
目次
はじめに
一人で抱え込まないで 「最近、眠れない」「動悸がして会社に行けない」「お腹の調子がずっと悪い」。そんなとき、“心療内科=薬をもらう場所”と考えて受診をためらう方は少なくありません。けれど実際の現場では、薬物療法だけでなく、カウンセリング(心理療法)や心理教育、生活リズムの調整、職場や学校との連携まで、治療はもっと立体的です。この記事では、カウンセリングの具体像と通院の流れ、治療の選択肢を、できる限りわかりやすくお伝えします。 ※本記事は一般的な情報です。緊急の症状や個別の診断・治療は必ず医療機関にご相談ください。
心療内科でできること(薬だけじゃない治療)
- 評価とアセスメント
- 問診、心理検査(例:POMS2、TEG3)、睡眠チェック、身体症状の確認(過敏性腸症候群、片頭痛、PMS/PMDDなど)
- 必要に応じ内科・婦人科・脳神経内科等と医療連携(血液検査、心電図、ホルモン検査)
- カウンセリング(心理療法)
- 薬物療法(必要最小限)
- 抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬などを副作用と効果を比較しながら最小用量で
- 生活改善と併用し「減薬・中止」も視野に治療計画
- 通院・サポート
- オンライン診療の活用、セカンドオピニオン、産業医・学校との連携
- 守秘義務とプライバシーを最優先
初診からの流れとよくある質問の種
- 予約:ウェブ/電話。平日18時台、土曜日午前中などの混雑する時間帯は早めの予約がおすすめ
- 初診:予診と診察を合わせて1時間半~2時間半。症状、生活、仕事や学校、既往歴、服薬歴を確認
- 目標の合意:短期目標(睡眠を整える)、中期目標(外出を増やす)、長期目標(復職・再発予防)
- 治療メニューの提案:カウンセリングの種類、頻度(週1・隔週)、薬の要/不要
- 費用の目安(変動あり)
- 保険診療の診察:再診の場合、自己負担1〜3割で1,000〜1,600円程度+検査・処方箋費用+診断書等の費用
- カウンセリング:保険外のことも多く、1回5,000〜12,000円前後(医療機関により異なる)
- オンライン診療:再診中心、システム料がかかる場合あり
体験談(匿名事例を再構成したフィクション)
事例A:電車が怖かった20代(パニック症/過敏性腸症候群) 「朝の電車で息ができない。途中下車を繰り返して遅刻続き」。初診ではPOMS2とパニック症状の評価を実施。治療は「曝露を含むCBT+呼吸法+腸の過敏さへの心理教育」。頓服は緊急時のみ。3〜4回目で各駅停車に1駅乗車→5回目で快速にも挑戦→8回目で通勤復帰。腸の不安には低FODMAPの基本と腹式呼吸、マインドフルネスを短時間から。最終的に薬は頓服もほぼ不要に。「逃げずに“ゆっくり向き合う練習”が、いちばんの薬でした」
事例B:眠れない30代リーダー(うつ病/燃え尽き) 在宅と出社の切り替えで睡眠が乱れ、朝は鉛のようにk体が重い。治療は「睡眠衛生の徹底(就寝・起床固定、ブルーライト対策、カフェイン制限)+CBTで“完璧主義”への介入+軽い運動」。抗うつ薬を少量から開始し、2週ごとに副作用と効果を確認。産業医と相談し時短勤務→4時間出社→フルタイム。抑うつ気分が改善し、「“休む勇気”が回復のスイッチになった」
事例C:波のある体調と気分(PMDD) 生理前になると怒りと涙が止まらない。婦人科と医療連携しホルモンの影響を確認。気分・睡眠・運動のセルフモニタリングとマインドフルネス、必要に応じSSRI。パートナー向け心理教育も実施。「自分のせいじゃない」と理解できたことで、関係の衝突が減少。3か月後、「月の“荒波”が小波になった感覚」
よくある症状と原因の整理
- うつ病・適応障害:睡眠障害、意欲低下、朝の倦怠、集中困難。仕事・学校・家庭のストレスが引き金に
- 不安障害・パニック障害:動悸、息苦しさ、めまい、予期不安。回避行動が症状を固定化
- 強迫症:確認・洗浄の繰り返し。不安の短期軽減が長期悪化を招く構造
- 身体症状症・過敏性腸症候群(IBS):腹痛・下痢・便秘がストレスで悪化。自律神経の過敏さに着目
- 思春期の不調・起立性調節障害:朝起きられない、頭痛、倦怠。学校との連携が鍵
- PMS/PMDD:月経周期との関連を見極め、婦人科と連携
- 睡眠障害:入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒。睡眠衛生と認知行動療法的介入が第一選択
カウンセリングの具体:何をするの?
