ドパガキとは?ショート動画がやめられないのは本当に「ドーパミン中毒」か|大人にも起きる理由と抜け出し方を心療内科医が解説

「ドパガキ」とは、「ドーパミン中毒のガキ」を略したネット上の俗語で、ショート動画やSNSを次々と見続けてしまい、やめられない状態を指す言葉です。医学的な診断名ではありません。

「1本だけのつもりが、気づけば1時間たっていた」「仕事中も、つい通知を開いてしまう」——若い世代の言葉として広まりましたが、思い当たる大人も少なくないはずです。最近は「ドパオジ」「ドパオバ」という言い方も出てきました。この記事では、ドパガキと呼ばれる状態について、科学的に言えることとまだ分かっていないことを分けて整理し、大人にも起きる理由と抜け出し方を、心療内科医の視点で解説します。

この記事の要点

  • ドパガキは医学的な病名ではなく、ショート動画やSNSがやめられない状態を指す俗語です
  • ショート動画の利用が多い人ほど、集中力や衝動を抑える力が低く、ストレスや不安が強い傾向があることが、大規模な研究のまとめで報告されています。ただし、これは「関連がある」という結果で、動画が原因だと証明されたわけではありません
  • 問題になりやすいのは見ている時間の長さよりも、「やめたいのにやめられない」という見方です。意志の力より、環境を変える工夫のほうが続きやすいと考えられています

ドパガキとは?言葉の意味と広まった背景

ドパガキは、ドーパミンという脳内の物質の名前と、「ガキ(子ども)」をくっつけた言葉です。もともとは、ショート動画が止まらない自分や友だちを、冗談まじりに呼ぶ言い方としてSNSで広まりました。

自虐として使われることが多い一方で、他人に向けると悪口にもなり得る言葉です。また、言葉の響きから「子どもの問題」と思われがちですが、次々と流れてくる短い動画に注意を奪われる仕組みは、年齢を問わず誰にでも働きます。

ドパガキは病気?

いいえ、ドパガキという病気や診断名はありません。

世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-11)では、ゲームについては「ゲーム行動症(ゲーム障害)」という診断名が定められています。しかし、SNSやショート動画の使いすぎについては、現時点で独立した診断名としては定められていません。

ただし、病名がないことと、困りごとがないことは別です。ショート動画をやめられないことで、睡眠や仕事、人間関係に支障が出ているなら、それは十分に相談の対象になります。

「ドーパミン中毒」は本当?科学的に言えること・まだ分からないこと

ドパガキという言葉は、「ショート動画を見るとドーパミンが大量に出て、脳が中毒になる」というイメージで語られがちです。けれど、この説明には言い過ぎの部分もあります。現時点の研究から言えることを整理しました。

言えることまだ分からないこと
ドーパミンの役割ドーパミンは「快楽の物質」というより、「次は何が来るか」という期待や、「もっと欲しい」という気持ちに関わると考えられていますショート動画を見ると、ドーパミンが「大量に」出続けているのかどうか
集中力やメンタルとの関係ショート動画の利用が多い人ほど、集中力や衝動を抑える力が低く、ストレスや不安が強い傾向が報告されています動画が原因でそうなるのか、もともと疲れていたりストレスを抱えていたりする人が動画に流れやすいのか
見方による違い見ている時間の長さよりも、「やめられない」「つい開いてしまう」という見方のほうが、心身の不調との関連が強いと報告されています何分までなら安全か、という目安
脳への影響強い刺激に慣れると、刺激の少ない作業が退屈に感じやすくなることがあります「脳が壊れる」「元に戻らない」といった変化が起きるかどうか(そうした根拠は示されていません)

2025年に米国心理学会の学術誌に掲載された研究では、71本の研究、約9万8千人分のデータをまとめて分析しています。その結果、ショート動画の利用が多い人ほど集中力や自己コントロールが低い傾向があり、特に「やめられない使い方」をしている人ほど関連が強いことが示されました。一方で、多くは一時点の調査で、原因と結果の向きまでは分かっていません。

つまり、「ドーパミン中毒で脳がおかしくなる」と怖がる必要はありません。ただし、「やめたいのにやめられない」状態が続いているなら、それは見直すサインと考えてよさそうです。

なぜショート動画はやめられないのか

やめられないのは、意志が弱いからではありません。ショート動画には、人の注意を引き続けるための仕組みがいくつも重なっています。

① 次に何が出るか分からない

指で画面をはらうたびに、面白い動画が出ることもあれば、つまらない動画が出ることもあります。この「当たるか分からない」状態は、期待を高め、行動を繰り返させやすいことが心理学で知られています。くじ引きをもう1回だけ引きたくなるのと同じ仕組みです。

② 終わりがない

本や映画には「終わり」がありますが、ショート動画には区切りがありません。自分で止める理由を見つけない限り、次の動画が自動で始まります。

③ 疲れているときほど、手が伸びる

仕事や家事で疲れ切った夜は、考えなくても楽しめるものに手が伸びやすくなります。ショート動画は、疲れた脳がとりあえず休むための、手軽な逃げ場になっているとも言えます。その意味で、やめられない背景には、日中のストレスや疲れが隠れていることも少なくありません。

注意が必要なサイン

最近2週間ほどを振り返って、当てはまるものを数えてみてください。診断ではなく、自分の使い方を見直すための目安です。

  • 寝る前の「あと1本」が、気づくと30分以上になっている
  • 仕事中、特に用事がないのにスマホを開いてしまう
  • 会議や長い文章、本に集中できる時間が短くなった気がする
  • 動画を見ていないと、手持ちぶさたで落ち着かない
  • 見終わったあとに「時間をむだにした」と自己嫌悪になる
  • スマホを置いて休もうとしても、すぐに手に取ってしまう
  • 睡眠時間が削られ、朝起きるのがつらい
  • 家族や友人と一緒にいても、つい画面を見てしまう
  • 「やめよう」と決めても、数日で元に戻ってしまう
  • 動画を見ている間だけ、嫌なことを考えずに済むと感じる

