない。彼氏に「俺のことどう思ってるの?」と聞かれても、好きなはずなのに言葉が出てこない。
ある日、突然動悸がして、息が苦しくなりました。内科を受診しましたが異常なし。そこで紹介されたのが心療内科でした。
最初は「私、心の病気なのかな」と不安でしたが、先生は私が感情がわからなくなっている理由を一緒に考えてくれました。様々な要因があることに気づき、心が楽になったのを覚えています。
カウンセリングを通じて、私は幼い頃から「泣いてはいけない」「わがままを言ってはいけない」と自分に言い聞かせてきたことに気づきました。感情を感じないようにすることで、自分を守っていたんですね。
今は少しずつ、自分の中の小さな感情に気づけるようになってきました。完全に分かるようになったわけではありませんが、「分からなくても大丈夫」と思えるようになったことが、一番の変化かもしれません。
感情を見つけるための5つのステップ
ステップ1:体の感覚に注目する
感情は体に現れることがあります。胸がざわざわする、肩に力が入る、お腹が重い。こうした身体感覚は、感情の入り口になります。
試してみてください
- 一日に数回、体の状態をチェックする時間を作る
- 「今、体のどこに何を感じている?」と自分に問いかける
- 感覚をジャッジせず、ただ観察する
ステップ2:感情の言葉を増やす
感情を表す語彙が少ないと、感じていても言葉にできません。感情語のリストを眺めるだけでも、自分の状態に名前をつけやすくなります。
基本的な感情の例
- 喜び系:嬉しい、楽しい、わくわくする、ほっとする
- 悲しみ系:寂しい、切ない、虚しい、がっかり
- 怒り系:イライラする、悔しい、腹立たしい、もどかしい
- 不安系:心配、そわそわ、落ち着かない、怖い
ステップ3:日記やメモを活用する
書くことで、漠然とした気持ちが整理されることがあります。完璧な文章でなくて構いません。「なんかモヤモヤ」でも十分です。
ステップ4:信頼できる人と話す
一人で考えていると堂々巡りになりがちです。信頼できる友人や家族、あるいは専門家と話すことで、自分では気づかなかった感情が見えてくることがあります。
ステップ5:専門家の力を借りる
自分だけで解決しようとしなくて大丈夫です。心療内科やカウンセリングは、感情と向き合うための安全な場所を提供してくれます。
心療内科・カウンセリングでできること
心療内科での診察
心療内科では、心と体の両面からあなたの状態を評価します。必要に応じて、うつ病や不安障害などの診断を行い、治療方針を一緒に考えていきます。
よくある治療内容
- 丁寧な問診と心理検査
- 必要に応じた薬物療法
- 生活習慣のアドバイス
- カウンセリングや心理療法の紹介
カウンセリングで期待できること
カウンセリングは、自分の内面と向き合うための時間です。カウンセラーは答えを与えるのではなく、あなた自身が答えを見つける手助けをします。
カウンセリングで扱うテーマの例
- 過去の体験と現在の感情のつながり
- 自分を守るために作った心のクセ
- 感情を感じることへの恐れ
- 自己理解と自己受容
Q&A|よくある質問にお答えします
Q1. 感情が分からないのは病気ですか?
A. 感情認識が難しいこと自体は病気ではありません。ただし、うつ病や適応障害、発達障害などが背景にある場合もあります。長期間続く場合や日常生活に支障がある場合は、専門家に相談することをお勧めします。
Q2. 心療内科は敷居が高い気がして行けません
A. そう感じる方は多いです。最初は「ちょっと話を聞いてもらいたい」という気持ちで大丈夫です。無理に病名をつけたり、薬を出したりすることが目的ではありません。まずは相談だけでも受け付けているクリニックも多いですよ。
Q3. カウンセリングは何回くらい通えばいいですか?
A. 人によって異なります。数回で気持ちが整理される方もいれば、じっくり時間をかけて取り組む方もいます。カウンセラーと相談しながら、あなたに合ったペースを見つけていきましょう。
Q4. 自分の気持ちが分かるようになるまで、どのくらいかかりますか?
A. 正直なところ、個人差が大きいです。ただ、「完全に分かるようになる」ことがゴールではありません。少しずつ自分の感覚に気づけるようになること、分からなくても焦らなくなること。そうした小さな変化の積み重ねが大切です。
Q5. 感情が分からないまま生きていくのはダメですか?
A. ダメではありません。ただ、体や心がSOSを出しているのに気づけないと、心身の不調につながることがあります。自分を大切にするために、少しずつ感情と仲良くなっていけるといいですね。
医師からのメッセージ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
自分の気持ちが分からないというのは、とても孤独で不安な体験だと思います。周りの人が当たり前のように感情を語っているのを見て、「自分はおかしいのではないか」と感じてきたかもしれません。
でも、どうか安心してください。感情が分からないのは、あなたが冷たい人間だからでも、欠陥があるからでもありません。多くの場合、それは過去のどこかで、自分を守るために身につけた心のクセなのです。
そして、そのクセは変えていくことができます。一人で抱え込まず、専門家の力を借りながら、少しずつ自分の内側と仲良くなっていってほしいと思います。
心療内科やカウンセリングは、あなたの味方です。勇気を出して一歩を踏み出したとき、きっと新しい自分との出会いが待っています。
あなたの心が、少しでも軽くなりますように。

