その頑張り方、ブラック企業よりブラックかもしれません

目次

真面目な人ほど、自分に厳しすぎる

外から見ると、あなたはきっと責任感が強くて、仕事ができて、周囲の期待にも応えてきた人です。
ただ、心療内科でお会いする方の中には、職場がブラックというより、本人の中にある基準が過酷で、休むことや助けを求めることを自分に許せないケースが少なくありません。

次のような考えが続いていたら要注意です。

  • 体調が悪いのは甘えや自己管理の悪さなので、気合で何とかなる
  • 誰かに頼むくらいなら自分がやった方が早い
  • 休むと評価が下がる、居場所がなくなる
  • いつか楽になるはず、と先延ばしして走り続ける

ブラック企業よりブラックになりやすい頑張り方の特徴

1 休息に罪悪感がある

休むことをサボりと同一視すると、回復のチャンスが消えます。不眠が続き、脳と自律神経の回復が追いつかなくなります。

2 限界まで頑張ってしまう

自分の限界は見えにくいものです。限界は急に来ることもあります。限界が近づいてくると、集中力低下やミス増加、自己否定が連鎖します。

3 誰にも弱音を吐けない

相談できない状態は、心理的孤立を強めます。孤立は、うつ状態や不安障害、パニック発作の引き金になり得ます。

4 体の症状を無視する

胃痛、下痢、吐き気、めまい、肩こり、頭痛、動悸などは、ストレスが体に出ているサインです。放置すると慢性化しやすくなります。

それ、心の問題ではなく脳と体のSOSかもしれません:よくある症状

心療内科や精神科でよく伺うのは、気分だけの問題ではなく、睡眠と身体反応の破綻です。

睡眠のサイン

  • 寝つけない
  • 夜中や早朝に目が覚める
  • 眠っても疲れが抜けない
  • 休日も寝だめできない

体のサイン 自律神経の乱れ

  • 動悸、息苦しさ、胸の圧迫感
  • めまい、ふらつき、吐き気
  • 胃腸症状、過敏性腸症候群のような下痢や便秘
  • 微熱、倦怠感、頭痛、肩こり

心のサイン うつ状態 不安

  • 以前好きだったことが楽しめない
  • 涙が出る、イライラする
  • 仕事のミスが怖くて確認が止まらない
  • 出社前に強い不安、電車がつらい
  • 消えてしまいたい気持ちがよぎる

当てはまるほど、適応障害うつ病、バーンアウト、パニック障害などの可能性を含めて評価が必要です。

原因は性格だけではありません:なぜ限界まで頑張ってしまうのか

職場要因

  • 長時間労働、休日が取れない
  • 業務量と人員の不均衡
  • ハラスメント、評価制度の不透明さ
  • 異動、昇進、配置転換など急な環境変化

個人要因 悪い意味での真面目さ

  • 完璧主義
  • 期待に応えることで自己価値を保ってきた
  • 断るスキルを学ぶ機会がなかった
  • 家庭や過去の経験から頑張る以外の選択肢が少なかった

結論としては、あなたが弱かったからではなく、負荷が長期間続き、脳のエネルギー管理が崩れた状態になっていることが多いです。

体験談:ブラック企業ではないのに、限界が来たAさんの話

Aさん 30代 企画職

職場は一見ホワイトで、残業も月30時間前後。Aさんは頼まれると断れず、もともと今の仕事が好きで入社したというのもあり、資料を完璧に作り直して深夜まで作業していました。
最初は達成感があったものの、3か月後から寝つけず、朝は動悸と吐き気。休みの日も仕事の夢で目が覚める。リラックスすることが難しくなっていきました。
ある朝、駅のホームで息が苦しくなり、電車に乗れなくなって受診。

診察とカウンセリングでわかったのは、本人が自分に課しているノルマが常時フルマラソン級だったこと。
治療は、睡眠の立て直し、環境調整、カウンセリングでの認知行動療(CBT)、そして職場への業務整理の相談。
休職は短期間で、その後は働き方を変える練習を続け、再発予防まで進みました。

