
飲み会や忘年会に行きたくないと感じるのは、わがままでも、協調性がないからでもありません。年末の疲れ、気をつかい続ける負担、お酒の場の苦手さなど、行きたくない理由には、誰にでも起こりうるものが多いのです。
「誘われると断れない」「断ったら評価が下がるのでは」「当日が近づくと気が重くて眠れない」——そんな悩みを抱えながら、12月を迎えようとしている方もいるかもしれません。この記事では、飲み会がつらくなる理由と、角を立てない断り方、参加するときに楽になるコツ、そして「行きたくない」の奥に隠れているかもしれない心のサインを、心療内科医の視点で整理します。
この記事の要点
- 飲み会に行きたくないのは、疲れや気づかいの負担、お酒の場の苦手さなど、よくある理由によるもので、おかしなことではありません
- 断るときは「理由を短く、感謝を添えて」が基本です。全部参加するか、全部断るかの二択にしなくても大丈夫です
- 誘われるたびに動悸や吐き気が出る、何週間も前から眠れないといった場合は、社交不安など心の不調が隠れていることもあります
飲み会に行きたくないのは、おかしいこと?
いいえ、おかしなことではありません。2019年には「忘年会スルー」という言葉が話題になり、職場の飲み会への参加を見直す流れが広がりました。働き方や価値観が多様になった今、飲み会への参加は「当たり前」から「選べるもの」へと変わりつつあります。
それでも、行きたくない気持ちを抱えたまま、「行かない自分は付き合いが悪い」と責めてしまう人は少なくありません。行きたくない気持ちは、あなたの心や体が「今は休みたい」「負担が大きい」と伝えているサインと受け取ってみてください。
飲み会がつらくなる理由は、人それぞれ

一口に「行きたくない」と言っても、その理由はさまざまです。自分がどのタイプに近いかを知ると、対処のしかたも見えてきます。
| タイプ | よくある気持ち | 楽になるヒント |
|---|---|---|
| 疲れている | 年末で仕事も忙しく、夜まで人と過ごす体力が残っていない | 参加するなら時間を区切る。休息を優先する日をつくる |
| 気をつかいすぎてしまう | 上司へのお酌、会話の盛り上げ、場の空気ばかり気にして、終わるとぐったりする | 「全員を楽しませる係」をやめる。空気を読みすぎる疲れについて知る |
| 一人の時間が必要 | 大人数の場にいると消耗し、静かな時間で回復したい | 少人数の席や、早めの退出を選ぶ。繊細さん(HSP)の特徴に近いことも |
| お酒の場が苦手 | 飲めない、飲みたくない、酔った人の対応がつらい | ノンアルコールを最初から頼む。お酒を勧められたときの返し方を決めておく |
| 人前で食べる、話すのが怖い | 人前で食べることや、注目されることに強い緊張がある | 会食恐怖症や社交不安が関係していることも |
角を立てない断り方
断るときは、「理由は短く、感謝を添えて、次につなげる」のが基本です。長々と言い訳をするほど、かえって気まずくなりやすいものです。
体調や予定を理由にする
- 「お誘いありがとうございます。その日は先約があって、今回は失礼させてください」
- 「最近少し体調を崩しがちなので、今回は見送らせてください。また落ち着いたらぜひ」
一部だけ参加する
- 「一次会だけ参加させてください」
- 「途中からになりますが、少しだけ顔を出します」
全部参加するか、全部断るかの二択にしなくても大丈夫です。顔を出すだけでも、気持ちは十分に伝わります。
お酒をすすめられたとき
- 「今日はお酒を控えているので、ウーロン茶でお付き合いします」
- 「明日早いので、ここからはソフトドリンクにします」
最初の一杯からノンアルコールを頼んでおくと、その後もすすめられにくくなります。
参加するときに、少し楽になるコツ

- 帰る時間を先に決めておく——「9時には失礼します」と最初に伝えておくと、気持ちに余裕が生まれます
- 話しやすい人の近くに座る——端の席や出入り口に近い席は、途中で抜けやすくなります
- 聞き役に回ってもいい——自分から盛り上げようとしなくても、うなずいて聞いているだけで十分です
- 翌日の予定を軽くしておく——疲れが残っても回復できる余白をつくっておきます
上司・先輩として気をつけたいこと
