眠れない・食べられない・やる気が出ない…それって心のSOSかもしれません

眠れない・食べられない・やる気が出ないは 心のSOS のことがあります

外来でよく聞く言葉があります。
夜、布団に入っても眠れない。食事がのどを通らない。朝の支度ができず、仕事や学校のことを考えると体が重い。

こうした変化は、うつ病適応障害、不安障害、ストレス反応、自律神経の乱れなどと関係している場合があります。もちろん、甲状腺疾患や貧血など身体の病気が背景にあることもあるため、自己判断で決めつけないことが大切です。

まず知ってほしい これは意思の弱さではなく症状です

やる気が出ない、集中できない、涙が出る、イライラする。
これらは性格の問題として片付けられがちですが、脳や自律神経が疲弊している時に起きる症状として説明できることが少なくありません。

患者さんがよく口にされるのは
休めばいいのに休めない
頑張らないといけないのに動けない
という葛藤です。ここに強い罪悪感が乗ると、症状はさらに悪化しやすくなります。

こんな症状が続くなら 受診のサインかもしれません

以下が2週間以上続く、または急に悪化した場合は、心療内科や精神科、カウンセリングを検討してください。

  • 入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒など不眠症状
  • 食欲不振、体重減少、胃の不快感
  • 気分の落ち込み、興味関心の低下
  • 倦怠感、疲労感、頭が回らない
  • 動悸、息苦しさ、過呼吸、胸の圧迫感
  • 腹痛、下痢、吐き気などストレス性の身体症状
  • 仕事に行けない、家事ができないなど機能低下
  • 消えたい気持ちが出る、希死念慮がある

特に希死念慮や自傷の衝動がある時は、夜間や休日でも緊急相談先につながってください。

原因は一つじゃない ストレスと脳と体はつながっています

心の不調は、単純にストレスが原因というより、いくつかの要素が重なって起きます。

  • 環境要因:職場の人間関係、ハラスメント、育児介護、受験、転職、失恋
  • 体の要因:睡眠不足、過労、ホルモン変動、慢性疼痛、持病
  • 性格傾向:完璧主義、責任感が強い、頼れない
  • 脳の疲労:不安が止まらない、思考が反芻する

適応障害はストレス因に反応して症状が出やすく、うつ病はストレスをきっかけに脳の機能が落ちて回復に時間がかかることがあります。不安障害やパニック障害では、身体症状が前面に出ることも多いです。

自分でできるセルフチェック 小さな変化を見逃さない

完璧な自己診断は不要です。次の質問に、最近当てはまるものが多いほど相談の価値があります。

  • 朝起きた瞬間から疲れている
  • 好きだったことが楽しくない
  • ミスが増えた、判断が遅い
  • 食事が面倒、味がしない
  • 休日も回復しない
  • 寝ても眠い、眠れない
  • 些細なことで涙が出る、怒りが抑えられない

ポイントは 以前の自分との比較 です。

体験談 外来でよくある回復のプロセス

ここでは、個人が特定されない形で、実際の外来で多い経過をもとにした例を紹介します。

会社員Aさん 30代 不眠と食欲不振

繁忙期が続き、寝つけず夜中に何度も目が覚めるようになりました。朝食が入らず体重も減少。内科で異常が大きくないと言われ、心療内科へ。
面接で、仕事の負荷と人間関係のストレス、休日も仕事のことが頭から離れない状態が判明。適応障害の状態像として説明し、休養と職場調整、睡眠衛生指導を開始。必要最小限の薬物療法も併用。
2〜4週間で睡眠が改善し、食事が戻り、3か月で段階的に復職されました。

育児中Bさん 40代 気力低下と涙もろさ

子どもの体調不良が続き、自分の睡眠が分断。気力が出ず、家事が止まり、自己否定が強くなりました。
カウンセリングを併用し、休めない構造を一緒に見直すことに。支援先につなぎ、周囲に具体的に頼む練習を実施しました。
気分の波が落ち着き、罪悪感が軽くなり、生活が回り始めました。