- 認知行動療法(CBT)
- 自動思考と行動パターンを見える化し、小さな行動実験で「できた」を積む
- 例:電車1駅→2駅、会議でひと声→ふた声
- マインドフルネス/ACT
- 思考を止めようとせず、今ここに注意を戻す練習。再発予防にも
- 睡眠CBT
- ベッドの使い方、起床固定、刺激制御、睡眠制限法を段階的に
- 心理教育・ストレスマネジメント
- 症状の仕組みを理解し、対処の選択肢を増やす
- 家族支援・職場連携
- 周囲の“善意の空回り”を防ぎ、実際に役立つサポートを設計
- カップル・親子セッション(必要に応じて)
- コミュニケーションを安全に練習
薬との付き合い方(安心のポイント)
- 薬は「橋」。渡り切ったら減薬・中止も選べる
- 副作用の説明→小さい用量から→定期的な見直しが基本
- サプリ・漢方・市販薬との相互作用は必ず相談を
- 服薬は「自分の意思」で。疑問は遠慮なく聞いてOK
通院のコツ(再発予防にも)
- 記録する:症状、睡眠、行動、気分のグラフ化(アプリや手帳)
- 早めに相談:悪化のサイン(寝つけない日が3日以上、食欲低下、動悸が頻回、欠勤が続く)
- セカンドオピニオン:相性も大切。迷ったら遠慮なく
- オンライン診療:移動負担の軽減に。対面との併用がおすすめ
- セルフケア:軽い運動、光を浴びる、食事、スマホとの距離
受診を迷っているあなたへ(おすすめの理由)
- 早期介入は回復を速め、重症化と長期化を防ぎます
- カウンセリングは「話を聞いてもらう」以上に、具体的な技術と練習があります
- 守秘義務のもと、あなたのペースで進めます
Q&A(よくある質問)
Q1. 心療内科と精神科の違いは? A. 実務的には重なる部分が大きく、医療機関によって名称が異なるだけのことも。身体症状と心の相互作用に強いのが心療内科という理解でOKです。
Q2. 薬は必ず出ますか? A. いいえ。生活調整やカウンセリングのみで始めることもあります。必要なら最小限から。
Q3. カウンセリングは保険適用ですか? A. 医療機関で医師の治療計画のもと行う看護師による心理療法はごく一部保険適用のケースがありますが、心理士によるカウンセリングは自費が一般的です。事前に確認を。
Q4. どれくらい通いますか? A. 目安は8〜12回のカウンセリングで変化を実感できる方が多いですが、個人差があります。頻度は週1〜隔週が一般的。
Q5. オンライン診療は対応していますか? A. 再診中心で対応する医療機関が増えています。初診は対面を推奨する施設が多いです。
Q6. プライバシーは守られますか? A. 医療機関は守秘義務を厳守します。会社への連絡は本人の同意なしに行いません。
Q7. 副作用が不安です A. 予測される副作用と対処を事前に説明します。不調を感じたら我慢せずご相談ください。
Q8. 診断書や復職支援は? A. 必要に応じて作成・支援します。産業医や人事と連携し、段階的復職(リワーク)を提案します。
Q9. 子どもや思春期も受診できますか? A. 児童思春期外来のある医療機関をご確認ください。学校との連携が有効なケースが多いです。
Q10. セカンドオピニオンは失礼? A. いいえ。治療への納得感はとても大切。医療者側も推奨しています。
万一のときは
- 命の危険を感じる強い希死念慮・自傷衝動がある場合は、ためらわず119や最寄りの救急、地域の救急当番へ
- いのちの電話 0120-783-556(フリーダイヤル)/ よりそいホットライン 0120-279-338
医師からのメッセージ
心と体は同じ一人のあなたのもの。つらさは「弱さ」ではなく、システムの過負荷です。薬もカウンセリングも、あなたが自分らしさを取り戻すための道具箱。合うものを一緒に選べば、道は必ずひらけます。初診のドアをノックするのは勇気がいりますが、その一歩で風向きは変わります。どうか遠慮なく、相談してください。