睡眠薬で太るって本当?体重が増えやすい薬・増えにくい薬と、太る理由・対策を心療内科医が解説

一般的に「睡眠薬」と呼ばれる薬の多くは、それ自体で体重を大きく増やすことは少ないと考えられています。ただし、眠りのために使われる薬の中には食欲を高めるものがあり、また、夜中の食べ方や活動量の変化など、薬以外の理由で体重が増えることもあります。

「睡眠薬を飲み始めてから太った気がする」「太るなら飲みたくない」——そんな不安から、自己判断で薬を減らしたり、やめたりしてしまう方もいます。この記事では、睡眠薬と体重の関係を薬の種類ごとに整理し、太ったと感じる理由と、医師と一緒にできる対策を、心療内科医の視点で解説します。

この記事の要点

  • 一般的な睡眠薬の多くは、体重への直接の影響は少ないとされています。一方、眠りのために使われる一部の抗うつ薬や抗精神病薬には、食欲が増えて体重が増えやすいものがあります
  • 「睡眠薬で太った」と感じる背景には、夜中に食べてしまう、日中の活動量が減るといった、薬以外の理由が隠れていることも少なくありません
  • 体重が気になっても、自己判断で急にやめるのは危険です。薬の種類や量の見直しは、医師に相談してください

睡眠薬で太るのは本当?

「睡眠薬」とひとくちに言っても、実際にはいくつもの種類があり、体の中での働き方がそれぞれ違います。そのため、「睡眠薬だから太る」「睡眠薬だから太らない」と一括りにはできません。

また、眠れない状態が続くこと自体も、食欲や体重に影響すると考えられています。睡眠が不足すると、食欲を調整するホルモンのバランスが乱れ、甘いものや脂っこいものが欲しくなりやすいことが知られています。つまり、薬を使ってきちんと眠れるようになることが、かえって体重の安定につながる場合もあるのです。

薬の種類ごとの、体重への影響

不眠の治療に使われる薬を、主な種類ごとに整理しました。同じ種類でも、薬によって、また人によって影響は異なります。ここで示すのは一般的な傾向です。

薬の種類主な働き体重への影響(一般的な傾向)
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬脳の興奮を鎮めて、眠りやすくする直接の影響は少ないとされる
非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬同じく脳の興奮を鎮める。作用時間が短いものが多い直接の影響は少ないとされる。まれに、眠っている間に食べてしまう行動が報告されている
オレキシン受容体拮抗薬目を覚ましておく脳の働きを弱めて、眠りに導く影響は少ないとされる
メラトニン受容体作動薬体内時計に働きかけて、自然な眠りを促す影響は少ないとされる
眠りのために使われる一部の抗うつ薬気分を整える作用に加えて、眠気をもたらす種類によっては食欲が増え、体重が増えやすいものがある
眠りのために使われる一部の抗精神病薬少量で眠気をもたらすことがある種類によっては食欲が増え、体重が増えやすいものがある

ご自身が飲んでいる薬がどの種類にあたるか分からない場合は、お薬手帳を見るか、処方した医師や薬剤師に確認してみてください。

「睡眠薬で太った」と感じる、薬以外の理由

睡眠薬そのものが原因ではなくても、次のような理由で体重が増えることがあります。

薬を飲んだあと、起きたまま食べてしまう

睡眠薬を飲んだあとに布団に入らず起きていると、眠気でぼんやりしたまま、つい食べすぎてしまうことがあります。睡眠薬は、飲んだらすぐに布団に入るのが基本です。

眠っている間に食べてしまう

まれに、睡眠薬を飲んだあと、本人に記憶がないまま夜中に食べてしまう行動が起きることがあります。朝起きると、食べた覚えのないお菓子の袋が散らかっているといった場合は、薬が合っていない可能性があるため、早めに医師に相談してください。

日中の活動量が減っている

薬の効果が朝まで残って眠気がある、気分の落ち込みで外に出る機会が減っているといった理由で、日中の活動量が落ち、体重が増えることがあります。

元々の心の不調の影響

うつ状態や強いストレスのときには、食欲が大きく変わることがあります。特に、甘いものや炭水化物を強く欲するタイプの不調もあり、体重の変化が、薬ではなく心の状態を反映していることもあります。

