いま強くつらい気持ちがある方へ。一人で抱えず、24時間つながる窓口があります。#いのちSOS(0120-061-338)、よりそいホットライン(0120-279-338)はいずれも無料です。

「自傷行為」は、つらい気持ちを外に出せないときに、自分の体を傷つけることで心の痛みをしのごうとする行動のことです。
「やめたい」と思いながら繰り返してしまい、そんな自分をさらに責めてしまう——そんな状態にいるなら、それは意志が弱いからではありません。
この記事では、自傷行為の背景にある心理と、相談できる場所について、心療内科医の視点で整理します。
自傷行為は「気を引くため」ではない
自傷行為は「かまってほしいだけ」「大げさ」と誤解されることがありますが、実際にはその多くが誰にも知られないように、一人のときに行われています。周囲の注意を引くためではなく、耐えがたい感情をなんとかやり過ごすための、その人なりの対処として起きていると考えられています。
感情が強すぎて処理しきれないとき、あるいは逆に何も感じられなくなっているとき、体の痛みが「今ここにいる」感覚を取り戻す手がかりになってしまうことがあります。つらさを言葉にする手段が見つからないまま、体で表現するしかなかった——そう捉えることもできます。
背景にあると考えられていること

自傷行為の背景には、いくつかの要因が重なっていることが多いと考えられています。
- 強い不安や怒り、悲しみなどの感情を、言葉にして外に出す方法が見つからない
- 感情の波が大きく、自分では抑えられないと感じる状態が続いている
- うつ状態や不安が強く、生きているつらさが慢性的に続いている
- 過去のつらい経験が、今も感情の揺れとして残っている
- 「助けて」と言うことが許されない環境で育ち、人に頼る方法が身についていない
いずれも「性格の問題」ではありません。安心して感情を預けられる相手がいなかったなかで、自分ひとりで痛みを処理する方法として身についてしまった側面があります。
こんな状態が続いていませんか
最近のご自身を振り返って、以下に当てはまるものがないか確認してみてください。診断ではなく、相談を考える一つの目安です。
- 感情が高ぶったとき、自分を傷つけたい衝動が起きることがある
- やめたいと思っているのに、気づくと繰り返してしまう
- 行為のあとに、強い罪悪感や自己嫌悪を感じる
- 誰にも気づかれないよう、隠すことに神経を使っている
- 「これ以外に落ち着く方法がわからない」と感じている
- 気分の落ち込みや不眠など、他の不調も重なっている
- 「消えてしまいたい」と感じることがある
当てはまる項目があっても、ご自身を責める必要はありません。「やめたい」と思った時点で、それはもう回復に向かう一歩です。

すぐに相談できる窓口
受診をためらう段階でも、匿名で話せる公的な窓口があります。いずれも無料です。
- #いのちSOS:0120-061-338(24時間・無料)
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(お住まいの自治体の相談窓口につながります)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(子ども向け)
電話が難しい場合は、厚生労働省「まもろうよ こころ」にSNSやチャットで相談できる窓口もまとめられています。
心療内科でできること
心療内科では、行為そのものを叱ったり、無理にやめさせようとしたりはしません。まずは背景にある感情やつらさを一緒に整理していくところから始めます。
- 背景にある状態の診断(うつ病、不安、感情調節の困難さなど)
- 感情との付き合い方を扱う心理療法(弁証法的行動療法・スキーマ療法など)
- 衝動が強いときの対処法を、一緒に具体的に用意しておく
- 必要に応じた薬物療法
感情の波の大きさが背景にある場合、境界性パーソナリティ障害など、専門的な治療の対象となる状態が関わっていることもあります。
衝動が来たときに試せること
すぐにやめることを目標にしなくて構いません。まずは「傷つけずにやり過ごせた時間」を少しでも延ばすことから始めてみてください。
- 氷を握る、冷たい水で手を洗うなど、強い感覚で刺激を置き換えてみる
- 「10分だけ待つ」と決めて、時間を区切ってみる
- 今の気持ちを、うまく書けなくてもいいのでメモに殴り書きしてみる
- 誰かに「今しんどい」とだけ送ってみる(内容は説明しなくて構いません)
- 上の相談窓口に、話がまとまっていない状態のまま電話してみる
できなかった日があっても構いません。回復は「一度もしないこと」ではなく、頼れる先が少しずつ増えていくことだと考えています。
受診の目安
- 自分を傷つけたい衝動が、繰り返し起きている
- 気分の落ち込みや不眠など、他の不調も重なっている
- 「消えてしまいたい」という気持ちが浮かぶことがある
- 傷が深い、化膿しているなど、体の処置が必要な状態がある
特に「消えてしまいたい」という気持ちがある場合や、体の処置が必要な場合は、我慢せずすぐにご相談ください。夜間や緊急の場合は、上記の24時間窓口や救急外来もご利用いただけます。
よくあるご相談例
外来では、次のようなご相談をよくお聞きします。
- 「やめたいのにやめられず、そんな自分が情けない」というご相談
- 「家族に知られるのが怖くて、ずっと隠している」というご相談
- 「病院に行くほどではないのでは、と思って迷っている」というご相談
どれも珍しいご相談ではありません。「相談していいのか分からない」という段階でお越しになる方も多くいらっしゃいます。
よくある質問
Q. 傷を見せなければいけませんか?
A. いいえ。話したくないことは話さなくて構いませんし、無理に見せていただく必要もありません。ご自身のペースで大丈夫です。
Q. 家族に連絡されますか?
A. 成人の方であれば、ご本人の同意なく家族へ連絡することは原則ありません。ただし命に関わる危険があると判断される場合は、安全を優先した対応が必要になることがあります。
Q. 叱られませんか?
A. いいえ。行為そのものを責めることはありません。まずは背景にあるつらさを伺うところから始めます。
Q. 必ず薬を飲むことになりますか?
A. いいえ。カウンセリング中心で進めることも多く、薬を使う場合もご相談しながら決めていきます。
参考文献
医師からのメッセージ
「こんなことをしてしまう自分はおかしい」と責めていませんか。自傷行為は、あなたが弱いから起きているのではなく、言葉にできないほどのつらさを、たった一人で抱えてきた証拠でもあります。
やめられないまま相談していただいて構いません。「やめたい」と思えた今この時点で、どうぞ話に来てください。一緒に、他のしのぎ方を探していきましょう。
この記事の監修
赤坂心療内科クリニック 院長
宮本 せら紀(みやもと せらき)
医学博士・心療内科専門医・認定内科医・日本医師会認定産業医
日本大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院にて臨床研修。東京大学大学院にて医学博士号取得(ストレス防御・心身医学)。日本心身医学会・日本心療内科学会ほか所属。

