ストレスで熱が出る「心因性発熱」とは?仕事は休んでいい?感染症との見分け方|心療内科医が解説

「心因性発熱(しんいんせいはつねつ)」とは、感染や炎症がないのに、ストレスに関連して体温が上がる状態のことです。

会社に行こうとすると37度台になる。検査では異常なしと言われたのに熱が下がらない。解熱剤を飲んでも思ったように効かない——そんな状態が続いていて、どこに相談すればいいのか分からず調べている方が多いのではないかと思います。

この記事では、心因性発熱と感染症の熱の見分け方、そして多くの方が最も知りたい「これで仕事を休んでいいのか」について、心療内科医の視点で整理します。

心因性発熱とは

心理的なストレスがかかったときに体温が上昇する状態で、機能性高体温症と呼ばれることもあります。感染症のように、体の中でウイルスや細菌と戦って熱が出ているわけではありません。

ここが誤解されやすいところなのですが、体温計の数字が本物であることに変わりはありません。「気のせいで熱っぽく感じている」のでも、「熱があるふりをしている」のでもなく、実際に体温が上がっています。

感染症の熱と、どこが違うのか

見分けの手がかりを整理します。ただし、これは自己診断のためではなく、医療機関で何を伝えればよいかを知るための表です。

感染症などによる発熱心因性発熱
血液検査炎症を示す数値が上がることが多い炎症の数値は上がらないことが多い
解熱鎮痛薬飲むと下がることが多い効きにくいことが知られています
のど・せき・鼻水伴うことが多い伴わないことが多い
熱が出る場面時間帯や状況とあまり関係しない出勤前・会議前・特定の曜日など、場面と結びつくことがある
経過数日で下がっていく微熱が数週間から数か月続くことがある
休日関係なく続く休みの日は下がることがある

「解熱剤が効かない」と「休みの日は出ない」の二つが揃うときは、一度ご相談いただく価値があります。

二つのタイプがあります

現れ方は大きく二つに分かれると考えられています。

  • 急に高い熱が出るタイプ——強い緊張やプレッシャーのかかる場面で、38度以上になることがあります。その場面が過ぎると比較的早く下がります
  • 微熱が続くタイプ——37度台が数週間から数か月続きます。強いだるさを伴うことが多く、こちらのほうが受診に至るまで時間がかかりがちです

後者は「たいした熱ではない」と自分でも軽く見てしまいがちですが、長く続いているという事実のほうが重要です。

なぜ、ストレスで体温が上がるのか

感染症の熱と心因性発熱では、体温が上がるまでの道すじが違うと考えられています。

感染症のときは、体が病原体と戦うために体温を上げます。一方で心因性発熱では、強い緊張やストレスによって交感神経のはたらきが高まり、その結果として体が熱を作り出す量が増えると考えられています。道すじが違うので、感染症の熱を下げる薬が効きにくい——これが「解熱剤が効かない」の正体です。

つまり、あなたの体は壊れているのではありません。危険に備えるための反応が、必要のない場面でも起動し続けている状態と考えると、説明がつきます。

まず、体の病気ではないことを確かめてください

ここは順番を間違えないでいただきたいところです。心因性発熱は、ほかの原因が見つからないことを確かめたうえで考えるものです。

熱が続く原因には、感染症のほかにも甲状腺のはたらきの異常、膠原病、血液の病気、薬の影響など、体の側にあるものが少なくありません。ですから、

  • まだ内科で調べていない場合は、先に内科を受診してください
  • すでに検査を受けて「異常なし」と言われている場合は、その結果を持って心療内科にお越しください
  • いつから・どんなときに・何度まで上がったかを記録しておくと、診察が進めやすくなります

「異常なしと言われた」ことは、行き止まりではありません。そこからが心療内科の入口です。

セルフチェック

ここ1か月ほどを振り返って、当てはまるものを数えてみてください。診断ではなく、相談するかどうかを決めるための目安です。

  • 検査で異常がないと言われたのに、微熱が続いている
  • 解熱鎮痛薬を飲んでも、思ったように下がらない
  • 出勤前や、特定の予定の前に熱が上がることがある
  • 休みの日や、休みが続いたあとは平熱に戻る
  • のどの痛みやせきなど、風邪らしい症状は出ていない
  • 強いだるさがあり、寝ても抜けない
  • 熱のせいで予定を変えることが増えているのに、周囲には説明しづらい
  • この状態がいつまで続くのか分からず、不安になっている

3つ以下なら、無理に当てはめる必要はありません。5つ以上が2週間以上続いているなら、一度ご相談ください。なお、平熱には個人差があります。37度台でも、ご自身の平熱より高い状態が続いているなら意味のある変化です。

心因性発熱で、仕事は休んでいいのか

結論からお伝えします。休んでかまいません。

理由は二つあります。ひとつは、心因性発熱であっても体は実際に消耗しているということ。体温が上がっている状態を押して働き続ければ、疲れは抜けにくくなり、回復にかかる時間も延びていきます。

