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そのストレスチェックの結果、見過ごしていませんか
毎年、職場で受けているストレスチェック。封筒に入った結果を、ろくに読まずに机の引き出しにしまっていませんか。実は、私のクリニックを訪れる患者様の中には、半年前のストレスチェックで高ストレス者と判定されていたにもかかわらず、何の対処もせずに過ごし、結果としてうつ病や適応障害を発症してしまった方が少なくありません。
ストレスチェックは、ただの形式的な検査ではなく、あなたの心の健康状態を映し出す大切な健康診断のひとつです。今回は、心療内科医として日々患者様と向き合っている立場から、ストレスチェックでわかること、そして受診を考えるべき結果のサインについて、できる限りわかりやすくお伝えしていきます。
ストレスチェック制度とは何か|2015年から義務化された背景
ストレスチェック制度は、2015年12月から労働安全衛生法の改正によって、従業員50人以上の事業所に対して年1回の実施が義務付けられた制度です。背景には、職場のメンタルヘルス不調による休職者や自殺者の増加、過労死問題などがありました。
この制度の目的は、労働者自身が自分のストレス状態に気づくこと、そして職場環境の改善につなげることにあります。決して、ストレス耐性のない人を見つけ出すための制度ではありません。ここはとても大切なポイントなので、強調しておきたいと思います。
ストレスチェックでわかること|3つの視点から心の状態を可視化
ストレスチェックでは、主に以下の3つの領域について評価されます。
ひとつ目は、仕事のストレス要因です。仕事の量や質、対人関係、職場環境などが、あなたにどれくらい負担を与えているかを測ります。
ふたつ目は、心身のストレス反応です。実際に、イライラや不安、抑うつ気分、疲労感、身体症状などがどの程度現れているかを評価します。
3つ目は、周囲のサポート状況です。上司や同僚、家族からの支援がどれくらい得られているかを確認します。
これら3つを総合的に判断することで、あなたが今、どのようなストレス状態にあるのかが見えてくるのです。
高ストレス者と判定されたらどうすべきか|放置の危険性
ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定される方は、全体のおよそ10パーセントから15パーセント程度といわれています。もしあなたがこの判定を受けたら、それは決して恥ずかしいことでも、弱いことでもありません。むしろ、心と身体が限界に近いことを教えてくれる、大切なサインです。
高ストレス判定を受けても、医師の面接指導や心療内科の受診をされない方が圧倒的に多いのが現状です。その理由として、職場に知られたくない、自分は大丈夫だと思いたい、忙しくて時間がない、といった声をよく聞きます。
しかし、放置することで、うつ病、適応障害、不安障害、自律神経失調症、不眠症、パニック障害など、より深刻な精神疾患へと進行してしまうケースがあります。
受診を強くおすすめしたい結果のサイン
以下のような結果や症状が見られる場合、心療内科やメンタルクリニックでのカウンセリングを真剣に検討してください。
まず、高ストレス者と判定された場合。次に、抑うつ感や不安感の項目で高得点が出ている場合。そして、身体のストレス反応として、頭痛、肩こり、不眠、食欲不振、動悸、めまいなどが慢性的に続いている場合です。
また、結果以外にも、朝起きるのがつらい、仕事に行きたくない、涙が勝手に出る、何をしても楽しくない、死にたい気持ちが湧く、といった状態があれば、結果に関わらず早急な受診をおすすめします。
患者様の体験談|40代男性会社員Aさんのケース
プライバシー保護のため、内容は一部変更しています。
Aさんは40代男性、IT企業の管理職です。「最初にストレスチェックで高ストレスと出たとき、正直、何かの間違いだと思ったんです。確かに残業は多かったけど、自分はメンタルが強いほうだと思っていましたから」
そう話してくれたAさんは、判定後も半年間、何もせずに過ごしました。しかし、徐々に不眠がひどくなり、朝の通勤電車で動悸が止まらなくなり、ついには出社できなくなってしまったのです。
「あのとき、すぐに受診していれば、こんなに長く休職することにはならなかったと思います。ストレスチェックの結果は、身体が出してくれていたSOSだったんですね」
Aさんはその後、薬物療法と認知行動療法を組み合わせた治療で、職場復帰を果たしています。
Q&A|よくあるご質問にお答えします
Q1. ストレスチェックの結果が会社に知られることはありますか。
A1. 個人の結果は、本人の同意がない限り会社には開示されません。法律で厳格に守られていますので、安心して受けてください。
Q2. 高ストレス判定でしたが、自覚症状はあまりありません。それでも受診すべきですか。
A2. 自覚がないことが、かえって心配なケースもあります。一度、心療内科でカウンセリングを受けて、客観的な評価をしてもらうことをおすすめします。
Q3. 心療内科と精神科の違いは何ですか。
A3. ざっくり言うと、心療内科は心の不調から来る身体症状を主に扱い、精神科は心の症状そのものを扱います。ただし、最近は両方を診ているクリニックも多いです。
Q4. 受診すると、保険証の使用履歴で家族に知られませんか。
A4. 通常の保険診療では、医療機関名は記載されますが、診療内容までは家族に直接通知されることはありません。心配な場合は、自費診療を選ぶ方法もあります。
Q5. カウンセリングだけ受けることはできますか。
A5. はい、可能です。お薬に抵抗がある方でも、まずは話を聞いてもらうところから始められます。
心療内科での治療とカウンセリング|選択肢を知っておく
心療内科では、症状や原因に応じて、薬物療法、認知行動療法、対人関係療法、マインドフルネス療法、休養指導、環境調整のアドバイスなど、さまざまなアプローチを行います。
「薬は飲みたくない」というお気持ちは、多くの患者様からお聞きします。しかし、現代の抗うつ薬や抗不安薬は、依存性が低く、副作用も最小限に抑えられた製剤が増えています。必要な期間だけ、適切に使用することで、回復への大きな助けとなります。
カウンセリングについては、臨床心理士や公認心理師による専門的なセッションを通じて、あなたの考え方の癖や、ストレスへの対処法を一緒に見つけていきます。一人で抱え込まず、専門家と二人三脚で歩むことが、回復への近道です。
医師からのメッセージ
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
心の不調は、誰にでも起こりうる、ごく自然な反応です。骨折したら整形外科に行くように、心が疲れたら心療内科に来てください。それだけのことなのです。
ストレスチェックの結果は、あなた自身を守るためのメッセージです。封筒の中に眠らせておくのではなく、ぜひ向き合ってみてください。そして、少しでも不安があれば、お近くの心療内科やメンタルクリニックの扉を叩いてみてください。
あなたの一歩を、私たち心療内科医は心からお待ちしています。一緒に、あなたらしい毎日を取り戻していきましょう。