3つ以上当てはまるなら、使い方を少し見直してみる価値があります。特に、睡眠が削られている、何度やめようとしても戻ってしまう、最後の項目のように「嫌なことから逃げる手段」になっている場合は、背景にストレスや気分の落ち込みが隠れていることもあります。どれも2つ以下なら、無理に当てはめる必要はありません。

今の状態から抜け出すには?意志より「環境」を変える

ショート動画は、やめられないように作られています。だからこそ、意志の力で我慢するより、手が伸びにくい環境を先につくるほうが現実的です。全部やる必要はありません。できそうなものを一つ選ぶところからで十分です。

アプリを、すぐ押せない場所に移す

ホーム画面の1ページ目からアプリを外し、フォルダの奥に入れます。開くまでの手間が一つ増えるだけで、「なんとなく開く」回数は減りやすくなります。

通知を切る

通知は、こちらの都合に関係なく注意を引き戻します。必要な連絡以外の通知はオフにしておきましょう。

寝室にスマホを持ち込まない

いちばん時間が溶けやすいのは、布団に入ってからです。充電場所を寝室の外にするだけで、睡眠時間を守りやすくなります。目覚まし時計は、昔ながらのものを使えば十分です。

「見る時間」ではなく「見る目的」を決める

「1日30分まで」と時間で縛るより、「昼休みに好きな配信者の新作だけ見る」のように目的を決めて開くほうが、だらだら見を防ぎやすくなります。スマホの利用時間を記録する機能で、まず現状を知るのもよい方法です。

退屈に、少しずつ慣れる

電車の中やレジ待ちの数分、スマホを出さずに過ごしてみてください。最初は落ち着かないかもしれませんが、退屈な時間は、脳が情報を整理して休むための大切な時間でもあります。

疲れの手当てを、ほかの方法でも

疲れた夜の逃げ場がショート動画しかないと、やめるのは難しくなります。湯船につかる、短い散歩をする、好きな音楽を1曲聴くなど、「何も考えずに休める方法」を一つでも増やすことが、遠回りのようで近道です。

子どもが「ドパガキ」かもしれないと感じたら

お子さんのスマホの使い方が気になるときは、取り上げるよりも、使う時間や場所のルールを一緒に決めるほうが、関係がこじれにくいと考えられています。頭ごなしに否定すると、隠れて使うようになることもあります。

夜遅くまで使って朝起きられない、学校を休みがちになっているといった場合は、10代のスマホ依存と睡眠障害の記事もあわせて参考にしてください。当院では、小学生以上のお子さんの診察も行っています。

受診を考えたほうがよい目安

次のような状態が続いている場合は、一人で抱え込まずに相談することを考えてみてください。

  • 睡眠が削られ、日中の仕事や学業に支障が出ている
  • やめようと何度も試みたが、うまくいかない
  • 動画を見ていないと、強い不安やイライラを感じる
  • 気分の落ち込みや、何をしても楽しくない状態が2週間以上続いている
  • 集中できない、忘れ物が多いといった困りごとが、子どもの頃から続いている

最後の項目のように、集中のしにくさが昔から続いている場合は、ADHD(注意欠如・多動症)の傾向が関係していることもあります。また、頭がぼんやりして働かない感じが続くときは、ブレインフォグや、情報過多による疲れが重なっていることもあります。

当院では、医師と心理セラピストが連携し、スマホやショート動画の使い方の背景にあるストレスや気分の不調も含めて、一緒に整理していきます。

よくある質問

ショート動画は1日何分までなら大丈夫ですか?

はっきりした目安は、まだ分かっていません。研究では、時間の長さよりも「やめたいのにやめられない」という見方のほうが、心身の不調との関連が強いことが報告されています。時間だけにとらわれず、睡眠や仕事に影響が出ていないかを目安にしてください。

スマホを完全にやめたほうがいいですか?

いいえ、その必要はありません。スマホは仕事や生活に欠かせない道具でもあります。完全にやめるより、使う場面と使わない場面を分けるほうが、長く続けやすい方法です。

ドパガキは、時間がたてば治りますか?

使い方を見直すことで、集中しやすさや睡眠が少しずつ戻ってくることがあります。ただし、変化の早さには個人差があります。背景に気分の落ち込みや強いストレスがある場合は、その手当てもあわせて考えることが大切です。

スマホの使い方の悩みで、心療内科に行ってもいいのですか?

はい、構いません。やめられないことで眠れない、集中できない、気分が沈むといった困りごとがあるなら、十分に相談の対象です。「この程度で」と思う段階で相談していただいて大丈夫です。

参考文献

医師からのメッセージ

「またショート動画で夜が終わってしまった」と、自分を責めていませんか。やめられないのは、あなたの意志が弱いからではありません。人の注意を引きつけるように作られた仕組みと、疲れた脳が休める場所を探していることが、重なっているだけです。

だからこそ、責めるより先に、手が伸びにくい環境を一つ整えてみてください。それでも眠れない、気分が沈むといった状態が続くなら、その奥にあるストレスや疲れこそが、本当に手当てが必要なところかもしれません。迷った時点で、どうぞご相談ください。

この記事の監修

赤坂心療内科クリニック 院長
宮本 せら紀(みやもと せらき)
医学博士・心療内科専門医・認定内科医・日本医師会認定産業医

日本大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院にて臨床研修。東京大学大学院にて医学博士号取得(ストレス防御・心身医学)。日本心身医学会・日本心療内科学会ほか所属。

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