もうひとつは、心因性発熱が起きているということ自体が、その環境の負荷がすでに体に届いているというサインだからです。熱は結果であって原因ではありません。同じ環境に戻り続けるかぎり、同じことが繰り返されやすくなります。

「サボりだと思われないか」という不安について

この心配で受診をためらう方が非常に多くいらっしゃいます。ですが、体温計に出ている数字はごまかしではありません。心因性発熱は、心療内科・心身医学の領域で以前から知られている状態です。気の持ちようで説明されるべきものではありません。

会社に伝えるとき、原因まで説明する義務はありません。「発熱が続いていて、医療機関にかかっている」で足りることがほとんどです。

診断書について

休養が必要と判断される場合には、診断書をお出しすることがあります。何日休むか、どう伝えるかといった具体的なことは、メンタルの不調で仕事を休む基準の記事に詳しくまとめていますので、あわせてお読みください。

なお、出勤しようとすると体調が崩れる状態が続いている場合は、適応障害として整理したほうが見通しが立つこともあります。

心療内科でできること

当院は「熱をすぐ下げる」ことを目的にはしていません。熱は結果なので、そこだけを叩いても戻ってきてしまうからです。実際にお手伝いできるのは次のようなことです。

  • 体の検査結果を確認し、ほかの原因が残っていないかを一緒に整理する
  • いつ・どんな場面で熱が上がるかを記録として見える形にし、引き金を特定する
  • 休養が必要な状態かどうかを判断し、必要なら診断書を作成する
  • 職場や学校との調整について、現実的な選択肢を一緒に考える
  • 自律神経のはたらきの乱れや睡眠の問題が重なっている場合は、そちらを整える
  • 緊張が高まりやすい状態そのものに対して、心理療法を用いることがあります

当院では医師と心理セラピストが連携して進めます。解熱剤で心因性発熱を治すという考え方はとりません。強い不安や不眠が重なって消耗している場合には、その部分に対して薬を使うことがありますが、使うかどうかは相談しながら決めます。

受診の目安

  • 内科で検査を受けて異常がないと言われたのに、発熱が2週間以上続いている
  • 解熱鎮痛薬が効かない状態が繰り返されている
  • 出勤・登校の前になると決まって熱が上がる
  • 発熱に加えて、眠れない・食べられない・気分が落ち込むといった変化が出てきた
  • 熱を理由に休むことが増え、そのこと自体が強い負担になっている

お子さんの場合も同じで、登校前に熱が出るという形で現れることがあります。仮病を疑う前に、一度ご相談ください。

よくあるご相談例

外来では、次のようなご相談をよくお聞きします。いずれも特定の方のお話ではなく、多く寄せられる悩みを一般化したものです。

  • 何度も内科で検査を受けたが異常がないと言われ、どこにかかればよいのか分からなくなった
  • 出勤日の朝だけ37度台になり、休日は平熱に戻るため、自分でも仮病ではないかと疑ってしまう
  • 微熱とだるさが数か月続いており、周囲に説明できないまま出勤を続けている
  • 熱で休むたびに職場に申し訳なく感じ、そのことがさらに負担になっている

よくある質問

心因性発熱は、本当の熱なのでしょうか?

はい、体温計に表示されている数字は実際のものです。感染症の熱とは体温が上がる道すじが違うだけで、測り方が悪いのでも、気のせいでもありません。この点をご本人がいちばん疑ってしまいがちですが、疑う必要はありません。

解熱剤を飲み続けても大丈夫ですか?

効きにくいことが知られているため、量が増えていきやすい点に注意が必要です。効かないからと自己判断で増やすと、胃腸への負担や頭痛が起きることがあります。効かないと感じている時点で、薬の追加ではなく相談に切り替えてください。

うつ病でも微熱は出ますか?

気分の落ち込みや強い疲労とともに、微熱が続くことがあります。心因性発熱だけが単独で起きているのか、ほかの状態が重なっているのかで対応が変わりますので、朝起き上がれないといった変化があわせて出ている場合は、そのこともお伝えください。

どのくらいで治りますか?

期間を断言することはできません。引き金になっている負荷が調整できるかどうかで経過が変わりますし、個人差もあります。ただ、環境が変わったときに熱が落ち着いていく方は少なくありません。「体質だから一生このまま」と決めてしまう必要はありません。

参考文献

医師からのメッセージ

「検査では異常がないと言われたのに、熱が下がらない」——この状態でいちばんつらいのは、、熱が下がらないことや誰にも本当だと信じてもらえないのではないかという不安ではないでしょうか。

体温が上がっているという事実はごまかしではありません。それは、いまの負荷がすでに体に届いているという知らせでもあります。熱が出るほど頑張ってこられたのだと思います。うまく説明できないままで構いませんので、気になった時点でご相談ください。

この記事の監修

赤坂心療内科クリニック 院長
宮本 せら紀(みやもと せらき)
医学博士・心療内科専門医・認定内科医・日本医師会認定産業医

日本大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院にて臨床研修。東京大学大学院にて医学博士号取得(ストレス防御・心身医学)。日本心身医学会・日本心療内科学会ほか所属。

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