Aさんが最後に言った言葉が印象的でした。
「ブラック企業じゃないから、倒れるはずがないと思っていた。でも、実は自分が一番ブラックになっていた」

心療内科でできること:治療は我慢大会ではありません

心療内科や精神科は、気合いを入れ直す場所ではなく、脳と体の回復計画を一緒に作る場所です。

1 医学的評価

  • うつ病、適応障害、不安障害、睡眠障害、バーンアウトの見立て
  • 甲状腺、貧血など身体疾患の除外が必要な場合の連携
  • 重症度評価:自傷リスクの確認も含む

2 薬物療法 必要なときに必要な分だけ

  • 不眠に対する睡眠治療
  • 不安や抑うつに対する抗うつ薬など
  • 体質や副作用、仕事状況に合わせた調整

薬は怖いものではなく、回復の土台である睡眠と不安を整える補助輪になることがあります。

3 カウンセリングと心理療法

  • 認知行動療法(CBT)で思考の癖と行動を調整
  • ストレスコーピング:休む技術、断る技術
  • トラウマや対人関係のパターンが背景にある場合の整理

4 休職や職場調整の相談

  • 診断書が必要かどうか
  • 産業医面談の準備
  • 復職支援 リワークの検討
  • 業務量調整、配置転換、在宅勤務など現実的な落とし所

必要に応じて、労働環境の相談窓口を使うことも選択肢です。自分の健康を守る行動は、わがままではありません。

今日からできるセルフチェックとセルフケア

セルフチェック 直近2週間で増えたもの

  • 眠れない、寝ても回復しない
  • ミスが増えた、判断が遅い
  • 食欲低下、体重変化
  • 動悸、胃腸症状、頭痛
  • 涙もろい、絶望感、希死念慮がよぎる

複数当てはまり、生活や仕事に支障があるなら受診の目安です。

セルフケアは治療の代わりではなく、治療の相棒

  • 睡眠を最優先 就寝起床時刻を固定
  • カフェインとアルコールを見直す
  • 予定に回復時間を組み込む
  • 仕事の見える化:タスクを紙に出して上限を決める
  • 相談先を増やす:家族、同僚、友人、上司、産業医、カウンセラー、主治医

ただし、息が苦しい、希死念慮が強い、日常生活が回らない場合はセルフケアだけで抱えないでください。

よくあるQ&A FAQ

Q1 心療内科と精神科、どちらに行けばいいですか

A どちらでも構いません。睡眠障害、不安、動悸や胃腸症状などストレス関連の身体症状が目立つ場合は心療内科、気分の落ち込みや強い不安、パニック、希死念慮が中心なら精神科を選ぶ方もいますが、厳密に区別されているのは両方の診療科が併設されている大学病院くらいで、診療所では両方の科に変わりがないことも多いです。迷うなら、予約が取りやすく通いやすい医療機関で大丈夫です。

Q2 診断書はすぐ書いてもらえますか

A 状況によります。初診でも、明らかに就労が困難な状態なら作成されることがあります。一方で安全面やより正確な評価のため、数回の評価が必要な場合もあります。職場提出の期限があるときは、予約時に事情を伝えるとスムーズです。

Q3 薬に頼るのが不安です

A 不安は自然です。依存が問題になりやすい薬と、そうでない薬は別物です。目的は、脳の過覚醒を下げて睡眠を回復させ、カウンセリングや環境調整が効く土台を作ること。最小量から始め、合わなければ変更できます。

Q4 休職するとキャリアが終わりませんか

A 終わりません。むしろ限界突破で長期離脱や再発を繰り返す方がダメージが大きいです。短期の休職で回復し、再発予防まで整えることは、長い目で見てキャリア防衛になります。

Q5 カウンセリングは何を話せばいいですか

A うまく話そうとしなくて大丈夫です。眠れない、朝がつらい、職場で何が怖いか、頭の中の独り言がどんな内容か。そこから一緒に整理します。守秘義務があるので安心してください。

医師からのメッセージ

頑張れることは才能です。でも、頑張り続けられることは才能ではなく、環境と回復の設計です。
眠れない、動悸がする、朝が来るのが怖い。そんなサインが出ているなら、あなたの心が弱いのではなく、治療が必要な状態に近づいている可能性があります。心療内科やカウンセリングは、あなたが壊れてから行く場所というよりむしろ、壊れないために行く場所でもあります。
一度、あなたの負荷を医療の目線で一緒に点検させてください。早いほど、短い距離で戻れます。

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