緊張型頭痛は日本人の5人に1人|最も多い頭痛の原因と治し方を心療内科医が解説

その頭痛、我慢していませんか

夕方になると頭が重くなる。後頭部から首すじにかけて、何かで締めつけられるような鈍い痛みがじわじわと続く。寝込むほどではないけれど、仕事や家事への集中力が落ちて、気づけばため息ばかりついている。こうした症状に心当たりのある方は、決して少なくありません。

このタイプの頭痛は緊張型頭痛と呼ばれ、日本人が抱える頭痛の中で最も頻度の高いものです。あまりに身近であるがゆえに病気として認識されにくく、市販の鎮痛薬でやり過ごしながら、何年も誰にも相談できないまま過ごしている方が大勢いらっしゃいます。

この記事では、心療内科医の立場から、緊張型頭痛の有病率と症状、原因、片頭痛との見分け方、注意したい薬物乱用頭痛、そして治療とセルフケアの方法まで、診察室で患者様にお話ししている内容をできる限り分かりやすくまとめました。

緊張型頭痛の有病率|日本人に最も多い頭痛

日本で行われた大規模な疫学調査では、緊張型頭痛の有病率は約22パーセントと報告されています。これは日本人のおよそ5人に1人にあたり、人数に換算すると2000万人を超える方が緊張型頭痛を経験している計算になります。片頭痛の有病率が約8パーセント、群発頭痛が約0.1パーセントとされていることと比べても、緊張型頭痛が圧倒的に多いことが分かります。
※この有病率は、日本頭痛学会の頭痛の診療ガイドラインおよび国内疫学調査(Sakai F, et al. Cephalalgia 1997)に基づくものです。

出典:日本頭痛学会 頭痛の診療ガイドライン2021を基に当院作成

年代別に見ると、働き盛りの20代から50代に多く、デスクワーク中心の方や、責任ある立場でストレスを抱えやすい方に目立ちます。男女差は片頭痛ほど大きくありませんが、女性にやや多い傾向があります。

そして見逃せないのが、これほど多い頭痛であるにもかかわらず、医療機関を受診する方はごく一部にとどまるという事実です。命に関わらないから、皆も同じだろうから、と我慢を重ねてしまう。しかし、慢性的な頭痛は集中力や睡眠の質、さらには気分の落ち込みにまでつながり、生活の質を確実に削っていきます。頭痛のせいでイライラして家族にきつく当たってしまった、と診察室で涙ぐまれる方も珍しくありません。

緊張型頭痛の症状|こんなサインはありませんか

緊張型頭痛には、いくつかの特徴的なサインがあります。

頭全体や後頭部が、ヘルメットやハチマキで締めつけられるように痛む。痛みの強さは軽度から中等度で、寝込むほどではない。肩こりや首のこり、目の疲れを伴うことが多い。午後から夕方、長時間のパソコン作業の後に悪化しやすい。体を動かしても痛みはひどくならず、むしろ入浴や軽い運動で楽になることがある。

痛みが月に数回程度であれば反復性緊張型頭痛、月に15日以上、3か月を超えて続く場合は慢性緊張型頭痛と分類されます。慢性化すると痛みのない日の方が少なくなり、頭痛があるのが当たり前という感覚に陥ってしまうため、早めの対応が大切です。

片頭痛との見分け方|対処法が正反対になることも

緊張型頭痛とよく混同されるのが片頭痛です。両者は対処法が異なり、場合によっては正反対になるため、見分けることがとても重要です。

項目緊張型頭痛片頭痛
国内有病率約22パーセント約8パーセント
痛みの性質締めつけられる鈍い痛みズキズキと脈打つ痛み
痛む場所頭全体、後頭部、首すじ頭の片側が多い
体を動かすと変わらない、または楽になる悪化する
吐き気や嘔吐ほとんどない伴うことが多い
光や音への過敏目立たない強く出やすい
入浴やマッサージ楽になることが多い悪化することがある

例えば、緊張型頭痛では温めて血流を良くすることが有効ですが、片頭痛の発作中に入浴すると血管が拡張してかえって痛みが強まることがあります。また、両方のタイプを併せ持つ混合型の方も少なくなく、自己判断が難しいケースでは医師による問診が役立ちます。

緊張型頭痛の原因|身体のこりと心のこり

緊張型頭痛の原因は、大きく二つに分けられます。

一つ目は身体的ストレスです。長時間のデスクワークやスマートフォンの使用による前かがみ姿勢、いわゆるストレートネック、合わない枕、運動不足、眼精疲労などにより、首や肩、頭の周囲の筋肉が持続的に緊張します。筋肉が硬くなると血流が滞り、疲労物質がたまって痛みの信号が発生します。

