
「男性更年期障害(LOH症候群)」は、加齢に伴って男性ホルモン(テストステロン)が低下し、心身にさまざまな不調が現れる状態のことです。
以前は気にならなかった些細なことでイライラする、仕事への意欲が湧かない、以前ほど元気が出ないといった変化に心当たりがあるなら、それは「年のせい」だけでは片付けられないサインかもしれません。
この記事では、LOH症候群の特徴と、女性の更年期障害との違いを心療内科医の視点で整理します。
男性更年期障害(LOH症候群)とは?女性の更年期との違い
LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)は、加齢によって男性ホルモンのテストステロンが低下し、身体・精神・性機能の面にさまざまな症状が現れる状態です。日本泌尿器科学会などが作成した診療の手引きでも、その重要性が指摘されています。

| 項目 | 女性の更年期障害 | 男性更年期障害(LOH症候群) |
|---|---|---|
| 主な原因 | 卵巣機能の低下によるエストロゲンの急激な減少 | 加齢に伴うテストステロンの緩やかな低下 |
| 始まる時期 | 閉経前後(多くは45〜55歳頃)に比較的急に始まる | 明確な区切りがなく、40代以降に緩やかに進行する |
| 経過 | 数年程度で症状が落ち着くことが多い | 個人差が大きく、対応しないまま長引くことがある |
| 主な相談先 | 婦人科 | 泌尿器科・メンズヘルス外来(心の症状は心療内科と連携) |
女性の更年期に比べて、男性更年期は「いつからいつまで」という区切りがはっきりしないぶん、不調が長期化しやすく、周囲の理解も得にくいという難しさがあります。だからこそ、症状に気づいた時点で早めに相談先を知っておくことに意味があります。
セルフチェック:こんな変化はありませんか
最近2〜3か月ほどを振り返って、以下に当てはまるものがないか確認してみてください。診断ではなく、相談を考える一つの目安です。
- 以前は気にならなかったことに、イライラしたり不機嫌になったりしやすい
- 仕事や趣味への意欲が湧かず、何をするにも億劫に感じる
- 集中力が続かず、些細なミスが増えた
- 性欲が明らかに下がったと感じる
- 疲れやすく、休んでも疲労感が抜けない
- 汗をかきやすい、ほてりを感じるなど、以前と違う体の変化がある
- 眠りが浅くなった、または寝つきが悪くなった
- 「単なる疲れ」では説明がつかない不調が続いている
いくつか当てはまっても、それだけでLOH症候群と決まるわけではありません。ただ、こうした状態が数か月以上続いているなら、一人で抱え込まず、相談先の一つとして検討してみてください。
気づかれにくく、我慢されやすい理由
LOH症候群は「年齢のせい」「疲れているだけ」と見過ごされやすく、本人も周囲も不調のサインだと気づきにくいという特徴があります。
- パートナーや家族への態度がそっけなくなり、関係がぎくしゃくする
- 職場での些細な変化にも苛立ちやすくなり、周囲との摩擦が増える
- 以前は楽しめていた趣味や外出も、面倒に感じるようになる
- 「男性なのに弱音を吐けない」という思い込みから、相談が遅れがちになる
特に最後の点は見過ごされがちですが、体調の変化を我慢し続けることは、症状を長引かせる要因にもなります。
なぜ起こるのか
テストステロンは加齢とともに緩やかに低下していきますが、その速度や現れ方には個人差があります。低下を自覚しやすくする要因として、次のようなものが挙げられます。
- 慢性的な仕事のストレスやプレッシャー
- 睡眠不足や不規則な生活リズム
- 運動不足や過度の飲酒
- 責任の重い立場での緊張状態が長く続いていること
「気力がなくなったのは自分の甘えだ」と責める必要はなく、ホルモンバランスの変化という体の側面が関わっている可能性があります。
心療内科でできること・受診先の考え方

LOH症候群の診断や、ホルモン補充療法などの専門的な治療は、主に泌尿器科やメンズヘルスを専門とする外来が担っています。心療内科では、気分の落ち込みやイライラ、不眠といった心の症状について相談を受け、必要に応じて泌尿器科と連携しながらサポートすることができます。体の症状だけでなく気持ちのつらさもある場合は、心療内科もあわせて相談先の一つに入れてみてください。
- 気分の落ち込みやイライラについてのカウンセリング
- 睡眠や不安症状に対する治療
- うつ病など、他の心の不調との見極め
- 必要に応じた泌尿器科・メンズヘルス外来への紹介
今日からできるセルフケア
- 睡眠時間を、まず30分だけでも見直してみる
- 軽い運動を、無理のない範囲で生活に取り入れてみる
- 一人で抱え込まず、家族や信頼できる人に今の状態を話してみる
- お酒の量を、少しだけ減らす日を作ってみる
できなかった日があっても構いません。少しずつ生活の負荷を減らしていくことが、体調を整える助けになります。
受診の目安
- セルフチェックの項目に複数当てはまり、数か月以上続いている
- 気分の落ち込みや意欲の低下が、仕事や生活に影響している
- 体の症状(発汗・ほてり・性機能の変化など)も気になっている
よくあるご相談例
外来では、次のようなご相談をよくお聞きします。
- 「最近イライラしやすくなり、家族との関係もぎくしゃくしている」というご相談
- 「仕事への意欲が湧かず、単なる疲れとは違う気がする」というご相談
- 「体の症状も気になるが、何科に相談すればいいか分からなかった」というご相談
いずれも珍しいことではなく、年代を問わず多くの方が経験する悩みです。
よくある質問
Q. LOH症候群は病気ですか?
A. はい。加齢に伴うテストステロンの低下によって心身の症状が現れる状態として、泌尿器科領域で診療の手引きが作成されています。
Q. 何科を受診すればいいですか?
A. ホルモンの検査や治療は泌尿器科・メンズヘルス外来が中心となります。気分の落ち込みなど心の症状が気になる場合は、心療内科もあわせてご相談ください。
Q. 年齢的なものだから仕方ないのでしょうか?
A. 加齢による変化ではありますが、症状が生活に影響しているなら、我慢する必要はありません。相談することで対応の選択肢が見つかることがあります。
Q. うつ病との違いは何ですか?
A. 症状が似ている部分もありますが、LOH症候群はホルモンの変化が背景にあるのに対し、うつ病は気分や思考など心理的な症状が中心です。両方が関わっている場合もあり、見極めには専門的な問診が役立ちます。
参考文献
医師からのメッセージ
「年のせいだから仕方ない」と一人で抱え込んでいませんか。心と体の不調には、ホルモンの変化という体の側面が関わっていることもあります。
一人で我慢せず、迷った時点で相談していただいて構いません。必要であれば専門の医療機関とも連携しながら、今の状態を一緒に整理していきましょう。
この記事の監修
赤坂心療内科クリニック 院長
宮本 せら紀(みやもと せらき)
医学博士・心療内科専門医・認定内科医・日本医師会認定産業医
日本大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院にて臨床研修。東京大学大学院にて医学博士号取得(ストレス防御・心身医学)。日本心身医学会・日本心療内科学会ほか所属。

