チック症・トゥレット症とは?癖との違いと家族ができる対応

チック症は、自分の意思とは関係なく、まばたきや首振り、咳払いなどの動きや音が繰り返し出てしまう状態です。

「やめなさい」と言っても止まらない、注意するとかえって増える、家では出るのに学校では出ない——お子さんの様子にそうした特徴があるなら、それは癖でもわざとでもありません。

この記事では、チック症とトゥレット症の違い、家族ができる関わり方、大人になっても続く場合について心療内科医の視点で整理します。

チック症とは

チックは、突発的で素早く、繰り返し起こる動きや発声を指します。本人が意図して出しているわけではありません。

大きく2つに分かれます。

  • 運動チック:まばたき、目を強くつぶる、顔をしかめる、首を振る、肩をすくめる、口を歪める など
  • 音声チック:咳払い、鼻すすり、「あっ」などの短い声、喉を鳴らす など

多くは学童期に始まり、強くなったり弱くなったりを波のように繰り返します。数週間で目立たなくなることもあれば、時期を変えて別の種類のチックが出てくることもあります。

トゥレット症との違い

一過性のチック持続性チック症トゥレット症
種類運動または音声運動または音声のどちらか運動と音声の両方
続く期間1年未満1年以上1年以上
頻度子どもによく見られるやや少ないより少ない

トゥレット症は運動チックと音声チックの両方が1年以上続く場合を指します。多くのチックは一過性で自然に軽くなっていきますが、続く場合は対応を整えた方が生活しやすくなります。

癖・わざととの違い

周囲から最も誤解されるのがこの部分です。

癖・習慣チック
止められるか意識すれば止められる我慢しても、あとで強く出る
注意されたとき減ることが多い意識が向いて、かえって増えやすい
出方状況にあまり左右されない緊張・興奮・疲れで波がある
本人の感覚特に不快感はない出す前にムズムズした感じがあることも

ここが重要なのですが、チックは短時間なら我慢できることがあります。だからこそ「やればできる」と誤解されがちです。実際には、我慢した分が後でまとめて出るだけで、消えたわけではありません。学校では出ないのに家に帰ると激しくなるのは、この仕組みによるものと考えられています。

なぜ起こるのか

チックは育て方の失敗でも、しつけの問題でもありません。脳の運動を調節する仕組みの働き方が関係していると考えられており、体質的な要素が大きいことが知られています。

  • 生まれ持った体質的な要因が背景にある
  • 緊張・興奮・疲労・環境の変化で強く出やすくなる
  • 注目されることで意識が向き、さらに出やすくなる
  • 不安が強い時期に一時的に増えることがある

ストレスはチックの「原因」ではなく「強弱を左右する要因」です。ご家族が「自分の育て方のせいでは」と責める必要はありません。

家族ができる対応

関わり方の原則はひとつ、チックそのものに注目を向けないことです。

  • 指摘しない・注意しない:「また出てるよ」の一言が、意識を向けさせて増やします
  • 我慢させない:抑えた分は後で出ます。家では自由に出せる場所にしておく
  • 気づいても反応しない:見て見ぬふりをするくらいでちょうどよいです
  • 疲れと睡眠を整える:疲労時に強く出やすいため、生活リズムの安定が効きます
  • 予定を詰めすぎない:興奮が続く時期は波が大きくなりやすいです
  • きょうだいや祖父母にも共有する:家族の誰か一人が指摘すると台無しになります

波があるのが自然なので、増えた時期に何か原因を探して犯人探しをしないことも大切です。

学校との連携

学校生活で困りが出るのは、チックそのものよりも周囲の反応であることが多いです。

  • 担任に「わざとではない」「注意すると増える」ことを伝えておく
  • からかいが起きていないか、早めに把握してもらう
  • テストや発表など緊張場面で強く出た場合の配慮を相談する
  • 本人が席を外して落ち着ける場所を用意してもらう

からかいをきっかけに登校がつらくなることもあります。その場合は不登校・いじめの観点からも早めにご相談ください。

大人になっても続く場合

多くのチックは思春期を過ぎると軽くなっていきますが、成人期まで続く方もいます。

  • 会議中や電話中など、静かな場面で出ることを強く気にしてしまう
  • 出さないように緊張し続けることで、疲労が蓄積する
  • 人前を避けるようになり、行動範囲が狭まる
  • 「大人なのに」という自責が重なり、気分の落ち込みにつながる

大人の場合、チックそのものよりそれを隠そうとする緊張の方が生活の負担になっていることがよくあります。また、強迫性障害抜毛症・皮膚むしり症といった、繰り返しの行動を伴う状態が重なることもあります。

心療内科でできること

  • チックの種類と経過の整理(対応方針を決めるための評価)
  • 生活への影響の確認と、環境調整の相談
  • チックが出そうな感覚に別の動作で応じる行動療法の検討
  • 不安や落ち込みが重なっている場合の対応
  • 生活に支障が大きい場合の薬物療法の相談

チックがあること自体は、必ずしも治療が必要という意味ではありません。本人が困っているか、生活に支障が出ているかが判断の軸になります。

受診の目安

  • チックによって学校生活や仕事に支障が出ている
  • からかいや指摘で、本人が強く傷ついている
  • 首の激しい動きなど、体の痛みを伴うチックがある
  • 1年以上続き、運動と音声の両方が見られる
  • 不安・落ち込み・不眠などが重なってきている
  • 家族がどう関わればよいか分からず、対応に迷っている

よくあるご相談例

外来では、次のようなご相談をよくお聞きします。

  • 「まばたきを注意したら、かえってひどくなった」というご相談
  • 「学校では出ないのに、家に帰ると激しくなる」というご相談
  • 「大人になっても咳払いが続き、会議中が苦痛」というご相談
  • 「自分の育て方が悪かったのではと不安」という保護者からのご相談

よくある質問

Q. 注意して直させた方がいいですか?
A. いいえ。意識が向くことで増えやすくなるため、指摘しない方が多くの場合うまくいきます。

Q. 自然に治りますか?
A. 一過性のチックは自然に軽くなることが多いと知られています。ただし個人差があり、続く場合もあります。

Q. 親のしつけやストレスが原因ですか?
A. いいえ。体質的な要因が背景にあると考えられており、ストレスは強弱に影響する要因にすぎません。

Q. 必ず薬を飲むことになりますか?
A. いいえ。まず環境調整と関わり方の見直しから始めることが多く、薬は支障が大きい場合の選択肢のひとつです。

参考文献

医師からのメッセージ

「何度言っても直らない」「親のせいかもしれない」と、ご家族が自分を責めていることが少なくありません。けれどチックは、しつけや愛情の量で決まるものではないと考えられています。

ご本人にとっても、止めたいのに止められないという状態はつらいものです。指摘をやめて、家の中だけでも安心して出せる場所を作ることが、最初の一歩になります。関わり方に迷った時点で、ご相談いただいて構いません。

この記事の監修

赤坂心療内科クリニック 院長
宮本 せら紀(みやもと せらき)
医学博士・心療内科専門医・認定内科医・日本医師会認定産業医

日本大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院にて臨床研修。東京大学大学院にて医学博士号取得(ストレス防御・心身医学)。日本心身医学会・日本心療内科学会ほか所属。

Translate »