二つ目は精神的ストレスです。仕事のプレッシャー、人間関係の悩み、将来への不安などが続くと、自律神経のバランスが乱れ、痛みを抑える脳内の調整機能が低下します。その結果、本来であれば気にならない程度の筋肉の緊張でも、痛みとして強く感じやすくなるのです。

心療内科の外来では、この二つが複雑に絡み合っているケースが非常に多く見られます。マッサージや整体で身体のこりをほぐしても数日で元に戻ってしまうという方は、心のこりが背景に隠れているのかもしれません。

放置のリスク|薬物乱用頭痛にご注意ください

緊張型頭痛そのものは命に関わる病気ではありません。しかし、市販の鎮痛薬を月に10日以上、何か月も飲み続けていると、薬物乱用頭痛と呼ばれる別の頭痛を引き起こすことがあります。これは、鎮痛薬の使いすぎによって脳が痛みに敏感になり、薬が切れるたびに頭痛が起こるという悪循環です。

頭痛薬を飲む回数が増えてきた、薬が効きにくくなってきたと感じる方は、すでにこの悪循環に入りかけている可能性があります。薬を急にやめるのもつらいため、医師と相談しながら計画的に整理していくことが回復への近道です。

体験談|40代女性、事務職Aさんの場合

*複数のケースを合わせたモデルケースとなります。

Aさんは、10年以上にわたり、ほぼ毎日続く頭の重さに悩まれていました。市販の鎮痛薬を月に20日以上服用しており、それでもすっきりしない状態でした。

詳しくお話を伺うと、頭痛が強くなるのは決まって繁忙期や、職場の人間関係に悩んでいる時期でした。脳神経外科で検査を受けても異常なしと言われ、ではこの痛みは何なのかと、行き場を失っていたそうです。

薬物乱用頭痛の可能性も考慮し、薬の整理と並行してカウンセリング(認知行動療法、リラクセーション、自律訓練法)を開始しました。ストレスを感じた瞬間に肩へぐっと力が入る癖や、休むことへの罪悪感に少しずつ気づき、手放していく中で、3か月ほどで鎮痛薬の使用は月数回まで減り、頭痛のない日が増えていきました。

Aさんは、頭痛の裏に自分の我慢が隠れていたと分かって、気持ちまで軽くなったと話してくださいました。検査で異常がないと言われた頭痛にこそ、心と身体の両面からのアプローチが力を発揮します。

よくある質問Q&A

Q. 緊張型頭痛は病院に行くほどのものですか。

A. 月に何度も頭痛がある、市販薬を月10日以上使っている、痛みで仕事や家事に支障が出ているなら、受診をおすすめします。鎮痛薬の使いすぎは薬物乱用頭痛を招き、かえって頭痛を慢性化させるため、早めのご相談が大切です。

Q. 何科を受診すればよいですか。

A. 突然の激しい頭痛や手足のしびれを伴う場合は、まず脳神経外科や脳神経内科で検査を受けてください。検査で異常がないのに頭痛が続く場合は、ストレスや緊張が関係していることが多く、心療内科が適しています。

Q. 心療内科ではどんな治療をしますか。

A. 痛みの性質や生活背景を問診したうえで、必要に応じてお薬を調整します。あわせて、ストレスとの付き合い方を見直すカウンセリング、リラクセーション法、姿勢や睡眠など生活習慣の指導を組み合わせ、薬だけに頼らない改善を目指します。

Q. カウンセリングで頭痛が良くなるのですか。

A. 緊張型頭痛は心理的ストレスと深く関わるため、考え方の癖や緊張のパターンに気づくことが、筋肉の緊張そのものを緩めることにつながります。実際に、カウンセリングを併用した方が薬のみの治療より経過が良いケースを多く経験しています。

Q. 自分でできる対策はありますか。

A. 1時間に一度は席を立って首や肩をゆっくり回す、湯船に浸かって温める、モニターの高さを目線に合わせる、睡眠時間を確保する、休日は意識的にデジタル機器から離れる、などが有効です。ただし、セルフケアで改善しない頭痛を一人で抱え込む必要はありません。

医師からのメッセージ

頭痛は外から見えないため、周囲に理解されにくく、つらさを一人で抱え込みやすい症状です。けれども、日本人に最も多いこの緊張型頭痛は、原因に合わせた治療とストレスケアによって、十分に改善が期待できる頭痛です。

たかが頭痛と我慢を重ねてきた時間は、あなたがそれだけ頑張ってきた証でもあります。その頑張りを少しだけ緩めるお手伝いを、私たちにさせてください。検査では異常がないと言われた頭痛、薬が手放せなくなってきた頭痛にお悩みの方は、どうぞお気軽に当院へご相談ください。あなたのペースに合わせて、一緒に回復への道筋を考えていきます。

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