誘う側の立場の方にも、知っておいていただきたいことがあります。参加を強く求めたり、お酒を無理にすすめたりすることは、相手にとって大きな負担になり、ハラスメントと受け取られることもあります。
- 参加は自由であることを、はっきり伝える
- 不参加の人を責めたり、話題にしたりしない
- お酒を飲まない人も楽しめる店や時間帯を選ぶ
- 二次会以降は、特に無理に誘わない
「来なくても大丈夫」という一言があるだけで、行きたくない人も、行きたい人も、気持ちよく選べるようになります。
「行きたくない」の奥にある心のサイン
多くの場合、飲み会に行きたくない気持ちは自然なものです。ただし、次のような状態が続いている場合は、心の不調が隠れていることもあります。
- 誘われるたびに、動悸や吐き気、手の震えが出る
- 飲み会の何週間も前から、不安で眠れない
- 飲み会に限らず、人と会うこと全般がつらくなっている
- 好きだった友人との集まりも、楽しめなくなった
- 年末の疲れがたまり、朝起きるのもつらい状態が2週間以上続いている
人前での強い緊張が続く場合は、社交不安が関係していることがあります。また、何をしても楽しめない、疲れが抜けないといった状態は、うつ状態のサインのこともあります。年末年始は、帰省や親戚付き合いでも心が疲れやすい時期です。年末年始の憂鬱の記事もあわせて参考にしてください。
よくあるご相談例
外来では、次のようなご相談をよくお聞きします。
- 飲み会の席で気をつかいすぎて、翌日は何もできないほど疲れてしまう
- 人前で食事をすると緊張して、会食の予定があると数日前から憂うつになる
- 断ると評価が下がる気がして、毎回無理をして参加している
- 年末に向けて仕事も飲み会も増え、眠れない日が続いている
どのご相談でも、まずは今の心と体の状態を整理し、無理のない人付き合いのかたちを一緒に考えます。感じ方や回復のペースには個人差があります。
よくある質問
飲み会を断り続けると、職場で浮いてしまいませんか?
断り方や日ごろの関わり方によって、印象は大きく変わります。普段のあいさつや仕事でのやりとりを丁寧にしていれば、飲み会に参加しないことだけで評価が決まるわけではありません。
お酒が飲めないのに、何度もすすめられます
最初の一杯からノンアルコールを頼み、「今日は飲まないことにしています」と短く伝えるのが効果的です。それでも無理にすすめられる場合は、信頼できる上司や相談窓口に相談してください。
行きたくない気持ちが強すぎて、自分でも不安です
行きたくない気持ちが強く、誘われるだけで体調を崩す、何週間も前から眠れないといった状態があるなら、一度相談してみてください。社交不安など、治療で軽くなる不調が関係していることもあります。
こんなことで心療内科に行ってもいいのですか?
はい、構いません。人付き合いの負担で眠れない、気分が落ち込むといった状態は、十分に相談の対象です。「この程度で」と思う段階で相談していただいて大丈夫です。
参考文献
- 厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」
- 厚生労働省 ハラスメント対策の総合情報サイト「あかるい職場応援団」
- 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット」
医師からのメッセージ
「飲み会くらい、楽しく参加できないなんて」と、自分を責めていませんか。年末は、仕事の締めくくりと人付き合いが重なり、心も体も疲れやすい時期です。行きたくないと感じるのは、あなたが今、それだけ頑張っている証でもあります。
全部に参加しなくても、人とのつながりは保てます。それでも誘われるたびに体調を崩す、眠れない日が続くといった状態があるなら、一人で抱え込まずに、迷った時点でご相談ください。
この記事の監修
赤坂心療内科クリニック 院長
宮本 せら紀(みやもと せらき)
医学博士・心療内科専門医・認定内科医・日本医師会認定産業医
日本大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院にて臨床研修。東京大学大学院にて医学博士号取得(ストレス防御・心身医学)。日本心身医学会・日本心療内科学会ほか所属。

