
休職とは、雇用を続けたまま一定期間仕事を休む制度のことです。ただし法律で定められた制度ではなく、内容は会社の就業規則によって決まります。「休んだほうがいいと分かっているのに、何から始めればいいのか分からない」——そこで止まってしまう方は、とても多くいらっしゃいます。診断書はどうやってもらうのか、会社にどう伝えるのか、その間の収入はどうなるのか。この記事では、受診から休職に入るまでの流れを順番に整理します。
欠勤・有給休暇・休職はどう違うのか
まず言葉を整理しておきます。ここが混ざっていると、必要のない手続きまで身構えてしまいます。
| 位置づけ | 給与 | 診断書 | |
|---|---|---|---|
| 欠勤 | 数日単位の休み | 通常は支払われません | 欠勤が続いた場合求められることがある |
| 有給休暇 | 労働者の権利 | 支払われます | 不要 |
| 休職 | 会社の制度(就業規則による) | 会社によります。無給のことが多い | 求められることが多い |
ここが重要なのですが、休職は法律上の制度ではなく、会社ごとの就業規則に基づく制度です。期間の上限も、給与の扱いも、必要な書類も会社によって違います。まずは就業規則を確認するところから始まります。
なお、1日〜数日休めば足りるのか、それとも休職を考える段階なのかについてはメンタル不調で仕事を休む基準で整理しています。
休職までの流れ(全体像)
- 受診して、いまの状態を医師と整理する
- 必要に応じて診断書を作成してもらう
- 会社(上司・人事)に伝え、就業規則に沿って手続きする
- 休職開始。必要なら傷病手当金の申請を進める
- 療養しながら、復職の時期を主治医・会社と相談する
順番を飛ばさないほうが、結果的に早く進みます。会社に伝えてから受診しようとすると、診断書の準備が間に合わず宙ぶらりんになりがちだからです。
ステップ1:受診して現状を整理する
受診のとき、うまく説明できなくて構いません。次のことをメモにして持っていくと、限られた診察時間でも伝わりやすくなります。
- いつ頃から不調が続いているか(おおよそで十分です)
- 眠れているか、食べられているか
- 仕事のどの場面で症状が強くなるか
- すでに休んだ日があるか、休んで戻れたか
- 休職を考えていること
「休職したい」と最初から言ってよいのか迷う方がいらっしゃいますが、相談として口に出していただいて問題ありません。それで診断が歪むことはありません。言いにくければ、メモを見せるだけでも構いません。
なお、症状そのものについては適応障害の初期症状やうつ病の解説、燃え尽き症候群もあわせてご覧ください。
ステップ2:診断書について知っておきたいこと
最初にお伝えしておきたいのは、診断書は希望すれば必ず発行される書類ではなく、診察の結果として作成されるものだという点です。ただしこれは「頼んではいけない」という意味ではありません。
- 記載されるのは通常、病名・必要と考えられる療養期間・配慮事項などです
- 初診当日に作成できることもあれば、経過を見てからになることもあります
- 会社によって指定の書式がある場合があるので、事前に確認しておくと二度手間が防げます
- 文書料(自費)がかかります。金額は医療機関によって異なります
診断書に書かれる療養期間は、その期間で必ず治るという意味ではなく、まず区切って様子を見るための目安です。延長されることも、早く戻れることもあります。
ステップ3:会社への伝え方
実際に一番エネルギーを使うのがここです。全部を説明しようとすると書き出せなくなるので、伝えることを3つに絞ると楽になります。
- 体調不良が続いていて、医療機関を受診したこと
- 療養が必要と言われていること(診断書があればその旨)
- 手続きについて相談したいこと
文例です。電話がつらければ、メールやチャットで構いません。
お疲れさまです。体調不良が続いており、医療機関を受診したところ、療養が必要との判断をいただきました。診断書をお渡ししたうえで、休職の手続きについてご相談させていただきたく存じます。ご都合のよいお時間を教えていただけますでしょうか。
病名や経過を詳しく伝えるかどうかは、ご自身で決めて構いません。詳細まで説明する義務はありません。産業医のいる会社では、人事から産業医面談を案内されることがあります。
直属の上司に言いにくい場合、人事や社内の相談窓口が受け付けてくれる会社もあります。就業規則や社内ポータルを一度確認してみてください。
ステップ4:休職中のお金——傷病手当金
休職中の収入で中心になるのが、健康保険の傷病手当金です。主な要件は次のとおりです。
- 業務外の病気やけがで仕事に就けないこと
- 連続する3日間(待期)ののち、4日目以降が支給の対象になること
- 休業した期間について給与が支払われていないこと
- 支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月
申請書には医師が記入する欄があるため、通院を続けていることが前提になります。窓口は加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合など)です。要件や書式は保険者によって異なるので、必ずご自身の保険者でご確認ください。