太るのが心配なときの対策

自己判断でやめず、医師に相談する

体重が気になるときは、まず処方している医師に伝えてください。薬の種類を体重に影響しにくいものに変える、量を調整するなど、選択肢があることが多いです。

飲むタイミングを守る

飲んだらすぐに布団に入る。寝る直前に飲み、飲んだあとに食事や作業をしない。これだけでも、夜中の食べすぎを防ぎやすくなります。

生活のリズムを整える

朝は決まった時間に起きて光を浴びる、日中に少しでも体を動かす、夕食は寝る2〜3時間前までにすませる。睡眠のリズムが整うと、薬の量を減らせることもあります。

体重を記録しておく

週に一度など、決まったタイミングで体重を記録しておくと、薬を始めた時期との関係が分かりやすくなり、医師との相談にも役立ちます。

自己判断で急にやめるのは危険です

「太るのが嫌だから」と、睡眠薬を自己判断で急にやめると、かえって眠れなさが強くぶり返したり、種類によっては不安や体調不良などの離脱症状が出たりすることがあります。

薬を減らしたり、やめたりするときは、医師と相談しながら、少しずつ進めることが大切です。減薬の進め方については、抗うつ薬・抗不安薬をやめたいときの記事でも解説しています。

相談したほうがいいサイン

  • 睡眠薬を飲み始めてから、短い期間で体重が大きく増えた
  • 夜中に食べた記憶がないのに、食べた形跡がある
  • 薬を飲んでも眠れない、または日中も強い眠気が続く
  • 体重が気になって、薬を飲むこと自体がつらくなっている

そもそも、薬に頼る前にできることを知りたい方は、「眠れないから薬がほしい」と思う前に知っておきたいこともあわせてご覧ください。心療内科の薬全般の副作用については、心療内科の薬で太る?眠くなる?で解説しています。

よくあるご相談例

外来では、次のようなご相談をよくお聞きします。

  • 睡眠薬を飲み始めてから体重が増えた気がして、飲むのが不安になっている
  • 太るのが怖くて、処方された薬を自分の判断で減らしてしまった
  • 夜中に何かを食べた形跡があるが、まったく覚えていない
  • 眠れないのはつらいが、できるだけ薬に頼りたくない

どのご相談でも、まずは今の眠りの状態と薬の飲み方を確認し、体重への不安も含めて、治療の進め方を一緒に考えます。感じ方や薬の効き方には個人差があります。

よくある質問

睡眠薬を飲むと、必ず太りますか?

いいえ、必ずではありません。一般的な睡眠薬の多くは、体重への直接の影響は少ないとされています。ただし、眠りのために使われる薬の中には体重が増えやすいものもあるため、気になる場合は医師に確認してください。

太りにくい睡眠薬に変えてもらえますか?

症状や体質によっては、体重に影響しにくい薬に変更できる場合があります。どの薬が合うかは人によって異なるため、遠慮なく医師に相談してください。

市販の睡眠改善薬なら太りませんか?

市販の睡眠改善薬にも、体質によって眠気が翌日に残ったり、合わなかったりすることがあります。眠れない状態が続く場合は、市販薬で様子を見続けるより、一度受診して原因を確認することをおすすめします。

睡眠薬はずっと飲み続けなければいけませんか?

いいえ、そうとは限りません。眠れない原因が和らぎ、生活のリズムが整ってくれば、医師と相談しながら減らしていくことも多くあります。

参考文献

医師からのメッセージ

「太るのが怖いから、薬はできるだけ飲みたくない」——そう感じるのは、とても自然なことです。けれど、眠れない夜が続くこともまた、心と体に大きな負担をかけ、食欲や体重を乱す原因になります。

大切なのは、我慢して飲み続けることでも、自己判断でやめることでもなく、気になることを医師に伝えて、一緒に調整していくことです。体重のこと、眠りのこと、どんな小さな不安でも、迷った時点でご相談ください。

この記事の監修

赤坂心療内科クリニック 院長
宮本 せら紀(みやもと せらき)
医学博士・心療内科専門医・認定内科医・日本医師会認定産業医

日本大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院にて臨床研修。東京大学大学院にて医学博士号取得(ストレス防御・心身医学)。日本心身医学会・日本心療内科学会ほか所属。

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