
突然、息が吸えなくなり、動悸や手足のしびれに襲われる――そんな過呼吸(過換気症候群)は、不安や緊張がきっかけで起こることが多い症状です。命に関わるものではありませんが、正しい対処を知っておくと、いざというとき落ち着いて対応できます。この記事では、過呼吸が起こる仕組みと、発作のときその場でできる対処法を心療内科医が解説します。
目次
過呼吸(過換気症候群)とは?
過呼吸(過換気症候群)とは、不安や緊張などをきっかけに呼吸が速く・浅くなりすぎ、血液中の二酸化炭素が減りすぎることで、動悸・息苦しさ・手足のしびれなどが起こる状態です。「息が吸えない」と感じますが、実際には吸いすぎている状態で、検査をしても体に異常は見つからないのが特徴です。多くは数分〜数十分でおさまります。
過呼吸のセルフチェック
次のような症状が、緊張や不安の場面で起こっていないか確認してみましょう(診断ではなく目安です)。
- 息が吸えない・息苦しいと感じ、呼吸が速くなる
- 動悸、胸の締めつけ感がある
- 手足や口のまわりがしびれる
- めまい、ふらつき、意識が遠のく感じ
- 「このまま死ぬのでは」という強い恐怖
- 検査では心臓や肺に異常が見つからない
なぜ過呼吸が起こるのか
過呼吸の多くは、強い不安・緊張・ストレスがきっかけで自律神経のバランスが崩れ、呼吸のコントロールが乱れることで起こると考えられています。一度発作を経験すると「また起きるのでは」という不安(予期不安)が生まれ、その不安がさらに発作を招く悪循環に陥ることもあります。
背景に不安症や自律神経の乱れが関わっていることも少なくありません。
発作のときその場でできる対処法

- 「命に関わらない」と思い出す:過呼吸自体で死ぬことはありません。「これはおさまる」と知っているだけで落ち着きやすくなります。
- ゆっくり吐くことを意識する:吸うより「吐く」を長く。口をすぼめて、4秒吸って8秒かけて吐くように、呼吸をゆっくりにします。
- 楽な姿勢をとる:座る・しゃがむなど、体の力を抜ける姿勢で呼吸を整えます。
- 安心できる声かけを受ける:そばの人に「大丈夫、ゆっくりで」と落ち着いて声をかけてもらうと鎮まりやすくなります。
※かつて行われた「紙袋を口に当てる方法(ペーパーバッグ法)」は、酸素不足を招く危険があるため現在は推奨されていません。
繰り返すときはパニック障害の可能性も
過呼吸を何度も繰り返す、発作への不安で外出や電車を避けるようになった――そんなときは、背景にパニック障害があることもあります。発作は適切な治療でコントロールできますので、繰り返すときは一度ご相談ください。
よくあるご相談例
外来では、「人前や電車で突然息が吸えなくなり、怖くて外出できなくなった」「救急で運ばれたが異常なしと言われ、原因が分からず不安」「また発作が起きたらと思うと落ち着かない」といったご相談をよくお聞きします。発作そのものより、”また起きるかも”という不安が生活を狭めてしまうことが多いのが特徴です。
よくある質問
Q. 過呼吸は放っておいても大丈夫ですか?
一回の発作は自然におさまりますが、繰り返す場合は背景に不安症やパニック障害があることがあり、治療でコントロールできます。頻繁に起こるときはご相談ください。
Q. 紙袋を口に当てる方法はやってよいですか?
現在は推奨されていません。酸素不足を招くおそれがあるため、腹式呼吸などゆっくり吐く呼吸で対処してください。
Q. 何科を受診すればいいですか?
検査で体に異常がなく、不安や緊張と関係して繰り返す場合は、心療内科・精神科が適しています。
参考文献
医師からのメッセージ
過呼吸は苦しく怖い症状ですが、命に関わるものではなく、適切な対処と治療で必ず落ち着かせられます。「また起きたら」という不安を一人で抱え込まず、どうか気軽にご相談ください。
この記事の監修
赤坂心療内科クリニック 院長
宮本 せら紀(みやもと せらき)
医学博士・心療内科専門医・認定内科医・日本医師会認定産業医
日本大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院にて臨床研修。東京大学大学院にて医学博士号取得(ストレス防御・心身医学)。日本心身医学会・日本心療内科学会ほか所属。