なお、不調の原因が仕事にあると考えられる場合は労災保険の対象になることがあり、その場合は別の手続きになります。判断に迷うときは、会社または労働基準監督署にご確認ください。
また、通院が続く場合は自立支援医療(精神通院医療)によって通院医療費の自己負担が軽くなることがあります。申請先はお住まいの自治体の窓口です。
ステップ5:休職中の過ごし方と復職
休職に入った直後は、何もできない自分に焦ってしまう方がとても多いです。ですが、最初の時期に必要なのは回復ではなく、まず消耗を止めることです。
- 最初の数週間は、生活リズムを整えること以上を目標にしなくて構いません
- 「復職したら何をするか」を考えるのは、少し戻ってきてからで十分です
- 気分は日によって上下します。悪い日があっても後退ではありません
- 復職の時期は自己判断ではなく、主治医・会社と相談して決めます
休職期間が延びること自体は、失敗ではありません。無理に早く戻って再び休むことのほうが、結果的に長引きやすいと考えられています。
よくあるつまずき
| つまずき | 考え方 |
|---|---|
| 休職すると迷惑がかかる | 限界まで働いて急に離脱するほうが、引き継ぎの余地がなくなります |
| 診断書をもらうのが怖い | 相談することと、休職を決めることは別です。まず相談で構いません |
| 休職したら戻れない気がする | 復職を前提とした制度です。就業規則で期間と条件を確認してみてください |
| 上司に言い出せない | 人事や産業医が窓口になる会社もあります |
| 収入が不安 | 傷病手当金や自立支援医療など、使える制度があります |
休職を考えてよいタイミング(セルフチェック)
最近2週間ほどを振り返って、当てはまるものを数えてみてください。これは診断ではなく、整理のための目安です。
- 休みの日にも回復せず、週明けが来るのが怖い
- 通勤の途中で動悸・吐き気・涙などの症状が出る
- 1日休んでも、翌日にはもとの状態に戻ってしまう
- ミスが増え、以前できていたことに時間がかかる
- 眠れない、または寝ても疲れが取れない日が2週間以上続いている
- 食欲が落ちた、または過食が止まらない
- 仕事のことを考えると涙が出る、または何も感じなくなった
- 「消えてしまいたい」と考えることがある
最後の項目に当てはまる場合は、休職を検討する前に、できるだけ早く医療機関にご相談ください。
3つ以上当てはまり、それが2週間以上続いているなら、一度相談していただいてよい段階です。2つ以下なら、無理に当てはめる必要はありません。
よくあるご相談例
外来では、次のようなご相談をよくお聞きします。
- 「休んだほうがいいと分かっているのに、言い出せないまま数か月たってしまった」
- 「診断書をお願いしてよいのか分からず、受診をためらっていた」
- 「休職したら戻れなくなるのではと不安で、決断できない」
- 「収入が止まるのが怖くて、限界まで働いてしまう」
共通しているのは、体調そのものより「決められないこと」で消耗しているという点です。決める前の相談として来ていただいて構いません。
よくある質問
Q. 初診で診断書は出ますか。
作成できることもありますが、経過を見てからになることもあります。状態や会社の指定書式によって変わるため、当日必ずお出しできるとはお約束できません。まずはご相談ください。
Q. 休職せずに、時短勤務や部署異動で乗り切れませんか。
可能な場合もあります。環境調整で足りるかどうかも含めて、診察で一緒に検討します。休職だけが選択肢ではありません。
Q. 休職期間はどれくらいになりますか。
状態と会社の規定によります。まず1〜3か月で区切り、経過を見ながら判断していくことが多いですが、個人差があります。
Q. 会社に病名を知られますか。
診断書には通常、病名が記載されます。ただし、診察の詳しい内容や経過まで会社に伝わるわけではありません。書き方について不安があれば、診察時にご相談ください。
参考文献
なお、復職可否の判断や産業医の選任について、企業のご担当者さまからのご相談も承っています。詳しくは法人・企業のご担当者さまへをご覧ください。
医師からのメッセージ
休職を考える段階まで来た方の多くは、そこに至るまでにずいぶん長く耐えてこられています。「まだ動けるうちは頑張るべきだ」と、ご自身に何度も言い聞かせてきたのではないでしょうか。
けれど、休職は頑張れなかった人の選択ではなく、働き続けるための手続きのひとつです。制度として用意されているのは、そこから戻ってくることが前提にあるからです。
まだ決めていなくて構いません。決めるための材料を一緒に整理するところから始められますので、迷った時点でご相談ください。
この記事の監修
赤坂心療内科クリニック 院長
宮本 せら紀(みやもと せらき)
医学博士・心療内科専門医・認定内科医・日本医師会認定産業医
日本大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院にて臨床研修。東京大学大学院にて医学博士号取得(ストレス防御・心身医学)。日本心身医学会・日本心療内科学会ほか所属。

