
ギャンブルがやめられない状態は、意志の弱さではなく、「ギャンブル行動症(ギャンブル障害)」という治療の対象になる状態のことがあります。世界保健機関(WHO)の国際的な診断基準でも病気として位置づけられており、本人だけでなく、家族も相談することができます。
「今日こそ取り返す」と思って続けてしまう、借金を家族に隠している、やめようとしてもイライラして手が伸びる——そんな状態に心当たりがある方や、家族のギャンブルに悩んでいる方もいるかもしれません。この記事では、ギャンブル依存症のサインと、やめられなくなる仕組み、家族ができること、そして本人と家族の相談先を、心療内科医の視点で整理します。
この記事の要点
- ギャンブルがやめられない状態は、国際的な診断基準でも病気として扱われる「ギャンブル行動症」のことがあります。意志や性格の問題だけではありません
- 背景には、ストレスや気分の落ち込み、不安、孤独などが隠れていることが多く、それらへの手当ても回復の大切な一部です
- 家族が借金の肩代わりを続けると、かえって回復を遠ざけることがあります。本人だけでなく、家族も早めに相談してください
ギャンブル依存症とは
ギャンブル依存症とは、ギャンブルをする量や時間を自分でコントロールできなくなり、生活や人間関係、お金の面で深刻な問題が起きているのに、やめられない状態を指します。WHOの国際疾病分類(ICD-11)では「ギャンブル行動症」として、治療の対象となる病気に位置づけられています。
日本でも、ギャンブル等依存症対策基本法が施行され、相談や治療の体制づくりが進められています。パチンコやスロット、競馬などの公営競技に加えて、近年はスマートフォンで手軽にできるネット上のギャンブルが問題になっています。なお、海外のオンラインカジノも、日本国内から利用することは違法とされています。
ギャンブル依存症のセルフチェック
最近1年ほどを振り返って、当てはまるものを数えてみてください。診断ではなく、今の状態を知るための目安です。
- 以前よりも、多くのお金を賭けないと満足できなくなった
- やめよう、減らそうとすると、イライラしたり落ち着かなくなったりする
- やめようとして、何度も失敗している
- 気がつくと、ギャンブルのことばかり考えている
- 気分が落ち込んだときや、嫌なことがあったときにギャンブルをしたくなる
- 負けたお金を取り返そうとして、またギャンブルをしてしまう
- ギャンブルにかけた時間やお金について、家族や周りの人にうそをつく
- ギャンブルのために、仕事や学業、大切な人との関係がおろそかになった
- ギャンブルのための借金を、家族や周りの人に肩代わりしてもらったことがある
いくつか当てはまり、特に「取り返そうとしてしまう」「うそをつく」「借金」に心当たりがある場合は、一人で抱えずに相談することをおすすめします。
やめられなくなる仕組み

ギャンブルでは、勝つか負けるか分からない状態が続きます。この「いつ当たるか分からない」という仕組みは、人の期待を強く刺激し、行動をくり返させやすいことが心理学で知られています。たまに大きく勝った経験が強く記憶に残り、「次こそは」という気持ちを生みます。
さらに、負けを取り返そうとして賭け続けることで、借金が増え、その焦りがまたギャンブルに向かわせる——という悪循環に陥りやすくなります。やめられないのは意志が弱いからではなく、こうした仕組みにからめとられている状態と考えることができます。スマートフォンやゲームで似た仕組みが働く例としては、ゲーム行動症や買い物依存もあります。
背景にある心の問題
ギャンブルにのめり込む背景には、次のような心の状態が隠れていることが少なくありません。
| 背景にあること | よくある気持ち |
|---|---|
| 仕事や家庭のストレス | 「ギャンブルをしている間だけ、嫌なことを忘れられる」 |
| 気分の落ち込み、うつ | 「何をしても楽しくない。勝ったときだけ気分が上がる」 |
| 不安や焦り | 「借金を早く返さなければ」と、さらに賭けてしまう |
| 孤独や退屈 | 「ほかにすることがない」「居場所がない」 |
| もともとの特性 | 衝動を抑えにくい、刺激を求めやすい |
こうした背景がある場合、ギャンブルを我慢するだけでは、ほかの方法でつらさを紛らわせようとしてしまうことがあります。ギャンブルをやめることと同時に、背景にあるつらさに手当てをすることが大切です。
