承認欲求が強くて苦しいのはなぜ?満たされない原因と、振り回されないための付き合い方|心療内科医が解説

承認欲求とは、「人から認められたい」「価値ある存在だと思われたい」という、誰もが持っている自然な気持ちです。ただ、その気持ちが強くなりすぎて、人の反応ひとつで一日の気分が決まってしまうようになると、生きづらさにつながることがあります。

SNSの「いいね」の数が気になって何度も見てしまう、褒められないと不安になる、嫌われるのが怖くて断れない——そんな自分に疲れていませんか。この記事では、承認欲求が強くて苦しくなる原因と、振り回されないための付き合い方を、心療内科医の視点で整理します。

この記事の要点

  • 承認欲求は、人間なら誰にでもある自然な欲求です。持っていること自体は悪いことではありません
  • 苦しくなるのは、承認欲求が「他人からの評価」だけで満たされる状態になっているときです。背景には、自己肯定感の低さや、育ってきた環境が関係していることがあります
  • 自分で自分を認める力を少しずつ育てることで、人の反応に振り回されにくくなっていきます

承認欲求は、誰にでもある自然な気持ち

心理学者のマズローは、人の欲求を段階的に整理し、その中に「認められたい」という欲求を位置づけました。そこでは、承認には「他人から認められること」と「自分で自分を認めること」の2つの面があると考えられています。

人から認められてうれしいと感じるのは、ごく自然なことです。その気持ちが、頑張る力や、人とつながる力にもなっています。問題になるのは、承認欲求そのものではなく、「他人からの承認」がなければ自分の価値を感じられない状態になっているときです。

承認欲求が強すぎて苦しくなっているサイン

最近の自分を振り返って、当てはまるものを数えてみてください。診断ではなく、今の状態を知るための目安です。

  • SNSに投稿したあと、反応が気になって何度も確認してしまう
  • 「いいね」やコメントが少ないと、気分が大きく落ち込む
  • 褒められないと、自分には価値がないと感じる
  • 嫌われるのが怖くて、頼まれごとを断れない
  • 人と比べて、自分が劣っていると感じることが多い
  • 本音より、相手に喜ばれそうなことを言ってしまう
  • 人の機嫌や反応ばかり気にして、どっと疲れる
  • 認められるために頑張りすぎて、休むことができない
  • 誰かが褒められていると、焦りやモヤモヤを感じる

いくつか当てはまるなら、承認欲求に少し振り回されているのかもしれません。どれも当てはまらない、あるいは1〜2つ程度なら、自然な範囲の気持ちと考えてよいでしょう。

承認欲求が強くなる原因

承認欲求の強さには、いくつかの背景が重なっていることが多いと考えられています。ここで知っておいてほしいのは、承認欲求が強いのは、あなたの性格が悪いからではないということです。

自分で自分を認める力が育ちにくかった

「自分はこのままで大丈夫」と感じる力、いわゆる自己肯定感が低いと、その不足を他人からの評価で埋めようとして、承認欲求が強くなりやすいと考えられています。

育ってきた環境

子どもの頃に、成績や「いい子」であることでしか認めてもらえなかった経験があると、「何かを達成しなければ愛されない」という感覚を持ちやすくなることがあります。それは、その環境の中で大切にされるために身につけた、当時としては精いっぱいの工夫だったとも言えます。こうした育ちの影響については、愛着障害の記事でも詳しく解説しています。

SNSの仕組み

SNSでは、反応が数字としてはっきり目に見えます。いつ、どれだけの反応が来るか分からない仕組みは、つい何度も確認したくなる気持ちを強めます。

完璧主義やまじめさ

「人の期待に完全に応えなければ」という完璧主義の傾向があると、周りの評価に敏感になりやすくなります。

「他人からの承認」と「自分で自分を認める」の違い

他人からの承認自分で自分を認める
よりどころ人の評価、反応、数字自分の気持ち、自分なりの基準
安定性相手しだいで、すぐに揺らぐ少しずつ育てれば、揺らぎにくい
満たされ方一時的に満たされても、すぐにまた欲しくなる積み重なっていく
こんな言葉「褒めてもらえたから、今日はいい日」「今日は自分なりに頑張れた」

