ネットで誹謗中傷されて眠れない・怖い…心を守るためにできることと、相談を考える目安を心療内科医が解説

ネットでの誹謗中傷は、顔の見えない相手から、言葉によって人格や存在を傷つけられる出来事です。書き込みを見てから眠れない、動悸がする、スマートフォンを開くのが怖い、何度も読み返してしまう——そうした反応が出ているなら、それは「気にしすぎ」ではなく、強い出来事を受けた心と体の自然な反応として起こりうるものです。この記事では、誹謗中傷を受けたときに起こる心身の変化、心を守るためにできること、相談先と受診の目安を、心療内科医の視点で整理します。

この記事の要点

  • 誹謗中傷を受けると、不眠・動悸・食欲の低下・何度も読み返してしまうなどの反応が出ることがあります
  • ネット上の言葉は繰り返し読めて消えにくいため、心への負担が長引きやすいと考えられています
  • 「見ない工夫」「一人で抱えない」「心の相談と手続きの相談を分ける」の3つが、心を守る基本です
  • 眠れない・日常生活に支障が出る状態が続くなら、相談してよい目安です

誹謗中傷を受けたとき、心と体に起きること

強い出来事のあとには、誰にでも心身の反応が出ることがあります。誹謗中傷の場合、次のような形で現れることがよくあります。

現れ方具体的な様子
眠りの変化寝つけない、夜中に何度も目が覚める、書き込みの内容が頭から離れない
体の反応動悸、息苦しさ、胃の不快感、食欲が落ちる、体が緊張して休まらない
気持ちの変化恐怖、怒り、恥ずかしさ、「自分が悪いのでは」という思い、人が信じられなくなる
行動の変化何度も検索して確認してしまう、逆にスマートフォンを見られなくなる、外出や人に会うのが怖くなる

「見たくないのに見てしまう」のは、意志が弱いからではありません。脅威を感じたとき、人の心は「状況を把握して身を守ろう」として、確認を繰り返す方向に傾きやすいからです。

なぜネットの中傷は、心への負担が長引きやすいのか

  • 何度も読み返せる:一度きりの言葉と違い、画面を開くたびに同じ言葉が目に入ります
  • 消えにくく、広がりうる:「どこまで見られているか分からない」という不安が続きます
  • 相手が分からない:誰が、なぜ、と考え続けてしまい、心が休まりません
  • 反論も無視も、どちらも不安になる:何をしても状況が悪くなりそうに感じられます

こうした条件が重なるため、時間がたってからも、書き込みの場面がよみがえったり、眠れない状態が続いたりすることがあります。出来事のあとの心の反応については、ストーカー被害と急性ストレス障害や、カスタマーハラスメントと急性ストレス障害の記事でも説明しています。

今の状態を整理するチェック

最近2週間ほどを振り返って、当てはまるものを数えてみてください。診断ではなく、ご自身の状態を整理するための目安です。

  • 書き込みのことが頭から離れず、仕事や家事に集中できない
  • 寝つけない、または夜中に何度も目が覚める
  • 何度も検索して、書き込みを確認してしまう
  • スマートフォンの通知が来るたびに、体がこわばる
  • 書き込みの場面が、ふとした時によみがえる
  • 外出や人に会うことを避けるようになった
  • 「自分が悪かったのでは」と責める気持ちが強い
  • 食欲が落ちた、または食べ過ぎてしまう

いくつか当てはまり、それが続いているなら、一人で抱え込まず相談してよい時期です。1〜2つで、時間とともに落ち着いてきているなら、必要以上に心配しなくて大丈夫です。

心を守るためにできること

1. 見ない工夫をつくる

  • 書き込みのあるサービスの通知を切る
  • 検索の確認は、「1日1回、短時間だけ」と決めるか、信頼できる人に代わりに見てもらう
  • 寝る前と起きてすぐは、スマートフォンを見ない時間にする
  • アプリを一時的に消す、ログアウトするなど、「見にくい状態」にしておく

見ない工夫は、逃げでも弱さでもありません。メンタル不調のときにSNSで検索しないほうがよい言葉の記事も参考にしてください。

2. 記録を残し、一人で抱えない

書き込みを消す手続きや、今後の対応を考える場面に備えて、日時と画面の記録を残しておくと役に立つことがあります。ただし、記録を残すために何度も読み返すのは、心の負担になります。可能であれば、信頼できる家族や友人、または専門の窓口に手伝ってもらうほうが安心です。

3. 「反応するかどうか」を一人で決めない

反論するべきか、無視するべきかに、決まった正解はありません。気持ちが揺れているときの返信は、後悔につながりやすいことがあります。決める前に、信頼できる人や相談窓口に話してからにしましょう。

4. 眠りと食事を守る

眠れない状態が続くと、気持ちはさらに追い詰められやすくなります。眠れない夜の過ごし方は、眠れない夜に脳で起きていることや、考えすぎて眠れないときの方法も参考になります。