家族ができること、気をつけたいこと

家族のギャンブルや借金に気づいたとき、怒りや不安、裏切られた気持ちでいっぱいになるのは当然のことです。そのうえで、回復に向けて家族ができることがあります。
借金の肩代わりを続けない
家族が借金を返済してしまうと、本人はギャンブルの結果に向き合わずに済み、かえって問題が長引くことがあります。つらい選択ですが、借金の肩代わりは慎重に考え、まず専門家に相談してください。借金の整理については、法テラス(日本司法支援センター)などの法律相談の窓口も利用できます。
責め続けるのではなく、行動を変える話をする
責めたり、なじったりし続けると、本人はさらにうそをつくようになり、相談から遠ざかってしまうことがあります。「あなたを心配している」「一緒に相談に行こう」と、気持ちと具体的な行動を伝えます。
家族自身も相談する
本人が相談を嫌がる場合でも、家族だけで相談できる窓口があります。家族が先に相談の仕方を知ることで、本人が治療につながりやすくなることもあります。受診を嫌がる家族への声のかけ方は、家族が心療内科の受診を嫌がるときも参考にしてください。
治療と相談先
心療内科でできること
心療内科では、ギャンブルの問題とあわせて、その背景にある気分の落ち込みや不安、眠れなさなどの治療を行います。カウンセリングでは、ギャンブルをしたくなるきっかけに気づき、それに対処する方法を一緒に身につけていきます。状態によっては、依存症を専門とする医療機関や回復のためのプログラムにつなぐこともあります。
相談先
- 精神保健福祉センター——各都道府県にあり、ギャンブルの問題について、本人や家族からの相談を受け付けています
- 自助グループ——同じ問題を抱える本人や家族が集まり、経験を分かち合いながら回復を目指す場です
- 法テラス(日本司法支援センター)——借金の整理など、お金の問題について相談できます
- 今すぐ危険がある場合や、「消えてしまいたい」と感じるとき——迷わず119番、または厚生労働省「まもろうよ こころ」の相談窓口へ
よくあるご相談例
外来では、次のようなご相談をよくお聞きします。
- やめようと決めても、給料日になるとまたパチンコに行ってしまう
- 仕事のストレスが強く、ネットのギャンブルで気を紛らわせているうちに借金が増えた
- 夫の借金が発覚し、どう向き合えばいいか分からない
- ギャンブルをやめたら、何をしても楽しくなくなった
どのご相談でも、まずはご本人やご家族の心の状態を整理し、ギャンブルの問題と背景にあるつらさの両方に、無理のない形で取り組んでいきます。感じ方や回復のペースには個人差があります。
よくある質問
ギャンブル依存症は、本当に病気なのですか?
はい。WHOの国際疾病分類でも「ギャンブル行動症」として位置づけられており、治療や支援によって回復を目指せる状態です。意志や性格の問題だけで片づけないことが大切です。
自分の意志だけでやめられますか?
一人でやめようとして、何度もうまくいかないことは珍しくありません。専門家や自助グループの力を借りることで、続けやすくなります。
家族だけで相談に行ってもいいですか?
はい、構いません。精神保健福祉センターなどでは、家族だけの相談も受け付けています。家族自身の心の負担が大きい場合は、心療内科で家族自身の不調について相談することもできます。
ギャンブルをやめたら、気分が落ち込んでしまいました
ギャンブルをやめたあとに、気分の落ち込みや退屈さが強く出ることがあります。それは回復の途中で起こりうることです。つらい状態が続く場合は、遠慮なくご相談ください。
参考文献
医師からのメッセージ
「次こそは取り返せる」「今度こそやめる」——そうくり返すうちに、誰にも言えない秘密や借金が増えていくのは、本当に苦しいことです。結果として、家庭環境や社会適応にも影響が出てしまうことが多いのです。
ギャンブルの問題は、一人や家族だけで抱えるには重すぎることがあります。本人でも、ご家族でも構いません。迷った時点で、ご相談ください。
この記事の監修
赤坂心療内科クリニック 院長
宮本 せら紀(みやもと せらき)
医学博士・心療内科専門医・認定内科医・日本医師会認定産業医
日本大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院にて臨床研修。東京大学大学院にて医学博士号取得(ストレス防御・心身医学)。日本心身医学会・日本心療内科学会ほか所属。