回復は一直線ではありません。良い日と悪い日を行き来しながら、少しずつ土台を作り直します。

心療内科では何をするの 初診の流れを具体的に

初診でよく行うことは次の通りです。

  • 現在の症状の整理:睡眠、食欲、気分、不安、身体症状
  • 生活背景の確認:仕事、家庭、ストレス要因
  • 安全確認:希死念慮の有無、緊急性
  • 身体疾患の可能性:必要に応じて採血や内科連携
  • 方針の提案:休養、環境調整、心理療法、薬物療法

患者さんが安心されるのは、診断名を付けることよりも、いま起きていることが説明できること、回復の道筋が見えることです。

治療の選択肢 休養・カウンセリング・薬は対立しません

治療は組み合わせです。

休養と環境調整

ストレス源が強い場合、休職や業務調整は治療そのものです。診断書が必要な場合も相談できます。

カウンセリング 認知行動療法など

考え方のクセを責めるためではなく、苦しさを増やすパターンに気づき、対処の選択肢を増やすために行います。対人関係療法や支持的精神療法が合う方もいます。

薬物療法

睡眠薬、抗うつ薬、抗不安薬などは、脳と体の過緊張を落とし、回復の足場を作るために使います。依存が不安な方には、リスクとメリット、減らし方まで含めて説明しながら進めます。

今日からできるセルフケア 小さくていいので確実に

  • 起床時刻を一定にする
  • 眠れない時は布団で粘らず一度離れる
  • カフェインとアルコールを見直す
  • 朝に光を浴びる
  • 食事は量より回数、ゼリーやスープでも可
  • 1日1つだけタスクを減らす
  • つらさを言語化してメモする

セルフケアで改善する人もいますが、続かないこと自体が症状の場合もあります。その時は一人で抱えず受診してください。

Q&A よくある質問

Q1 心療内科と精神科の違いは

A 施設によりますが、心療内科はストレスによる身体症状も含めて診ることが多く、精神科は気分障害や不安障害など精神症状を広く扱います。どちらでも相談できます。迷う場合は予約時に主訴を伝えると案内してもらえます。

Q2 眠れないだけでも受診していいですか

A はい。不眠はうつ病、適応障害、不安障害、自律神経失調症の入り口として現れることがあります。早期の睡眠改善は回復を早めます。

Q3 薬はできれば飲みたくありません

A その気持ちは自然です。薬を使わない選択肢も含めて一緒に検討できます。中等症以上の場合は、薬の併用のほうが回復が早いことも多いです。薬で土台を作り、回復後に減量する計画も現実的です。

Q4 カウンセリングはどれくらい通うものですか

A 目的によります。数回で整理がつく方もいれば、3〜6か月かけて再発予防まで行う方もいます。頻度は週1〜隔週、月1など生活に合わせて調整できます。

Q5 家族や職場にどう説明すればいいですか

A 病名より、今起きている機能の低下を事実として伝えるのが有効です。例:睡眠が3時間しか取れず集中力が落ちているため、治療と休養が必要。必要なら医師が診断書で支援致します。

Q6 受診の前に準備しておくと良いことは

A 睡眠時間、食事量、体重変化、つらさのピークの時間帯、困っている場面をメモしておくと診察がスムーズです。服薬中の薬やサプリも分かると安全です。

医師からのメッセージ

眠れない、食べられない、やる気が出ない。これらは、あなたが怠けているとか弱いから起きているのではありません。今の生活を続けるには、心と体のエネルギーが足りなくなっているだけです。
早めに相談できた人ほど、回復までの時間が短く、選べる治療の幅も広がります。受診は大げさな決断ではなく、状況を整理し、次の一手を一緒に考えるための手段です。
どうか、限界を超える前に。あなたのつらさを、言葉にするところから始めましょう。

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