「9月病」とは?夏休み・連休明けに会社へ行けなくなる理由と5月病との違い|心療内科医が解説

「9月病(くがつびょう)」とは、夏の疲れと長期休み明けが重なる時期に、気分の落ち込みや体調不良が出やすくなる状態を指す言葉です。

お盆や夏休みが明けてから、朝起きるのがつらい。出勤の支度をしていると気が重くなる。夏のあいだは動けていたのに、涼しくなってきた今のほうがしんどい——そんな時期にこの記事を読んでいる方が多いのではないかと思います。

この記事では、9月に不調が出やすくなる理由と、様子を見てよい範囲・相談したほうがよい範囲の境目を、心療内科医の視点で整理します。

「9月病」は正式な病名ではありません

まずお伝えしておくと、9月病という診断名は存在しません。5月病と同じく、その時期に増える不調をまとめて呼ぶための通称です。

ただし、呼び名が通称であることと、つらさが本物であることは別の話です。中身を見ていくと、適応障害や、うつ状態の入口にあたるものが含まれていることがあります。「9月病だから気のせい」とは言えません。

5月病とは、しんどさの成り立ちが違います

同じ「休み明けの不調」でも、背景がかなり違います。

5月病9月病
主なきっかけ新しい環境の緊張が、連休でゆるむ夏のあいだの消耗が、休み明けに表に出る
体の状態疲れはまだ浅いことが多い暑さで数か月分の疲れがたまっている
環境の変化入学・入社・異動の直後下半期・年度後半が始まる
光の条件日照は増えていく時期日照が減りはじめる時期
回復の見通し環境に慣れると和らぐことが多い放っておくと冬に向けて長引くことがある

ここが重要なのですが、9月の不調は「慣れれば治る」とは限りません。体力が削られた状態から始まっているぶん、5月病より長引きやすい面があります。5月病と同じ感覚で構えていると、対応が遅れることがあります。

なぜ9月に不調が出やすいのか

① 夏のあいだの消耗が、涼しくなってから表に出る

暑い時期は、体温を保つだけで体力を使います。睡眠も浅くなりやすく、食事も偏りがちです。気温が下がって「やっと楽になる」はずのタイミングで不調が出るのは、そこまで張っていた緊張がゆるむからと考えられています。夏を乗り切れた人ほど、あとから来ます。

② 長い休みで、生活のリズムが動く

数日でも起きる時間がずれると、体内のリズムは簡単に動きます。休み明けに朝がつらいのは、意志の弱さではなく体のリズムがまだ戻りきっていないだけのことがあります。

③ 日が短くなりはじめる

日照時間の変化が気分やリズムに影響することは知られています。9月は、その減りはじめにあたります。朝の光を浴びる時間が減ると、寝つきや目覚めにも影響することがあります。

④ 下半期のプレッシャーが重なる

9月は年度後半や下半期の始まりで、目標の見直しや人事の動きが重なりやすい時期です。いちばん体力が落ちているところに、いちばん要求が上がる——この組み合わせが、9月の不調を作りやすくしています。

「秋バテ」や「季節性のうつ」とは、どう違うのか

この時期の不調はいくつかの呼ばれ方をします。整理しておきます。

中心にあるもの目安になる期間対応
秋バテ暑さの疲れ・冷え・自律神経の乱れなど、体の消耗が主数日から2週間ほど生活と睡眠を整える
9月病体の消耗に、休み明けと環境の負荷が重なっている2週間を超えることがある続くようなら相談
季節性のうつ日照が減る時期に、毎年決まって気分が落ちる秋から冬にかけて繰り返す受診して対策を立てる

見分けの手がかりは「毎年か」と「2週間を超えるか」の二つです。毎年同じ時期に落ちるなら季節の影響を、期間が延びているなら別の状態が始まっている可能性を考えます。

なお、体のだるさが中心で気分は保たれている場合は、自律神経のはたらきの乱れとして整理できることもあります。どれに当てはまるかを一人で決める必要はありません。

セルフチェック

この2週間ほどを振り返って、当てはまるものを数えてみてください。診断ではなく、様子を見るか相談するかを決めるための目安です。

  • 朝、目は覚めているのに布団から出られない日が増えた
  • 出勤や登校の支度をしていると、気が重くなる
  • 休みの日も出かける気になれず、家から出ていない
  • 食欲が落ちた、または食べすぎている
  • 眠りが浅く、夜中や早朝に目が覚める
  • 以前は楽しめていたことが楽しめない
  • ミスや物忘れが増え、集中が続かない
  • 日曜の夕方から、体が重くなる