5. 「自分が悪い」と結論を急がない

つらい言葉を向けられると、人は「自分に原因があったのでは」と考えがちです。しかし、他人から投げつけられた言葉の内容と、あなたの価値は別のものです。何度も同じ考えが巡るときは、反芻思考の止め方も役立つことがあります。

「心の相談」と「手続きの相談」を分けて考える

誹謗中傷の問題には、心のケアと、書き込みへの対応という2つの側面があります。一つの窓口ですべてを解決しようとせず、分けて相談すると、気持ちが少し整理されます。

相談したいこと主な相談先
眠れない、不安が強い、気持ちが落ち着かない心療内科、精神科、カウンセリング、こころの相談窓口
書き込みの削除の依頼方法、どう対応すればよいか分からない違法・有害情報相談センター、法務省のインターネット人権相談
身の危険や脅迫を感じる警察(緊急のときは110番、相談は警察相談専用電話の#9110)
法的な手続きを考えたい弁護士、法テラス

主な相談窓口です。

法的な判断や手続きの内容は、事案によって異なります。記事では案内にとどめますので、具体的な対応は上記の窓口や弁護士にご相談ください。

周りの人ができること

身近な人が誹謗中傷を受けているときは、次の関わり方が支えになります。

  • 「気にしなければいい」「無視すればいい」と言わず、まず「つらかったね」と受け止める
  • 書き込みを一緒に何度も読み返すことは、避ける
  • 手続きや窓口を調べる作業を、手伝う
  • 眠れているか、食べられているかを、さりげなく気にかける
  • 「消えたい」といった言葉が出たときは、軽く扱わず、専門の窓口につなぐ

心療内科でできること

心療内科では、眠りの状態、気分や不安の程度、書き込みを受けてからの経過をうかがい、いまの反応を一緒に整理します。そのうえで、睡眠を整える工夫、気持ちを落ち着ける方法、必要に応じた薬による調整などを、ご本人の状態に合わせて検討します。薬は必ず使うものではありません。つらい場面が何度もよみがえる場合は、PTSDの記事も参考にしながら、心理療法を含めた選択肢を、無理のないペースで一緒に考えます。眠りの悩みは不眠症のページもご覧ください。

よくあるご相談例

外来では、次のようなご相談をよくお聞きします。個人が特定されないよう一般化したもので、特定の方の経過や治療の結果を示すものではありません。

  • SNSの書き込みを見てから眠れなくなり、仕事中も画面が気になってしまう
  • 何度も検索して確認してしまい、やめたいのにやめられない
  • 人前に出ること、投稿することが怖くなってしまった
  • 自分のどこが悪かったのかと、ずっと考え続けている

受診を考える目安

  • 眠れない状態が2週間ほど続いている
  • 仕事や学校、家事に支障が出ている
  • 動悸や息苦しさなど、体の不調が続いている
  • 書き込みの場面が何度もよみがえり、つらい
  • 外出や人と会うことを避けるようになった
  • 気分の落ち込みが強く、何をしても楽しめない

「死にたい」「消えてしまいたい」という気持ちが強いときは、ためらわずにすぐ相談してください。まもろうよ こころ(厚生労働省の相談窓口案内)で相談先を探せます。命の危険を感じるときは、119番に連絡してください。

よくある質問

誹謗中傷を受けて眠れないのは、普通のことですか?

はい。強い出来事のあとに眠れなくなることは、よくある反応です。ただし、数週間たっても続く、日中の生活に支障が出ているときは、相談する価値があります。

どうしても検索して確認してしまいます。やめられません

確認を繰り返すのは、不安が高まっているときに起きやすい行動で、意志の弱さではありません。通知を切る、時間を決める、信頼できる人に代わりに見てもらうなど、「見にくい状態」をつくるところから始めてみてください。

心療内科に行っても、書き込みを消すことはできませんか?

書き込みの削除などの手続きは、心療内科の役割ではありません。心療内科では、眠れない、不安が強いといった心と体の不調への対応を一緒に考えます。手続きは、前述の相談窓口や弁護士にご相談ください。

子どもがネットで中傷されているときはどうしたらよいですか?

まずは本人の話を否定せず、最後まで聞いてあげてください。「ネットなんて見なければいい」とすぐ言うと、孤立を深めてしまうことがあります。眠れない、食べられない、学校に行きたがらないなどの変化が続くときは、相談してください。当院は小学生から診察が可能です。

参考文献

医師からのメッセージ

「こんな言葉に傷ついてしまう自分が弱いのでは」と、ご自身を責めていませんか。顔の見えない相手から向けられた言葉に、心が揺れるのは自然なことです。眠れない、気持ちが休まらないという状態は、「もう十分に傷ついている」と心と体が教えてくれているサインかもしれません。迷った時点で、相談してください。一人で抱え込まなくて構いません。

この記事の監修

赤坂心療内科クリニック 院長
宮本 せら紀(みやもと せらき)
医学博士・心療内科専門医・認定内科医・日本医師会認定産業医

日本大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院にて臨床研修。東京大学大学院にて医学博士号取得(ストレス防御・心身医学)。日本心身医学会・日本心療内科学会ほか所属。

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