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頼れない自分を責めていませんか
誰かに助けを求めるって、簡単そうで実はとても難しいことですよね。
私のクリニックには、こんな言葉を口にされる方がたくさんいらっしゃいます。
「迷惑をかけたくないんです」 「弱い人間だと思われたくなくて」 「どうやって頼ればいいかわからない」
もしあなたも同じように感じているなら、まず知っておいてほしいことがあります。助けを求められないのは、あなたの性格の問題ではありません。そこには理由があるのです。
「助けを求められない」心理の正体
自己肯定感の低さとの関係
助けを求めることに罪悪感を覚える方の多くは、自己肯定感が低い傾向にあります。「自分なんかのために相手の時間を使わせるのは申し訳ない」という思考が無意識に働いているのです。
過去の経験による影響
幼少期に「しっかりしなさい」と言われ続けた方、助けを求めたときに否定された経験がある方は、大人になっても他者を頼ることへの恐怖心を抱きやすくなります。
完璧主義の罠
何でも自分でこなさなければという完璧主義も、援助希求行動を妨げる大きな要因です。「できない自分」を認めることへの強い抵抗感があります。
助けを求められないことで起こる心身の不調
一人で抱え込み続けると、心と体にさまざまな症状が現れます。
こんな症状はありませんか
- 慢性的な疲労感や倦怠感
- 眠れない、または眠りが浅い
- 食欲の低下や過食
- 理由のない涙が出る
- 胸が苦しい、息がしづらい
- 何もかもが面倒に感じる
これらは心療内科で診る代表的な症状です。ストレスが限界を超えると、適応障害やうつ病に発展することもあります。
体験談 ― Aさん(30代女性)の場合
Aさんは営業職として働く30代の女性でした。職場では常に笑顔で、後輩の相談にも快く乗る頼れる先輩。でも自分のことは誰にも話せませんでした。
「私が弱音を吐いたら、みんながっかりするかもって思ってたんです」
ある日、出勤しようとしたら体が動かなくなりました。涙が止まらず、そのまま会社を休みました。
勇気を出して心療内科を受診したAさん。最初は「こんなことで来てしまってすみません」と何度も謝っていました。
カウンセリングを重ねる中で、Aさんは少しずつ気づいていきました。自分がどれほど無理をしてきたか。そして、助けを求めることは弱さではなく、自分を大切にする行動なのだということを。
今ではAさんはこう話してくれます。
「完璧に頼れるようになったわけじゃないんです。でも、しんどいときに『ちょっと聞いてほしい』って言えるようになりました。それだけで、すごく楽になりました」
少しだけ人を頼れるようになる5つのステップ
ステップ1 ― 頼れない自分を責めないことから始める
まずは「頼れない自分はダメだ」という考えを手放しましょう。頼れないには理由があります。自分を責めることをやめることが最初の一歩です。
ステップ2 ― 小さなお願いから練習する
いきなり深刻な悩みを打ち明ける必要はありません。「ちょっとこれ取ってもらえる」「少し話を聞いてほしいんだけど」といった小さなお願いから始めてみてください。
ステップ3 ― 頼る相手を選ぶ
誰にでも頼る必要はありません。この人になら話せそうと思える人を一人見つけることが大切です。見つからない場合は、専門家であるカウンセラーが最初の相手になることもできます。
ステップ4 ― 頼った後の気持ちを観察する
助けを求めた後、どんな気持ちになったか振り返ってみてください。意外と相手は嫌な顔をしなかったな、少し楽になったな、そんな小さな発見が自信につながります。
ステップ5 ― 専門家の力を借りることも選択肢に
一人で変わろうとするのが難しいときは、心療内科やカウンセリングを活用してください。援助希求の練習を専門家と一緒に行うことができます。
Q&A ― よくあるご質問
Q1. 助けを求められないだけで心療内科に行ってもいいのでしょうか
A. もちろんです。助けを求められないことで日常生活に支障が出ている場合、それは立派な受診理由になります。心療内科では、対人関係の悩みや自己肯定感の問題も扱っています。まずはご相談だけでも大丈夫です。
Q2. カウンセリングでは何を話せばいいですか
A. 何を話しても構いません。うまく話せなくても大丈夫です。カウンセラーはあなたの言葉を頭ごなしに否定したりせず、一緒に整理していくお手伝いをします。沈黙の時間があっても問題ありません。
Q3. 薬を出されるのが不安です
A. 薬が必要かどうかは症状によって異なります。まずはお話を聞かせていただき、一緒に治療方針を考えていきます。薬を使わない治療法もありますのでご安心ください。
Q4. 家族や職場に知られたくありません
A. 医療機関には守秘義務があります。ご本人の同意なく情報が外部に伝わることはありません。安心してご相談ください。
Q5. 一回行っただけで楽になりますか
A. 一回のカウンセリングで劇的に変わることは難しいですが、話を聴いてもらうだけでも心は軽くなります。継続的な通院で少しずつ変化を実感される方が多いです。
心療内科とカウンセリングでできること
心療内科では、あなたの症状や背景を丁寧にお聴きし、必要に応じて治療を行います。
主な治療内容
- 医師による診察と診断
- 認知行動療法などの心理療法
- 必要に応じた薬物療法
- 公認心理師によるカウンセリング
- 生活習慣や対人関係のアドバイス
「助けを求める練習」もカウンセリングの中で行うことができます。安全な環境で少しずつ慣れていくことで、日常生活でも人を頼れるようになっていきます。
医師からのメッセージ
最後まで読んでくださりありがとうございます。
助けを求められないというのは、とても苦しいことです。周りには頼れる人がいるはずなのに、なぜか自分だけが孤立しているような感覚。その孤独感を抱えながら毎日を過ごすのは、本当につらいことだと思います。
でも、あなたがここまで頑張ってこられたのは、決して当たり前のことではありません。一人で踏ん張ってきた自分を、どうか認めてあげてください。
そして、もし少しでも「誰かに話を聞いてほしい」と思ったなら、それはとても大切なサインです。そのサインを無視しないでください。
助けを求めることは、弱さではありません。自分を大切にするための、勇気ある行動です。
完璧に頼れるようになる必要はありません。ほんの少し、誰かに「しんどい」と言えるようになるだけで、世界は変わり始めます。
私たち心療内科は、あなたのその一歩を全力でサポートします。いつでもお待ちしています。