他人からの承認が悪いわけではありません。大切なのは、両方のバランスです。自分で自分を認める力が育つほど、人からの評価に一喜一憂しにくくなっていきます。

承認欲求に振り回されないための付き合い方

承認欲求は、なくすものではなく、上手に付き合っていくものです。できそうなものから一つ試してみてください。

一日の終わりに、自分で自分をねぎらう

寝る前に、「今日できたこと」を一つだけ書き出してみます。「朝起きられた」「メールを1通返せた」のような小さなことで十分です。人に褒められなくても、自分で認める練習になります。

SNSを見る時間を区切る

投稿したあとに何度も反応を確認してしまうなら、「確認は夜に一度だけ」と決めたり、通知を切ったりしてみてください。

「嫌われたくない」から引き受けたことに気づく

頼まれごとを引き受けるとき、「本当はどうしたいか」を一度だけ自分に聞いてみます。すぐに断れなくても、気づくことが最初の一歩です。人の顔色をうかがいすぎて疲れてしまう方は、空気を読みすぎて疲れる人へもあわせてご覧ください。

比べる相手を「過去の自分」にする

人と比べると、いつまでも足りない気持ちが残ります。比べるなら、半年前や一年前の自分と比べてみてください。

あなたをそのまま受け止めてくれる人との時間を増やす

何かを達成しなくても一緒にいてくれる人との時間は、「このままの自分でいい」という感覚を育ててくれます。反対に、あなたを試したり比べたりする関係からは、少し距離を置くことも大切です。フレネミーのような関係に心当たりがある方は、そちらの記事も参考にしてください。

人の評価に左右されない心の土台づくりについては、他人の評価に振り回されないために。自分の中に安全基地を作るヒントでも解説しています。

こんなときは相談を

承認欲求の悩みの背景に、心の不調が隠れていることもあります。次のような状態が続いている場合は、一人で抱え込まずに相談を考えてみてください。

  • 人の反応が気になって、眠れない日が続いている
  • 褒められないと「自分には価値がない」と強く落ち込む
  • 人付き合いで疲れ果て、仕事や生活に支障が出ている
  • 自分を責める気持ちが強く、なかなか抜け出せない
  • 気分の落ち込みが2週間以上続いている

当院では、医師と心理セラピストが連携し、カウンセリングを通して、自分を認める力を少しずつ育てていくお手伝いをしています。

よくあるご相談例

外来では、次のようなご相談をよくお聞きします。

  • SNSの反応が気になって、投稿したあとは何も手につかない
  • 職場で認められたくて頑張りすぎ、気づいたら疲れ果てていた
  • 人に嫌われるのが怖くて、いつも周りに合わせてしまう
  • 褒められても「本当は違う」と素直に受け取れない

どのご相談でも、承認欲求を無理になくそうとするのではなく、その背景にある不安や生きづらさを整理しながら、無理のない付き合い方を一緒に考えます。感じ方や変化のペースには個人差があります。

よくある質問

承認欲求が強いのは、悪いことですか?

いいえ、悪いことではありません。認められたい気持ちは誰にでもあり、頑張る力にもなります。苦しさを感じるほど振り回されているときに、付き合い方を見直せば十分です。

承認欲求をなくすことはできますか?

なくす必要はありません。人から認められる喜びは大切にしながら、自分で自分を認める力を育てていくことで、振り回されにくくなっていきます。

「承認欲求モンスター」と言われました。病気でしょうか?

ネット上で使われる俗語で、病名ではありません。ただ、承認を求める気持ちが強すぎて人間関係がうまくいかない、自分でも苦しいと感じる場合は、その背景にある不安や生きづらさについて相談してみてもよいでしょう。

承認欲求の悩みで、心療内科に行ってもいいですか?

はい、構いません。人の評価が気になって眠れない、気分が落ち込むといった状態があるなら、十分に相談の対象です。

参考文献

医師からのメッセージ

「人に認められないと、自分には価値がない」——そう感じて、ずっと頑張り続けてきたのかもしれません。その頑張りは、これまでのあなたを支えてきた大切な力でもあります。

ただ、人の反応だけで自分の価値を決める毎日は、とても疲れるものです。あなたの価値は、誰かの「いいね」の数では決まりません。一人で抱えきれないと感じたら、迷った時点でご相談ください。

この記事の監修

赤坂心療内科クリニック 院長
宮本 せら紀(みやもと せらき)
医学博士・心療内科専門医・認定内科医・日本医師会認定産業医

日本大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院にて臨床研修。東京大学大学院にて医学博士号取得(ストレス防御・心身医学)。日本心身医学会・日本心療内科学会ほか所属。

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