2つ以下なら、まずは生活のリズムを戻すところからで十分です。4つ以上が2週間以上続いているなら、一度ご相談ください。

どこからが「様子見」ではなくなるのか

目安は2週間です。休み明けの不調は、多くの場合1〜2週間で落ち着いていきます。

一方で、2週間を超えて続いている、あるいは仕事や家事に実際に支障が出ている場合は、適応障害として整理したほうが見通しが立つことがあります。さらに、気分の落ち込みが一日中続く、何をしても楽しめない、といった状態が重なるならうつ病の可能性も含めて考えます。

境目を自分で判断する必要はありません。迷った時点で相談していただくのがいちばん確実です。

今日からできること

大きなことをする必要はありません。ハードルは笑えるくらい下げて構いません。

  • 朝、カーテンを開けるだけでよいので、光を目に入れる
  • 起きる時間だけをそろえる(寝る時間はそろわなくて構いません)
  • 夜のカフェインを1杯減らす
  • 夕方以降の予定を、しばらく入れない
  • 週末に予定を詰め込まず、半日は空けておく
  • 眠れない日があっても、そこで自分を採点しない

できなかった日があっても構いません。できた日を数えるほうが、続きます。

心療内科でできること

  • いまの状態が一時的な疲れなのか、適応障害やうつ状態にあたるのかを整理する
  • 眠りを先に立て直す(眠れるようになると、感じ方が変わってきます)
  • 必要な場合は、休養についての診断書を作成する
  • 職場や学校との調整について、現実的な選択肢を一緒に考える
  • 自律神経のはたらきの乱れが強い場合は、そちらを整える

当院では医師と心理セラピストが連携して進めます。受診したら必ず薬を飲むことになる、ということはありません。まず生活と睡眠を整えるところから始めることも多くあります。

受診の目安

  • 気分の落ち込みや体の不調が2週間以上続いている
  • 仕事や家事、学業に実際の支障が出ている
  • 眠れない、食べられない状態が続いている
  • 朝どうしても起き上がれない日が繰り返されている
  • 消えてしまいたいという気持ちが浮かぶことがある

最後の項目に当てはまる場合は、期間に関係なく早めにご相談ください。

よくあるご相談例

外来では、次のようなご相談をよくお聞きします。いずれも特定の方のお話ではなく、多く寄せられる悩みを一般化したものです。

  • 夏休みが明けてから出勤の朝がつらく、これが続くのかと不安になっている
  • 夏のあいだは動けていたのに、涼しくなってから急に力が入らなくなった
  • 子どもが休み明けから学校に行きしぶるようになり、どう関わればよいか分からない
  • 下半期の目標設定を前に、気持ちがついていかない

よくある質問

9月病は、ほうっておけば治りますか?

1〜2週間で落ち着くことも多くあります。ただし2週間を超えて続く場合は、季節の問題ではなく別の状態が始まっている可能性があります。時間だけに任せないほうが安全です。

子どもにも起きますか?

はい。長期休み明けに学校へ行きしぶるという形で現れることがあります。仮病を疑う前に、まず生活リズムと睡眠を確認してみてください。

仕事は休んでもよいのでしょうか?

眠れない・食べられない・朝起き上がれないといった状態があるなら、休んで構いません。何日休むか、どう伝えるかについてはメンタルの不調で仕事を休む基準にまとめています。

毎年この時期に調子を崩します。体質でしょうか?

体質と決めてしまう前に、確認できることがあります。毎年同じ時期に繰り返す場合、季節による影響を受けやすい可能性もありますので、その前提で対策を組むことができます。毎年のことだからと諦める必要はありません。

参考文献

医師からのメッセージ

「夏を乗り切ったのに、なぜ今さら」と思っていませんか。それは、乗り切るために使った力の分だけ、体が休みを求めているサインかもしれません。9月の不調は、気合が足りないから起きるものではありません。

多くは一時的なものですが、2週間を超えて続くようなら、そこから先は一人で見極めなくて構いません。うまく言葉にならないままで結構ですので、気になった時点でご相談ください。

この記事の監修

赤坂心療内科クリニック 院長
宮本 せら紀(みやもと せらき)
医学博士・心療内科専門医・認定内科医・日本医師会認定産業医

日本大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院にて臨床研修。東京大学大学院にて医学博士号取得(ストレス防御・心身医学)。日本心身医学会・日本心療内科学会ほか所属。

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