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PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは?
PTSDとは、命の危険や強い恐怖、深い心の傷などを経験した後に起こる精神的な障害です。交通事故、災害、暴力、虐待、戦争体験などが原因となることがあります。
「思い出したくないのに思い出してしまう」――それがPTSDの苦しさです。
よくある症状:「フラッシュバック」や「回避行動」
PTSDの主な症状には、以下のようなものがあります。
- フラッシュバック(過去の出来事が突然よみがえる)
- 悪夢や睡眠障害
- 感情の麻痺や無感覚
- 強い警戒心や怒りの爆発
- トラウマに関連する場所や人を避ける行動
これらの症状は日常生活を大きく制限し、社会生活や人間関係にも支障をきたします。
なぜPTSDになるのか?その原因とは
すべての人がトラウマ体験からPTSDになるわけではありません。発症には以下の要因が関与しています。
- 遺伝的な脆弱性
- 幼少期の虐待経験
- サポートの有無(家族や友人の支え)
- その人にとっての「意味づけ」や「体験の深さ」
PTSDは「弱さ」ではありません。脳と心が強い衝撃に耐えきれなかった結果なのです。
自分でできる対処法と限界
軽度のPTSDや一時的なストレス反応の場合、以下のようなセルフケアが効果的です。
- 決まった時間に寝起きする(睡眠のリズムを整える)
- 呼吸法やマインドフルネス瞑想
- 信頼できる人と話す
- 無理に思い出そうとしない
ただし、フラッシュバックが頻繁に起きる、怒りや不安が抑えきれない、社会生活が困難になっている場合は、専門機関への相談が必要です。
治療の第一歩は「理解」と「つながり」
PTSDの治療は、ひとりでは困難です。心療内科や精神科では、以下のような治療が行われます。
- トラウマに焦点を当てた認知行動療法(TF-CBT)
- EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)
- 薬物療法(抗うつ薬や抗不安薬)
※信頼性の高い治療法については以下の文献をご参照ください。
参考文献:
Bisson JI, Roberts NP, Andrew M, Cooper R, Lewis C. Psychological therapies for chronic post-traumatic stress disorder (PTSD) in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2013; (12): CD003388.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24338345/
心療内科でできること
心療内科では、まず丁寧なカウンセリングを行い、症状の程度や背景を確認します。その上で、以下のようなサポートを提供します。
- PTSDに対する正しい理解と教育
- カウンセリングによる心理的支援
- 状況に応じた薬物療法
- 生活習慣の指導
「これってPTSDかも?」と思った時点での相談が、回復への近道です。
その苦しみは、乗り越えられるものです
PTSDは、適切なサポートを受けることで必ず回復が見込める病気です。過去に縛られる毎日から、少しずつでも前に進むために、あなた自身の心の声に耳を傾けてください。
医師からのひとこと
「PTSDは、心の深い傷による“自然な反応”です。恥じることは一切ありません。もし今つらさを抱えているなら、ひとりで我慢せず、専門家を頼ってください。あなたの回復を、一緒にサポートします。」