
「回避性愛着障害」と「回避型愛着障害」は、同じものを指す言い方の違いです。どちらかが正しくて、どちらかが間違いということはありません。ただし、名前のよく似た「回避性パーソナリティ障害」は別のもので、ここを混同したまま調べ続けると、自分に当てはまらない説明ばかりを読むことになります。この記事では、呼び方の違いをまず整理したうえで、回避性パーソナリティ障害との見分け方と、回避的な愛着傾向がある方が実際に困りやすいことを心療内科医の視点でまとめます。
「回避性」と「回避型」は同じものです
検索するときに「回避性」と入力する方と「回避型」と入力する方がいますが、指している内容は同じです。英語の avoidant attachment を日本語にするときに訳が分かれただけで、意味の違いはありません。
学術的な文献や臨床の場面では「回避型」と書かれることが多く、当院の解説も回避型で統一しています。「回避性」で調べてこのページにたどり着いた方も、そのままお読みいただいて構いません。より詳しい特徴は回避型とは?特徴・恋愛パターン・改善法で解説しています。
前提:大人の「愛着障害」は診断名ではありません
先にお伝えしておきたいことがあります。大人について語られる「愛着障害」は、正式な診断名ではありません。
診断基準に位置づけられているのは、主に子どもを対象とした反応性アタッチメント症や脱抑制型対人交流症です。一方、大人の「回避型愛着障害」「不安型愛着障害」として語られているものは、愛着スタイル(人との距離の取り方の傾向)を説明するための考え方であって、病名ではありません。
これは「気にしなくてよい」という意味ではありません。診断がつかないから困っていない、ということにはならないからです。ただ、病気を疑って調べているのか、自分の傾向を知りたくて調べているのかで、読むべきものは変わってきます。
「回避性パーソナリティ障害」とは別のものです
いちばん混同されやすいのがここです。名前が似ているうえ、どちらも「人を避ける」という言葉で説明されるため、同じものだと思われがちです。
ですが、避けている理由がまったく違います。
| 回避性/回避型の愛着スタイル | 回避性パーソナリティ障害 | |
|---|---|---|
| 位置づけ | 診断名ではなく、関係の取り方の傾向 | 診断として扱われるもの |
| 人と関わりたい気持ち | 強くない。一人のほうが楽 | ある。関わりたいのに近づけない |
| 避ける理由 | 近づかれること自体が負担 | 拒絶や批判をされるのが怖い |
| 自分への評価 | 低いとは限らない | 「自分は劣っている」という感覚が強い |
| 感情の扱い | 感じにくい・表に出さない | 強く感じているが押し隠す |

ここが重要なのですが、回避性パーソナリティ障害の場合、人と関わりたい気持ちはあります。関わりたいのに、否定されるのが怖くて近づけない。避けているのは結果であって、一人が好きなわけではありません。
一方、回避的な愛着傾向がある方は、近づかれること自体を負担に感じます。踏み込まれると息苦しくなり、距離が空くとほっとする。この違いは、実際にお話をうかがうとかなりはっきり分かれます。
パーソナリティ障害と愛着の関係については自己愛性パーソナリティ障害の記事でも触れています。
回避的な愛着傾向にみられやすいこと
- 困っていても人に頼らず、自分で処理しようとする
- 悩みを打ち明けるより、話題を変えるほうが自然に感じる
- 親しくなると、相手からの連絡が重く感じられる
- 感情について聞かれると、言葉が出てこない
- 一人の時間が確保できないと消耗する
- 人間関係が切れても、思ったより平気なことがある
- 相手に踏み込まれると、理由なく距離を取りたくなる
- 親身にされると、かえって落ち着かない
こうした特徴は、冷たさや思いやりのなさとは別のものです。近づき方の設定が違うだけで、相手を大切に思っていないわけではありません。
セルフチェック
ここ半年ほどを振り返って、当てはまるものを数えてみてください。これは診断ではなく、傾向を整理するための目安です。
- つらいときほど、人に会いたくなくなる
- 「大丈夫?」と聞かれると、反射的に「大丈夫」と答えてしまう
- 恋人や家族との距離が縮まると、息苦しさを感じる
- 自分の弱みを見せた記憶がほとんどない
- 相談されるのは平気だが、相談するのは苦手
- 連絡がしばらく途絶えても、こちらからは動かない
- 感情を聞かれても、うまく言葉にできない
- 一人になれる場所があると、それだけで安心する
3つ以上当てはまり、それによって生活や関係に支障が出ているなら、一度整理してみる価値があります。2つ以下なら、無理に当てはめる必要はありません。
4つのタイプのどれに近いかを確認したい方は愛着スタイル診断(12問)をお試しください。
なぜそうなるのか
回避的な愛着傾向は、生まれつきの性格というより、育ってきた環境のなかで身につけた対処だと考えられています。
たとえば、困ったときに頼っても応えてもらえない経験が続くと、人は「求めない」という方法を選ぶようになります。求めなければ、応えてもらえなかったときの落胆も起きません。当時としては、それがいちばん安全なやり方だったとも言えます。
感情を表に出さないことも同じです。感情を見せると事態が悪くなる環境では、感じないようにしておくほうが消耗しません。いまうまく言葉にできないのは、能力の問題ではなく、そうしないほうがよかった時期が長かったからである場合があります。
つまりこれは欠陥ではなく、その環境を生き延びるために身につけた工夫です。困るのは、環境が変わったあとも同じやり方が続いてしまうときだけです。
恋愛・人間関係での現れ方
関係が浅いうちは問題になりにくく、距離が縮まった段階でつまずきやすいのが特徴です。
- 交際が始まって落ち着いた頃から、急に気持ちが冷めたように感じる
- 相手が求めてくるほど、応えたい気持ちが薄れていく
- けんかになると、話し合うより黙って離れたくなる
- 別れたあとのほうが、相手を大切に思えることがある
- 職場では良好なのに、深い付き合いになると続かない
男女による現れ方の違いは回避型愛着障害の男性の特徴と回避型愛着障害の女性の特徴で詳しく扱っています。また、近づきたい気持ちと怖さの両方が強く出る場合は恐れ回避型に近いことがあります。

心療内科でできること
最初にお伝えしておくと、当院は「愛着スタイルそのものを治す」という考え方はとっていません。傾向は病気ではないからです。
扱うのは、その傾向によっていま実際に困っていることのほうです。
- 眠れない、気分が落ち込む、不安が強いといった症状の評価と治療
- 人との距離の取り方を、責めずに一緒に見直していく心理療法
- 過去の経験が現在の反応にどうつながっているかの整理
- 必要な場合のみの薬物療法。薬だけに頼る形はとりません
- 医師と心理セラピストが連携し、診察とカウンセリングを組み合わせる
傾向そのものは変わらなくても、使い方は選べるようになります。距離を取るという選択肢を持ったまま、必要なときだけ人に頼れるようになる——そのくらいを目標にすると、無理がありません。
安定した関係の取り方については安定型愛着スタイル、対になる傾向については不安型愛着障害もご覧ください。
受診の目安
- 眠れない、食欲が落ちるなど、身体の症状が続いている
- 人を避けているうちに、生活の範囲が狭くなってきた
- 親しくなるたびに関係が壊れ、そのことで自分を責めている
- パートナーや家族との関係で、繰り返し同じ行き詰まり方をする
- 「自分はおかしいのではないか」と考える時間が増えた
どれかひとつでも思い当たれば、相談していただいて構いません。診断がつくかどうかを確かめるためでなく、困っていることを整理するために来ていただいて大丈夫です。
よくあるご相談例
外来では、次のようなご相談をよくお聞きします。特定の方のお話ではなく、一般的に多い訴えとしてご紹介します。
- 「相手のことは好きなのに、距離が近づくと気持ちが引いてしまう」
- 「つらいときほど連絡を絶ってしまい、あとで関係が壊れている」
- 「感情を聞かれても、本当に何も浮かばない」
- 「一人が楽なだけなのか、何か問題があるのか分からない」
共通しているのは、本人が自分の反応に戸惑っているという点です。相手を傷つけたいと思っている方は、ほとんどいません。
よくある質問
Q. 「回避性」と「回避型」、どちらで調べればよいですか。
どちらでも同じ内容にたどり着きます。臨床や文献では「回避型」が使われることが多いので、より詳しい情報を探すときは「回避型」で調べると見つかりやすくなります。
Q. 「会費制愛着障害」と検索してこのページに来ました。
読みが同じため、入力の際に別の漢字が選ばれることがあります。内容は「回避性愛着障害」と同じですので、そのままお読みいただいて問題ありません。
Q. 回避性パーソナリティ障害かどうか、自分で判断できますか。
いいえ。自己判断は難しく、またその必要もありません。分かれ目は「人と関わりたい気持ちがあるかどうか」ですが、これは本人にも分かりにくいことがあります。困っている内容をお話しいただければ、そこから一緒に整理します。
Q. 親の育て方のせいなのでしょうか。
そう単純ではありません。持って生まれた気質、家庭以外の環境、その後の関係など、複数の要因が関わると考えられています。原因を特定して誰かを責めることは、回復にはあまり役立ちません。いま何が起きていて、どうすれば楽になるかのほうが実際的です。
参考文献
医師からのメッセージ
人と距離を取ってしまう自分を、「冷たい」「愛情がない」と責めてこられた方は少なくありません。けれど外来でお話をうかがっていると、そう感じている方ほど相手のことをよく考えていらっしゃると感じます。
距離を取るという方法は、かつてご自身を守るために必要だったものです。それ自体を否定する必要はありません。ただ、いまの環境ではもう使わなくてよい場面が増えているかもしれない——そこを一緒に見ていくだけでも、行き詰まり方は変わってきます。
呼び方が「回避性」でも「回避型」でも構いません。困っていると感じた時点で、ご相談いただいて大丈夫です。
この記事の監修
赤坂心療内科クリニック 院長
宮本 せら紀(みやもと せらき)
医学博士・心療内科専門医・認定内科医・日本医師会認定産業医
日本大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院にて臨床研修。東京大学大学院にて医学博士号取得(ストレス防御・心身医学)。日本心身医学会・日本心療内科学会ほか所属。

